てとてと さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
セカイ系すらももどかしさから逃れられぬ?時代の空気感を真摯に描いた(面白いかは別)
ビッグコミックスピリッツのSFジュブナイル?漫画原作で通称「デデデデ」
劇場アニメ前後編で後編120分。
【良い点】
カドデとオウランの関係、特にオウランのSF的な秘密が開示されてそこは面白かった。
まどマギ的なギミックで意外性があった。
百合ユウジョウ的にも自分好み。
あと、カドデと先生の関係も好きだった。
キャラの個性的な掛け合いは相変わらず魅力的だった。
個別キャラでは、最期に意地を見せた総理がカッコ良かった。
声優はヒロインふたりが奇抜なキャラの個性出せていた。
作品全般への印象というかレビューについては、takato氏が的確に看破しておられて自分が今更書くことがあまりないです。
テーマというか題材は311よりもずっと根深い、60・70年代安保闘争挫折から失われた00十年の日本人の政治・社会(セカイへの関心や関わり方と言い換えてもいい)の混迷と、諦念にありそう、という印象。
異常が日常になった社会で、反戦や反政府、陰謀論と若者たちが迷走するがいずれも滑稽で空しい。
本作はそれに対する具体的な答えは出せていないか、出していないか?どちらにせよ、すっきりしない世相から目を背けずに創作作品として描く姿勢は真摯ではあった。
カドデとオウランを、最期までヒーローにせず日常系貫いた点も真摯。
普通の作品ならばセカイ系の当事者として動かしそうなもの、そうしないのは、従来のセカイ系ですら自分たちがセカイ変えられるという前提がお約束だったのが、本作はそのお約束すら放棄、それで一つの個性的な作品として成立させたのは新しいタイプの作品だなぁと。
【悪い点】
良い点と表裏一体、現代日本人の鬱屈を真摯に描きすぎていて憂鬱。
しかもそれをドラマや物語に昇華出来ていないというか、するつもりが無い感じ。
日常を重んじるメインキャラと、セカイに関わろうと足掻くキャラたちのドラマに殆ど接点が無い。
それはある意味真摯に世相を作品に移そうという試みだと思うけれど、物語としては正直面白くなかった。
SF作品としてみると、風呂敷広げた割には微妙。
オウランの真相もまどマギとか過去作の前例があるので、分かってしまえばそれなりだった。
侵略者の事情が最後まで不明、結局彼らは何がしたかったのか。
(一応、地球人家畜化しようとしたら失敗した?)
延々と虐殺されていくが、自業自得な感が最後まで拭えず。
超テクノロジーあるのに一方的に負けてたり、コンタクト取る努力も見られないなど最後まで不可解。
作品の舞台装置にしては延々悲劇が続くし、ヒロインたちとの関わりも限定的。
ラストのオチもすっきりしない。
どうせならイデオンのイデ発動みたいに全滅エンドでも良かったし、阻止するにしてもヒロインたちのドラマに全然繋がっていない。
既存のセカイ系(近年の新海作品とか)特有の強みを放棄しているため、カタルシスという点でイマイチ。
好意的に見ればそこも含めて本作の魅力ではあるんだろうけれど、古いタイプのセカイ系を好む自分にはイマイチ。
【総合評価】6~5点
戦後~令和の日本人の憂鬱な空気感を表現した力作という好意的評価と、
真摯に表現しようとしてドラマとしての面白味が微妙という、プラマイ0で迷うところ。
正直あんまり面白くはなかった。
良くも悪くも挑戦的な作品、キャラの魅力加味してプラスが勝る感じ。
評価はとても良いまではいかない「良い」
多分、真価が分かる人、好意的に見る人には凄く評価されるけれど、そうでない大勢には人気が出ないタイプ。
けど、こういうタイプの作品があってもいい。
アニメ好きとして一見の価値はあった。