キャポックちゃん さんの感想・評価
3.4
物語 : 3.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
類型から外れた視点で物語を紡ぐ
多くのRPGが類型的なのを逆手に取り、類型から外れた視点で物語を紡ぐアニメ。私はゲーム世界を再説するサブカル作品は概して嫌いだが、本作は意外と楽しめた。主人公が「ゲームの規則」に違和感を覚える『灰と幻想のグリムガル』と並ぶ、“勝手にスピンオフ”タイプの佳作である。
RPGでは、トールキンの『指輪物語』をなぞるように、得意分野の異なる数人の冒険者がパーティを組んで旅に出るという設定が多い。ラストで目的を達成すると、そのままエンディングになるのがふつうである。これに対して、本作では、その後に続くはずの別れに目を向ける。冒険譚とは異質な英雄たちの日常を描いており、そこが何とも快い。
スマホなどさまざまなモバイルツールが発達した現在、他者と別れるためには意図的に連絡を絶つ必要がある。しかし、中世ヨーロッパを思わせるRPGの世界では、異なる人生行路を選択するだけで、人々は自然と音信不通になる。今の若者が経験しづらい、静かな別れである。フリーレンのパーティも、魔王を倒してからはバラバラになり、月日が流れるにつれ、鬼籍に入る者も増えてくる。長寿命のエルフ族であるフリーレンは、去りゆく人々を見送りながら、静かに日常生活を続ける。ほとんど感情をあらわにしないので、かえってその心の内をあれこれと想像し、『ポーの一族』や『ボマルツォ公の回想』に思いを馳せて(勝手に)胸を熱くしてしまう。
私が好きなのは、僧侶ザインが絡むエピソード(第12-17話)。冒険者の夢をとうに諦めているザインをパーティに勧誘するのだが、その結末がどうなったかと言うと…。誕生日のプレゼントを巡るフェルンとシュタルクの諍いを優しく描いた第14話「若者の特権」、フリーレンたちが頑固ばあさんのささやかな願いを叶える第16話「長寿友達」が素晴らしい。
残念ながら、視聴者の歓心を買うためか、何回か大味なバトルが挿入され、感興を削ぐ。特に、“断頭台のアウラ”のエピソードは、なぜ不用意に魔力比べを行ったか納得のいく説明がされず、見ていて腹立たしかった。第2クールの大半を占める「一級魔法使い選抜試験」も、長すぎて退屈だ。
欠点は少なくないが、後味の良さは抜群である。本編を見事に受け止めるEDアニメが美しい。