てとてと さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
JRPG的なろうテンプレを用いて生き方を描いた良作
なろう系のハイファンタジー。1期13話2期12話で全25話。
タイトルに反し殆どスローライフしてない、割と真面目な内容。
2期合わせてのレビュー。
【良い点】
タイトルに反しシリアス寄りの骨太な内容。
「加護」設定を軸に、鋭いテーマ描いている。真の英雄とは?どう生きるべきか?など人生哲学。
賢者(嫌われ役)の嫉妬で勇者パーティー追放された主人公が、与えられた才能と、強要される生き方に対し、アンチテーゼを示していく。
この世界の住人は皆生まれながらに「加護」なる才能と「衝動」で生き方縛られる宿命があり、
これに翻弄される悲劇的なドラマと、打ち破っていく主人公の在り方がゲストキャラ含めて重層的に描かれる。
加護という才能と望む生き方は違う、ならばどう生きるべきか?世界救う勇者ではなくとも、ささやかな英雄でもいいじゃないか。
もし加護の通りにしか生きられぬならば、神は何故人に意思を与えたのか?(作中キャラのセリフ)
などなど、幾多のエピソードやセリフで分かり易くテーマを提示していた。
2期の狂信的な勇者を更生される展開も説得力あり。
スローライフな生き方と、交流してきた多くの人々との繋がりと主人公の人徳による信頼関係が、加護や魔族絡みの陰謀や悲劇に対して
ちゃんと説得力のある回答を出し、小気味の良い希望を示せていた。
主人公レッドとヒロインのリットとの、素直なラブロマンスも非常に良い。
てらいなくキスしたり愛を告白する真っすぐさも好感持てる。
子供の恋愛ではない、心も体も素直に愛し合っている男女の関係。青少年向けの漫画やアニメでは意外に希少。
サービスシーンも深夜アニメ的な萌えサービスなのは勿論、それ以上に素直に愛し合う関係を描く上で必要な描写。
2期の新婚旅行や結婚指輪探しから、ラストのハッピーエンドも素晴らしかった。
妹の勇者ルーティも可愛い。ジャヒー様並みにかわいい。呪われし勇者の加護による悲劇的ヒロイン性高し。
感情希薄やブラコンになっても仕方がない理屈付けが上手い。
勇者の加護というか呪いの軛に対する兄や、ユウジョウ結ぶ暗殺少女ティセ(かわいい)との交流も良い。
終盤はルーティの強固な呪いに関しても、どう生きるべきかなテーマが分かりやすかった。
キャラクターの描き方も良い。
メイン以外でも1期2期敵役の賢者と勇者も加護の犠牲者という視点や、2期の俗物聖職者も人物に深みを感じるなど。
特に2期の枢機卿は欲深で私腹肥やす悪人だけど、彼なりの生き方や勇者との関わり方がある。
本作の清濁併せ呑みつつ生き方模索する作風は、他作品には中々無い良さだった。
作画水準はさほど高くはないが、女の子の絵が好感が持てる可愛さ。
また、萌えエロスが素直で水着やお風呂シーンで謎の光や煙を控えるなど、かなり見応えがある。
戦闘シーンはヌルヌル動くわけではないが、十分に見せ場は作れている。
主題歌はルーティの心情しっかり描写した2期OPが良かった。
【悪い点】
タイトル詐欺な上に、無駄に長い。骨太な内容に対してタイトルで損しているように思える。
1期は「ざまあ系」?的な嫌味が出てしまっている。
賢者みたいな露骨な嫌われ役を当て馬にするタイプの作劇は嫌い。
賢者は加護に圧し潰された哀しき男で根っからの邪悪ではない描かれ方だっただけに、
一切の救済が無く嫌われ役のままだったのは残念。
賢者を納得のいく形で救済していれば一段階評価上げてた。
前半はイマイチ。肝心の?スローライフシーンにあまり見所が無い。
時折あるコメディーもイマイチ。
【総合評価】8点
「生まれながらの才能で生き方決まる」的な世界観に抗う系作品は少なくないが、
その中では随一の良作。
ヒンドゥー教の価値観から着想した作品との事。
ある意味現代の世相に対し、読者が漠然と感じている題材を描いた良い作品。
普遍的なテーマをちゃんと描いており、少なくとも凡百の駄作ではあるまい。
評価は「とても良い」