「葬送のフリーレン(TVアニメ動画)」

総合得点
88.3
感想・評価
610
棚に入れた
1969
ランキング
118
★★★★★ 4.2 (610)
物語
4.2
作画
4.3
声優
4.2
音楽
4.2
キャラ
4.2

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ネタバレ

ヘンゼル さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

新鮮な感覚

原作は1巻のみ購入。
というのもアニメ化する数年前から、既に気になったので買っていました。
その当時は自分の好みには合わなかったので、続きは買わずに半ば忘れかけていたぐらいで・・・。
正直アニメ化する前までは、「そこまで面白いかな」と侮っていましたが、実際蓋を開けてみると、並大抵のアニメを蹴散らせるくらいには面白かったですね。

ですが色々と問題もあるなという印象ですね。そこら辺はレビュー後半に書きます。
まずは良い所を。


本作で特に良かったのは作画ですね。
見せ場の作画は圧倒的。
並大抵のアニメ映画以上の作画で、鬼滅の刃とかもそうですが、地上波の普通のアニメで気合が入りすぎなぐらい良かったです。

しかし、全てに気合が入っているかといえばそうではなく、上手く気づかない程度に手を抜いています。
例えば引きの絵とか、ダイジェストになっているところとか。
こういう視聴者が気づきにくいとこで上手く手を抜き、見せ場は本気以上の圧倒的作画で視聴者を感動させてくる。
本当に制作会社様には尊敬しかないです。


ストーリー面では期待していたものとは違いましたが、普通に楽しめる出来にはなっていました。

期待していたものとは違ったというのは、勇者ヒンメルが亡くなって、フリーレンが後悔し、「人間を知る」という名目で旅を始めるという物語の始まり、つまり序盤に受けた印象と、紡がれた物語から感じる印象に自分の中で相違があったからなんですよね。

始まりは重厚的なんですよ。
人の死を扱っているわけですし、「人間を知る」物語、そして「葬送」というタイトルから感じるのは、魔王が滅び、平和になった世界で出会いと別れ、そして死を送っていく、という情緒的なものを浮かべると思いますし、実際、私はそう感じていましたしね。

ですが、物語が進むにつれてそういった重厚的なものだと感じ取れるのは、メインではなく、サブテーマのような扱いになっているような・・・。

物語が軽くなった、というのは語弊がありますが、カジュアルさが増して、物語の重厚感が薄れたのは否めなかったです。
最初にハンバーグだと思っていたものが、実はハンバーグにかけるソースだったみたいな、物語に風味を持たせるための味付けぐらいの扱いだったんだな、と。
上手い例えが見つかりませんね・・・。もっと語彙力が欲しい。

しかしカジュアルさが増したからと言って、本作のメインテーマである「人の死」から外れた物語をやっているわけではありません。

ドワーフの話とかはまさに、フリーレンの本質に触れているような話でとても好きです。




では良い所を上げたところで、本作の問題点について思ったことを書いていきたいと思います。

本作における最大の問題点は、「作風と演出の相性が悪かった」という点です。

それを如実に感じたのは試験編。
激しい戦闘が行われていたとしても、それがいまいち気分的に盛り上がらない。
フリーレンやフェルンもそうですが、出てくる殆どのキャラクターにダウナー属性がついていて、そのキャラのテンション感と状況に大きな溝があるからだと思います。

テンションを0~100の間で数値化してみると、本作に出てくる殆どのキャラのテンション感って20~80の間くらいなんですよ。
そのため激しいアクションシーンになったとしても、本作のキャラは80くらいがテンションのMAXなので、状況とテンション感が合っていないなと思ってしまうんですよね。

自分的に戦闘シーンはテンション感的にMAXの100で観たいのに、冷や水が常時注がれてずーっと温度が80度くらいをキープしているような感じで、結局盛り上がる戦闘シーンがぬるま湯みたいな感じで終わってしまう。
そんな感じです。

キャラは凄く好きなんですよ。
デンケンから始まり、ヴィアベルやラント、ユーベル、リヒターといった、そのキャラが抱える個性が本作の作風と凄くマッチしているし、勇者ヒンメルの影響も垣間見える過去回想があって、話の筋道としても非常に考えられたものになっているなと思いました。

作画が本気を出しすぎてしまっているのも原因かなと思いますね。
原作では淡白な戦闘シーンを必要以上にカッコ良くしてしまったせいかもしれません。

しかし逆に言えば、作風とマッチしているシーンも当然あります。

例えば魔族という、人を襲う化け物が本作では無機質で恐ろしいものとして描かれているという所ですね。
この魔族の設定は、どこか冷たい印象を受ける本作の作風にマッチしているなと思いました。

そして、そういう描かれ方をしているうえで、人間と見た目が同じであるアウラのような強い魔族が、死に際に涙を流す人間らしさもあるというのが、いわゆるギャップ萌えというやつなんだと思います。
アウラはフリーレン作中でも屈指の人気キャラですし、そういうのが要因なんじゃないかな?と。

いずれにしろ試験編は、色々とフリーレンの中では異質でしたね。
テンション感に違和感を持つという、自分の中では新鮮な感覚を味わえました。


総評としましては「作風と物語には相性がある」ですね。

試験編以前の作風が、静寂さや物静かなものであるため、ダウナー属性とは相性が良かったのですが、戦闘シーンがメインである試験編は、躍動や成長の要素が多かったために、ダウナー属性とはかなり組み合わせが悪いように感じました。

特定の属性を沢山のキャラにつけるのは構いませんし、それが作品の色としてあるならそれはそれで大切なものだと思います。

ただそれは同時に縛りでもあるので、自分の作品をいかに客観視できるかが意外と重要なんですよね。
ですがこういう作業は本来編集者がやるべき仕事なので、作者さんの責任ではあまりないかな~と思います。

描き方次第な所もあると思うんですけどね。

と、長々と本作のマイナスな感想について書いてしまいました。
すいません。
物語全体として見ればとても面白かったですし、キャラも魅力的で、ただやり取りを見るだけでも幸せな気持ちになる日常回は特に好きです。
作画もきれいですし。
自分的にお気に入りなシーンは、メトーデにフリーレンを取られて、嫉妬しているフェルンですね。
素直にめちゃくちゃ可愛かったです。

こんな風にフェルンに母性本能を持たせたりなど、キャラの肉付けやギャップ萌え、掘り下げ方が上手い所が本作の人気な理由だなと思いました。

というわけで以上です。

投稿 : 2024/06/28
閲覧 : 69
サンキュー:

6

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