蒼い✨️ さんの感想・評価
4.1
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
理想は理想で終わるのでしょうか。
【概要】
アニメーション制作:シンエイ動画
1992年3月7日に公開された97分間の劇場アニメ。
原作は、藤子・F・不二雄が『月刊コロコロコミック』
にて連載していた「大長編ドラえもんシリーズ」作品。
監督は、芝山努。
【あらすじ】
授業で先生が雲についての説明をしていると、
天国があると信じているのび太は天国の雲がどこにあるのか先生に質問するが、
ピュアなおこちゃまだとクラス中のみんなに笑われる。
天国があることを証明するために図書室で本を借りて、
それを根拠に雲の上に国があると主張するのび太だが、
神話や民話で全部作り話だよとドラえもんにまで否定される。
たくさんの気象衛星や観測衛星があるから天国があるなら発見されてるはずだと、
ダメ押しされてショックで家出したのび太に、
天国がなければ自分で作ればいいじゃないと「雲かためガス」などいろんな道具で国造り。
今のペースだと完成まで2~3年かかると、しずかとスネ夫とジャイアンに出資を募り、
スネ夫が大株主になって計画は順調に進む。
その頃、世界各地で動物が上空に浮かぶ雲に吸い込まれる事件が発生していた。
殆ど完成をした雲の王国を楽しむのび太たちであったが、王国は謎のUFOに発見されてしまう。
雲の上にはUFOを含めて高度な科学文明を持つ天上世界があり、
接触した天上人に国に招待されるドラえもんたち。
だが、天上人は地上人に環境汚染された地球の将来を憂いてて、
自然の回復に向けたとある恐ろしい計画がまもなく実行されようとしていた。
【感想】
大長編ドラえもんの第13作目。
1986年の「天空の城ラピュタ」が人気があったのが影響したのか知らないですが、
漫画やゲームで空の上に存在する城や街や滅びた超古代文明といったネタが多く生まれたような。
藤子・F・不二雄先生は元々がSF作家としての側面が強いですから、
地上の人間の知らないうちに空の上ではSF世界が発達していて既に宇宙人と交流している。
そんなロマン溢れる設定の天上世界には童心をくすぐられながらも、
これの2年前の「アニマル惑星」と同じく、
人類への警告と環境保全活動の勧めといった主張が強い、やたらと啓発・教育的な内容。
環境問題で地球の未来を憂いて地上の文明をリセットしたい天上人を説得する話ですね。
天上世界も環境に配慮したユートピアっぽく見えながらも、地上人を見下していて、
一応は生命までは奪わないものの、逆らうものは消してしまえ!な思想のディストピアだったり、
先進国の大国の優越感みたいなものが露骨だったりでして、それに抗うためにドラえもんが、
天上世界を形成してる固形に加工された雲を自然の雲に戻すガスで脅すのですが、
それが核抑止力議論を連想させるものになっていまして、武器に依る均衡や交渉は、
人の心によって必ず悪い結果をもたらすと言った懐疑的な内容であり、
善行と話し合いでこそ、相手からの信頼を勝ち得ると言った理想主義に根ざした内容ですが、
昨今の現実の世界情勢を見てたりしますと、この漫画で語られている平和な世界の作り方は、
ただのお人好しな夢だと思えたりでして、これは藤子・F・不二雄先生が甘いというより、
おぞましすぎる現実の世界こそ責められるべきなんでしょうかね。
森林の伐採や二酸化炭素の排出を問題視して、それに代わる完全無欠のクリーンエネルギーとして、
今回もメガソーラーを推奨していますが、現実では発電量が少なく、一般家庭の電気代高騰の元凶、
流通しているソーラーパネルの8割が中国産で推進活動は利権絡みであり、
山が多い日本の地形は設置に適してないために、
山を開発(ドラえもんで問題視している環境破壊そのもの)してパネルを敷き詰める本末転倒。
夢は夢であるうちは美しいのですが、実用段階での美しくない現実を見てしまうと、
美味しんぼの化学調味料や農薬は悪だ!みたいに、安易に肯定するのも考えものであると思ったり。
1990年頃に描かれた理想と令和の今の現実との数々の違いに、
なかなか厳しいものを感じながら観てしまった作品でした。
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。