セシウス さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
ゲゲゲの鬼太郎ゼロ・子供アニメの前日譚は超大人向けだった
原作漫画は小学生時代に古本屋で買って持っていました。一冊20円だったので小学生でも買えました笑 アニメは70年代にさかんに再放送されていた2期だけ見たことがあります。鬼太郎が原作よりもややヒーローっぽく描かれていて凄く違和感を感じた記憶があります。その鬼太郎が誕生する時の話を描いた作品で、珍しくカミさんが「見よう」と言ってきたので見てみました。
ストーリーは鬼太郎が誕生する前の話がほとんどですが、冒頭鬼太郎と猫娘がちょっとだけ登場します。そして猫娘のキャラデザを一目見た瞬間、「この作品は自分の知っている鬼太郎とは異なった世界のものだ」と直感できるので先入観なく昭和31年の世界に入っていくことができました。ジャンルとしては怪奇ミステリーですかね。強力な精神系薬品の謎原料を独占的に生産している村を調査しに訪れる会社員が主人公で、現地で奇怪な連続殺人事件に巻き込まれ、やがて現地で出会った謎の人物と協力して村の怪異と戦う、というストーリーです。前半は主に人間の様子が描写され、当時の世相や価値観をリアルに描いています。後半は怪異とのバトルが中心で、鬼太郎が誕生するまでの流れが概ね悲劇として描かれます。子供向けの描写は全くなく、完全に大人が楽しむストーリーになっています。暗い話ですが、原作漫画との接点をより強く感じました。とても良いストーリーだったと思います。
キャラクターについては、戦地から運よく復員できた主人公の言動に説得力があって良かったです。この主人公の存在がのちの鬼太郎の活躍の土台になっていると思うと更に好感度が上がりますね。また主人公の相棒ポジに収まる目玉親父も飄然として恰好良かったです。その他のキャラクターはストーリー進行のために配置されたようなありきたりのキャラクターが多かったですが、劇場版の尺の中では仕方ないという感じでしょうか。声優さんたちは役どころにピッタリとはまっていて良かったです。目玉おやじの声も田の中さんが刷り込まれている自分でもまあすぐ慣れました。
作画は、人物キャラクターは丁寧に描かれていて良かったです。妖怪については元がコミカルな印象のキャラが多いのですが、今回はそういった仲間的な妖怪はほぼ排して狂骨という怨霊のような妖怪がメインで描かれていてこの作品の雰囲気が良く出ていたと思います。バトルシーンの迫力も十分でした。BGMは普通です。エンディングのアレンジバージョンは良かったと思います。
事前の予想とは全く違った印象を受けました。救いのない話ですが、元々原作も終戦直後の暗い世相を描いたものだったので、前日譚としては受け入れやすいと思います。後味も話の割には悪くはなくて、素直に見て良かったと思える作品でした。