「夜のクラゲは泳げない(TVアニメ動画)」

総合得点
70.3
感想・評価
218
棚に入れた
592
ランキング
1597
★★★★☆ 3.6 (218)
物語
3.4
作画
3.9
声優
3.7
音楽
3.6
キャラ
3.5

U-NEXTとは?(31日間無料トライアル)

ネタバレ

ハニワピンコ さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:今観てる

夢を追いかけることについて

{netabare}
現代、他人の成功や失敗を容易に観測できる中で、勝手に肥大化する自己に何者かという永遠の課題を題材とするアニメにおいて、描かれるキャラの自己実現の方法、それは結局芸術の道である。というのはあまりにも普通

かつてニルヴァーナが『Nevermind』で商業化するロックや技術を競い合うメタルに自己嫌悪と焦燥感を重ねられない奴らの宿木となってしまった様に。誰の助けもなくその憧れさえも潰された男の精神の末路を描き切った『ジョーカー』の様に。若者に限らずいつの時代にもいる、何者でもない自分の孤独に共感して癒してくれる何かとは、普遍的でありながら自分だけが共感できると思えるような新しさを兼ね備えた物だと思っている
前者ならば重い退廃的なサウンドと歌詞ながら聞きやすく、一般人のような格好とスタイルのアンダーグラウンドからでもトップを取れるという希望を抱かせ、後者ならば超有名な悪のカリスマジョーカーの皮を被っていながら等身大で身近でありえる境遇という自己投影のしやすさを備えた、そんな二者のようなムーブメントを引き起こすコンテンツの強さにあるのは、そんな普遍的でありながらの新しさ
対して、今作品で自己表現を叫ぶ若者の描き方として見せられるのは“芸術への道“

そんなはっきり言って先鋭的でもない、使い潰された実現を「量産型にはなりたくない」と叫ばせていながらこの量産型展開
ムーブメントに乗っかっていながらムーブメントを批判する矛盾に自己嫌悪を覚えずむしろ我が物顔で展開される文言。キャラ達がというわけではなく、これを書いている脚本家。この作家は『弱キャラ友崎くん』の作者であるが、傾向としては『かぐや様』『推しの子』の赤坂アカと似た現代の価値観を自身の作品に多く取り寄せる現代作家であり、ある種の何者でもない視聴者たちへの啓示の様な、現代の自分たちのような若者(キャラ達)が自己実現に向かう様を見て、多くの人が感化された群れを形成し、自身はアイコンとして代弁者として成るが如き、何者ではない人たちという題材を持ち出してやっているが、その肝心な自己実現の部分が芸術という古来より常道のありふれたやり方で、先駆者気取って一番槍の大手柄を得たと思っているのかも知れないが、この作品は多分量産型のたくさん放送される春アニメの中の一つに過ぎないと思う
{/netabare}

上記の閉じているものは1話時点での感想で、あとは全話見切って感想を書いていこうかと思っていたが、2話でもあまりにも色々思うことが多かったので勢いで書いてしまったものです

2話にキャラに感傷的な的なことを言わせてエモーショナルな見せ方をする作品ってやっぱダメだわ
全てが上滑りして全く乗れない
まず一話で基本的なストーリーの目標や展望が見えて、そこからそれに向かっての物語の中で巻き起こる出来事を通じてキャラを理解していって、キャラを理解したのちにそのキャラの特性を生かしたり隠していた部分でさらに物語を作っていったりしていく。というのが普通で馴染み深いストーリーテリングの方法だと思うが、何故これが常道かというのは、ストーリーとはキャラを見せるためにあるもので、そのキャラを見せるためにまず最初は出来事でキャラを知ってもらわなければ、その後の展開全てに乗ることは不可能で、キャラに興味が持てなければなんかすごいことやってるーという程度にしか認識出来ず、ストーリー自体にも入り込めないからというごくごく当然で常識的な考えからである

しかしこの作品はそんな過程をすっ飛ばし、自分の頭の中で決まっているであろう設定に基づく描写を唐突に行い、ただただ滑るだけの感想しか浮かばない見せ方をしてくる作品であった
それが見られたのがこの作品の2話の一人のファンが差し出す金を拒否するというシーンで、そのキャラの性格や心情が理解されていないまま、このキャラはこういうことをするだろうという作者の頭の中で作り上げた像でしかないものが急に開示されて、それでいて語気の強い演技でかなり強めに拒否するというシーンだが、そんなエモエモなシーンもそもそもキャラの性格や心情が理解できていない状態故に目が滑る滑る。似たシーンで『宇宙よりも遠い場所』の2話で白瀬が貯めていた百万円を出してスポンサーになろうとするシーンは、大人だからというわかりやすい理由でまず一旦納得させて、その後に削れるものは削ってでも必ず南極に行くという意思が見えるシーンの前振りとしても効いていた。対して今作の描写では、ファンがパトロンになるために今の花音としてではなくアイドルだった頃を押し付けてきたという拒否理由が“察せられる“ところはあったけれど、そもそも今と昔の比較で本人がどう思っているかをまだハッキリと示されていない中でのあの感情の出し方をされても急に来たなということしか思わず、エモエモな雰囲気にも全く乗れない。次のシーンには後悔してる風にしてギャグにしてるのも作者の頭の中のキャラ過ぎて全く笑えない

全ては物語を通じて説明され示されたそのキャラの特性 性格 その他状況などに裏打ちされて、キャラの起こす行動を視聴者は理解する。それまでの導入においては基本は多少はコンセプトに沿った登場人物らしい行動はしてもいいと思うが、特に心情的な部分を全く説明せずにこのキャラはこういう性格だからこんな行動をすると制作者の頭の中でしかない設定を見せてくるのはやめましょう


これらを踏まえて多分この作品が示そうとしているテーマについて思ったことがある

夢を追いかけるのってそんなに偉いこと?

上記の量産型云々も、理想が自己の理想で完結することを理想としている主人公も、全てが自己を肯定してくれる世界かの如き言動も、そしてその成功例の一つであるラノベ作家という夢を掴んでアニメの脚本家になるまでに至った作者自身の成功体験に基づく価値観として感じられた「夢を追うことは崇高である」という見せ方に全く共感できない


1.2話でここまで自分の琴線に触れない部分が多い作品を見切ったら一体どんな感情になるのか、逆に気になるので完走してみようかと思っています。春の間に見切れるかは不明ですが、まぁそもそも今期はそこまで量を見ていないし夏もそこまでっぽいので、夏中に見切れたらいいな

投稿 : 2024/06/23
閲覧 : 97
サンキュー:

3

夜のクラゲは泳げないのレビュー・感想/評価は、ユーザーの主観的なご意見・ご感想です。 あくまでも一つの参考としてご活用ください。 詳しくはこちら
夜のクラゲは泳げないのレビュー・感想/評価に関する疑問点、ご質問などがございましたら こちらのフォーム よりお問い合わせください。

ハニワピンコが他の作品に書いているレビューも読んでみよう

ページの先頭へ