かがみ さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
いまここから別のいまここへ
ゼロ年代が「萌え要素」と呼ばれたキャラクター設定のデータベースが整備された時代であったとすれば、2010年代は「ナーロッパ」と呼ばれる世界観設定のデータベースが整備された時代であったといえる。そして、このような「ナーロッパ」というデータベースから出力されたシュミラークルの一大潮流が「異世界転生系(なろう系)」というジャンルであった。けれども、このような「異世界転生系(なろう系)」はその傍流に「異世界スローライフ系」と呼ぶべきジャンルを生成していった(もっとも多くの作品において両者は重なり合っている)。そして本作の幅広い受容はこのような「ナーロッパ」というデータベースを基盤とした「異世界スローライフ系」というジャンルがひとつの成熟期を迎えたことを意味している。また同時に「魔王」も「勇者」もこの世から居なくなった「後の」世界を舞台とする本作はヘーゲル的な意味での「歴史」が終焉した後のポストモダンとしての現代の比喩であるともいえる。その意味で何かの目的のために魔法を求めるのではなく魔法それ自体を愛好し、その探求のプロセス自体をも愉しむフリーレンは「いまここ」から「別のいまここ」へと超出していくポストモダンにおけるコンサマトリー的な生を理想化した存在であるといえる。