「竜とそばかすの姫(アニメ映画)」

総合得点
69.7
感想・評価
221
棚に入れた
641
ランキング
1743
★★★★☆ 3.5 (221)
物語
3.1
作画
4.1
声優
3.3
音楽
4.0
キャラ
3.3

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ネタバレ

エイ8 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 3.5 音楽 : 4.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

私の戦闘力は53ロゴです

フォロワー数という戦闘力を超える企業協賛数というパワーw(尚、本当に53もあったかは知りませんw)

『竜とそばかすの姫』(りゅうとそばかすのひめ)は、スタジオ地図制作による日本のアニメーション映画。2021年7月16日に東宝配給で公開された。
50億人以上が集うインターネット仮想世界〈U〉と出会った女子高生を主人公とした物語。「ベル」というアバターで〈U〉に参加し、その歌声でたちまち世界に注目される存在になっていく一方で、竜の姿をした忌み嫌われる謎の存在と出会い、変わっていくさまが描かれる。
2022年1月に第45回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞、3月には音楽スタッフの岩崎太整、Ludvig Forssell、坂東祐大が第45回日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞している(wikipedia)

とても少女漫画な世界のように思えました。表では幼い頃のトラウマを抱えた陰キャが幼馴染のハイスペ男子に溺愛されていて、裏では50億人の中で最高の人気を誇る歌い手でありながら最も嫌われ者の竜と禁断のランデブーに洒落込むという「美女と野獣」の皮を被ったよくあるワルとの恋愛もののよう。

こういうのを二つも混ぜ込むだなんてちょっと欲張りすぎやしませんかねw結局のところすずが好きなのはしのぶ君なのか竜なのかわからなくなってきます。最後に恵君とキスせーへんのかいと思っちゃいましたがよく見たら彼まだ14歳設定なんですね、そりゃさせられないかwというかさせないための14歳設定というか、竜との関係は色恋によるものではなくあくまで庇護愛に近いものなのでしょう。そう言う意味ではしのぶ君がすずに向けてる愛情に近いものがあります。

逆に考えるとすずは自分を見守ってくれていたしのぶ君のことが好きなので、恵君もそうなりかねない構造ではあります。元々ベルは竜にキスしようとしてましたし、彼が14歳でなければ乗り換え又は浮気もあったでしょうねwしのぶくんが最後これですずと「普通に付き合える」と表現しましたが、これはカップルとして付き合うのと庇護ではない普通の関係性に戻るのどっちにもとれるようにしてると思われるので、彼にも脈はあるんだと思います。

構造的に見ると色々と対比させる伏線が込められているようですし丁寧に作られているとも思いますが、逆にそのクドさが純粋なエンタメとしての楽しみを奪ってる気もしました。一昔前ならこういうのも芸術の一種として好意的に受け止められてたんでしょうが、現代はもっと脚本自体がわかりやすくないと厳しいのかもしれません。或いは逆に、ひと時のジブリアニメのような難解さ或いはエヴァのようなむせ返る匂わせがある方が良いのかも。

特にすずと竜の対比はあからさま過ぎました。ただあまりよくないなと思ったのがすずのペットに障害がある対比であるかのように恵の弟?の知もあんな感じにしていたこと。見ようによっては知に関しては保護すべきだけの存在のようにしているようで何だかちょっとなあと思わされました。結果的に彼は導き手としての役割を果たしましたが、個人的にはかなり微妙なところでした。

そういや竜にだけたくさんAIが付き従ってましたがアレ何なんでしょうね。一つは知くんでしょうが、まあひょっとしたらすずにとっての合唱隊のおばさん方の対比用なのかも。でもAIってのが何ともwこんなんおばさん達はモブだって言ってるのも同じやんw

AIだけでなくバレない城を用意されていたりとか彼があそこまで優遇されていた意味もわかりません。ひょっとしたら彼もジャスティンと同じように〈U〉内部に刺激を与えるために用意されたのかもwそもそも生体情報を抜き取っておきながら何にも利用しない企業なんてある筈もないですし、裏では色々とすごい陰謀が巻き起こってそうw

仮想空間ものは「誰もが主人公」みたいな謳い文句がありますが、実際のところ九分九厘はその他大勢のままです。現実でうだつの上がらないのがネット空間でなら輝けるということは稀です(50億もユニークユーザーがいるなら尚更)。本作では〈U〉の空間では潜在能力が発揮されるそうで、それがすずや竜のような傷を抱えた人をチート級の存在にまでのし上げていましたが、実際には彼等のような人は五万といるので特別な存在ではありません。いうまでもありませんが彼らはあくまでモデルとしての役割を担っているだけです。なので、むしろすずのような片田舎の地味な女子という属性を有しているからこそ逆にさっさとトップになれちゃったりしますw所謂テンプレというやつです。

本作はガワはコテコテなまでのテンプレなのですが、その中にテーマに沿ったオリジナリティを埋め込んではいます。埋め込んではいるのですが……そのテーマ自体がもう擦られ過ぎてチープ化しちゃったものであり今更感も強いです。結局歌(そのものではなく)感動的な演出でお涙を頂戴しなければ戦えてません。田舎のアイドルルカちゃんが好きなのがしのぶ君ではなく実はカミシンとか見たまんまのフラグ。意外性がほとんどなかった辺りもわかりやすい反面評価し辛いポイントかも。また、視角情報とかを奪っておきながら普通に現実と仮想世界のマルチタスク生活できるようにしてるのも意味不明。何で仮想空間にダイブしながら河原走れるの、危ないでしょとか思いましたw多分それだけ必死ってことのアピール何だとは思いますがあれってゲームしながら公道走ってるようなもんですからねw

過去に母が在籍していたとはいえ歌えない筈のすずがそのまま合唱隊にいるのも変な感じですし、しのぶ君も含めてすぐにベルがすずだと分かった理由も明かされてません。というか他の皆はアバターあったのに彼だけなかったですよね?これは多分しのぶ君だけはすずの現実担当という意味なんでしょうが、だとするといよいよすずがベルだと分かった根拠に乏しいかも。君の事を理解しているよという暗喩というか直喩でしょうがほとんど超能力レベルかと。

超絶ハッカー少女ヒロちゃんの存在は……まあ創作ではスーパーハカーはどこにでもいるので本作にばかりこの点をつっつくのは良くないかもしれませんが、実質彼女がいなければ回らない超重要な人物ではありました。とはいえすずが過去を乗り越えていない「だから一緒にいるんじゃん」は何とも。本作では完全にすずのための存在だとは思いますが別のテーマの作品なら「同情なんかいらない」とか「結局は自己満足」みたいな形で揶揄されかねないやつですねw

東京での恵らの父との対峙。これほんとよくわからなかったです。何でJKに見つめられただけであんなおっさんが腰抜かすねん、通報を恐れたから?いや今更でしょって感じ。ベルのようなアイブラックならぬアイレッドが施されたから?実は彼のやましさを見透かされてるようだったから?まあ何かしら理由があるんでしょうがいくらなんでも肩透かしが過ぎます。

とはいえ一応本作はハッピーエンドのうちに幕を閉じました。閉じましたが、逆に言うとあんな河原のシーンでお茶を濁して終わってエピローグの一つも描かなかったのかというと今後彼女を待ち受けているものは地獄しかないことがわかってるからかもしれませんw

投稿 : 2024/04/23
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