「王様ゲーム The Animation(TVアニメ動画)」

総合得点
56.7
感想・評価
365
棚に入れた
1108
ランキング
7210
★★★☆☆ 2.6 (365)
物語
2.3
作画
2.7
声優
3.0
音楽
2.7
キャラ
2.5

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ネタバレ

ナルユキ さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.2
物語 : 1.5 作画 : 2.0 声優 : 3.5 音楽 : 3.0 キャラ : 1.0 状態:観終わった

王様というよりもはや暴君。その正体にもゲンナリ

嘗てはmixi、GREEと合わせて“国内3大SNS”とも称された『モバゲータウン(現:Mobage)』において総閲覧数4000万を誇る人気ケータイ小説────と書くと何やらすごい作品の様に思えるが、所詮はなろうと同じくアマチュア作品が狭い世界でちやほやされていただけに過ぎない。いざ書籍化、そしてコミカライズしてみた時点でその内容のあまりの杜撰さに世間からの評価は芳しくなかったことを覚えている。
そんな作品がアニメ化されたとて、万に一つも逆転評価は有り得ない。只々『2017年秋 今季NO.1○アニメを決めるスレ』にその名前が挙がるだけとなった。

【ココが面白い?:王様ゲームになぞらえた学級崩壊スプラッター・ホラー】
パリピ大好き王様ゲーム(偏見)。「王様」が出した命令(罰ゲーム)をランダムに決まった参加者が行うレクリエーションが、1クラス30人という大規模と恐ろしいゲーム内容で魔改造されている。これが本作の特徴かつ最大の良点と言えるだろう。これに微塵も同意できない人は本作には全く向いていないとも言える。
誰が王様であるのか全く判らず、恐らくは同一人物が連続して命令を下していく。その命令を完遂できない時、対象者は超自然的な力によって惨たらしい罰が与えられるのだ。
命令の過激さは急速にエスカレートしていく。最初は男子が女子にキスをする、胸を触るといった軽く性的なもので始まったのに、一度逆らって死ぬ者が出てしまうと次からはいきなりS○Xの強要。その次からは趣向を凝らすものの結局、罰は免れない内容へと変貌していく。「不要なことを犯すな」という曖昧な命令からクラスメイトの半数が一気に死亡してしまう超展開には様々な意味で唖然としてしまう。

【でもココがつまらない:王様の王様による王様のための人間虐待】
しかしこの王様ゲーム風デスゲーム、主催者である王様が決して正体を明かさず、人を遠隔で殺す超常的な力と一方的に命令する権利を1度たりとも手放さない。その命令も性的なものと命に関わるものの2種類に傾倒しておりとても下賎。与える罰も対象者への因果関係や統一されたテーマといったものがなく、単に人の血や死、性行為を観たい「出歯亀」でしかないのではと観てて誰もが勘繰ってしまう。
{netabare}さらに命令や罰は時として御都合────否、「作為的」な内容に変貌することがある。死を恐れた対象者が自ら命を絶とうと高所から飛び降りて重体となった後に死も痛みも伴わない罰を下したり、AとBの性交を命令・実行させた後にBと付き合っていたCに『王様としての命令権』を与えてAへの殺意を後押ししたり────と凄まじい性格の悪さでゲームメイクを行っていく。悪役の性格が悪いこと自体は結構なのだが後々、王様の正体が判明した時にこの“生きた人間”が下したかの様な陰湿な命令や罰は大変、不自然な展開に思えてしまう。{/netabare}
{netabare}クラスの交友関係がすべからく把握されているので主人公・金沢伸明(かなざわ のぶあき)は『王様はクラスメイトの内の誰か』と推測する。これを支持した奈美(なみ)が『自分に好きな命令を下せ』という命令が出た時に『王様に触る』という命令で王様が誰なのか暴くという逆転策を実行するのだが、クラスメイト全員に触れても『服従確認』とはならず、彼女には敢えなく罰が下されてしまう。{/netabare}
突如として始まった王様ゲームがいつ終わるのかも明確にならないため、無理やり参加させられた高校生たちは只々自分や親しい友人・恋人の死ぬ番を遅らせることしか出来ない。これでは只、姿を見せない超常的存在による一方的虐殺でしかなく、ゲームの名を冠していながら直ぐにその趣が感じられなくなってしまう。
『こうすればゲームを抜け出せるんじゃないか』『王様を倒すことが出来るんじゃないか』という発案も悉く王様が「ルール違反」として“密かに”禁じており、違反した者にはすべからく、死の制裁が加えられてしまう。自らの保身に関しては一切の隙が無く、参加者に対しては毎度、命に関わる理不尽な命令を毎日携帯メールで淡々と強いていく。これを”暴君“と呼ばずして、他にどういった表現があるのだろうか。

【そしてココがひどい:高校生は最善手を打てないようです】
結局、影も形も見せない王様相手には為す術がない高校生たちであるが、それにしたってもう少し利口な集団行動は取れるだろう、とツッコむ手が全話通して止まらない(笑) このテの作劇上「大人に助けを一切求めない」ことが野暮なツッコミだとしても──
①送信者が判らない王様メールを内容から「伸明の仕業」と決めつけ『こんなことまでして奈津子と付き合いたいのか』と扱き下ろす
②王様メールが本物だと解ると①とは逆に『伸明は命令を無視して奈津子を殺そうとした』という言いがかりをつけて伸明を糾弾し、リンチ。多数はそれを傍観
{netabare}③ ②で伸明は本多奈津子(ほんだ なつこ)へのキスすら拒絶したことが解っているはずなのに『伸明に犯されそうになった』という彼女の狂言を全面的に信用して2度目のリンチ。多数はそれを傍観
④『人気投票』や『指折りゲーム』などの命令を“昼から”率先的に実行する(深夜に集まれるならそこまで先送りしようや……)
⑤自分を王様だと嘯いて場を混乱させる岩村莉愛(いわむら りあ)や自分の身を切らずに他者を犠牲にして生き残ることしか考えていない奈津子の拘束・排除に誰も動かない{/netabare}
──と単なる集団ヒステリーや思考停止では片付けられない愚かしい行動・非行動が目立っている。
個人1人ひとりを観ても迂闊な点や常識外れ・行動指針のブレが多く、とくに主人公の伸明は──
{netabare}①罰の対象者が死なないよう見張りを兼ねて共に夜を過ごしていたのに、峠(深夜0時)を越えた途端に気を緩めて対象者を独りきりにし、死なせてしまう
②親友とそうではない女生徒で人気投票を行う際、汚い裏工作で親友に票が集まるようにする
③ ②の後で親友に急遽、性交の命令が下された際、(残り10分で考える時間が無かったとは言え)自分の彼女と一緒に個室に閉じ込めてセルフ『S○Xしないと出られない部屋』を作り上げる(『お前なら許せる!』)
④ゲームを終わらせる手がかりを探しに夜鳴村(最初にゲームが行われた場所)へ訪れるが、廃村で誰もいないのでロクな収穫を得られず1日をムダにする
⑤ ④以降はゲームを調査せず、『24時間マラソン』など生存者との命令の遂行に全リソースを注ぐ{/netabare}
{netabare}⑥自分がチェーンソーで首を斬られるまで新しい彼女とイチャラブする{/netabare}
──という具合である。
他にも{netabare}死体に送られた1文字メールからアンチウイルスソフトを作り上げて王様と謎の電子戦を繰り広げる莉愛、クラスメイトを間接的に殺し過ぎて最後の命令を達成できない“詰み”の状態に持っていってしまう奈津子、そんな彼女に裏切られ右手指を全て折られたのに昔のちょっとした好(よしみ)だけで助けてしまう愛美、出目の数だけ人を殺して振り手も殺す『ダイス・ゲーム』にて振り手を買って出て6の目を出してしまう直也(なおや)、罰で目が視えなくなったのに河川敷の階段から海岸まで歩いて入水自殺に成功する奈美、そして親友のために買った帽子を斬られた頭にではなく首なし死体の方へ被せる?亮etc.{/netabare}ツッコミどころは満載だ(笑)

【最後にココもひどい:王様ゲームの正体と終了条件】
ここまでレビューを読んで頂ければ例え本作未視聴の方でもとれだけ酷い内容か察することが出来るかと思う。それでも中には非道なゲームを仕掛ける王様の正体が気になってしまう人がいるのかも知れないが、それだけを目当てに本作の視聴に踏み切るのはお奨めしない。
簡潔に、そして痛烈になじれば本作における王様の正体は「しょうもない」し「『らせん』のパクリ」だし「無理がある」。
{netabare}そう、王様の正体は「ウイルス」であり、罰は感染した参加者の恐怖を引き金にウイルスが神経系に作用し肉体が無理矢理操作されて自死したり自壊したりする、といったものだった。他作品なら後に『バイオハザードリベレーション2』で感染者の抱く恐怖(アドレナリン反応)で活性化しクリーチャー化させる『t-Phobosウィルス』が登場し、ウイルスが引き起こす細胞自滅(アポトーシス)には1998年に販売されたゲーム『メタルギアソリッド』に登場する『FOXDIE』という前例がある(流石に首や手足が全自動で千切れ飛んだりはしなかったが)。
しかしこの王様ウイルス、ある一定規模(劇中であれば1クラス)までに感染が及ぶと何故か人の手を借りず巧みに電子機器やネットワークを操作し、王様としての命令や罰を「メール」で参加者へ伝えていくという前代未聞な働きを示してしまう。これでは生物の体内に悪影響を与えるウイルスとコンピュータに被害をもたらすプログラムである「コンピュータウイルス(マルウェア)」が同じものということになってしまい、本作における最大の矛盾点として指摘されることは避けられない。{/netabare}
{netabare}そして王様ゲームを終わらせる唯一の手がかりは王様ゲームがネットに潜入した際に出来たバグにあるらしく、それは一文字ずつ王様ゲームで脱落した死者に送信されていた。伸明は前回と今回、そして奈津子が嘗て生き残ったゲームで手に入れた一文字メールを合算させ、ようやく意味のある文章を完成させる。その文章は──


{netabare}王様ゲームを終わらせるには、
参加者全員の命を捧げなくては
ならない。
誰か一人でも生き残る限り
王様ゲームは
全ての人類が滅亡するまで終わらない{/netabare}


うーん、「時間返せ!」とまで書くのはやり過ぎだろうか(笑)
この事実を知ってクラスメイトがなるだけ多く生き残るよう協力し、また協力を仰いできた伸明が激しい後悔や無力感に襲われるとか、今まで他人を犠牲にしてまで醜く生き残ってきた奈津子が一転して潔くなるといった描写に続くならまだ意味のあるオチだったのだろうがそうもならず、『人類滅亡なんて知ったことか』とある意味で究極の利己主義を掲げて直接参加者を殺しにかかった奈津子と伸明で相討ち。生き残った里緒菜(りおな)もゲームを通じて愛した伸明を喪った悲しみと自らの命を絶たなくてはならない使命感で以て入水自殺を図る────しかしそんな彼女の英断も空しく、また何処かの誰かに王様ウイルス付メールが届き、王様ゲームは再開されるのだった。
バッドエンドがそういうものだとしても、かなり徒労を感じる結末である。{/netabare}

【総評】
2024年現在で総合満足度☆2.6、総合アニメランキングは驚異の6999位────まあ小説『王様ゲーム』をアニメ化すれば、こんなものであろう。
原作からして明確なプロットが無く、無料で読んで書けるWEB小説ならではの典型的な欠点がそのまま形となっている。きっと作者は読者の反応を見ながら投稿し、スピード重視の執筆と次章への期待感を煽るだけの山場作りで読者を引き留めていたのだろう。結果、通しで読むとストーリーがぶれまくりの矛盾だらけな代物となった。
だから王様の正体が{netabare}生きた人間の様にしか思えない振る舞いの中で人に感染するウイルスだったりコンピュータウィルスだったりと変幻自在に変わっていく{/netabare}のである。それを1クール(12話)アニメとして他人がバラして再構築。ただでさえ軟骨程度の柔さだった物語の背骨が完全に消失し、もはや「ストーリー」ですら無くなってしまった様だ。
各キャラの心情や計略も深いようで浅く、行動にリアリティが感じられない部分も多々、見受けられる。
1番まずいのは口先だけで『協力し合おう』『クラスが1つにまとまろう』と言ってはいるのに王様の正体を暴きに動くのがごく一部しかおらず、どう観ても王様の理不尽な命令を遂行する方に全力を注いでしまっていることだ。後半になると全員が助かる命令は来なくなり、参加者同士は潰し合いをするしかなくなる。そんな争いも『生贄投票』や『ライアーゲーム』といったデスゲーム物には欠かせない、参加者同士の駆け引きや頭脳戦というものがほとんど生まれてこない。
中身がダメなら作画という外見だけでもしっかりしてほしかったのだが、制作会社は『アニメーションスタジオ・セブン』という無名であり、映像も人が人へ飛びかかるその空中で一旦、停止するような妙なカクつきが散見される。恐らく低予算で済ませるためにコマ数が少ないんだろうな
結末があの程度である以上、本作のウリは識者の好まない「エログロ」しか無いのだけれども、出血は汚い色だし自主規制はキツいし見たいアングルで何故かルーズ(引き)の画角で写しているし────となけなしのニーズすら逃した悪手ばかりを打っており、アニメの制作技術以前の問題を感じずにはいられない。
音楽面もこれといって他作品に優るところは無いだろう。声優のキャスティングだけはやたら豪華だが、肝心の莉愛役に『ラブライブ』の西木野真姫しか出来ないPileを起用してしまっており、彼女のクールな印象をその棒演技でぶち壊してしまっている。
「王様ゲームの王様が殺戮を繰り返す」という発想自体はパニックホラーでもデスゲーム物でも理に適った素材であったが、そんなことをする王様が存在する理由付けや殺害方法、正体や目的など物語として最低限、納得させて欲しい所が全く考えられておらず、それらジャンルの「命の軽さ」を超えて登場人物全てを弄ぶシナリオ・オチがそのまま読者・視聴者をバカにしているような錯覚を引き起こしかねない。映画に例えるなら(まあ実写化もされてるんだけど)紛れもなく「Z級」に区分される出来映えである。
こうなることはある程度、原作や書籍の評判から予測出来た筈なのにどうしてアニメ化まで踏み切ったのか。アニメ業界七不思議の1つに加えても良いと私は勝手に思っております(笑)

投稿 : 2024/03/30
閲覧 : 105
サンキュー:

9

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