「惑星のさみだれ(TVアニメ動画)」

総合得点
60.0
感想・評価
162
棚に入れた
358
ランキング
6043
★★★☆☆ 2.8 (162)
物語
2.9
作画
2.2
声優
3.1
音楽
3.2
キャラ
2.9

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ネタバレ

ナルユキ さんの感想・評価

★★☆☆☆ 1.8
物語 : 2.0 作画 : 1.0 声優 : 3.0 音楽 : 1.0 キャラ : 2.0 状態:途中で断念した

やる気ないなら帰れ。帰って家業でも継いでてくれ

『BLUE REFLECTION RAY/澪』と同じく作画等の低クオリティで最期まで物語を追うことすら難しい、そんなタイプだと見始めから感じさせた。
何しろ1話冒頭から眼鏡をかけた青年と、マスコット枠にしてはやたらリアルなトカゲが殺風景な一部屋で見つめ合うというシュールな状況から始まり、そこから一切動かない。無駄にカメラを動かしながら何かが動いている風な演出で1枚絵を回転させているのだが、それはとてもアニメーションと呼べるものではない。とてつもなくシュールな状況をシュールな作画で彩り、本来は異能バトル物である本作を只のギャグアニメと見間違える程のレベルにまで貶めてしまっている。
『惑星のさみだれ』。それはあの熱きロボットアニメ『プラネット・ウィズ』のネームを手がけた水上悟志氏の作品であり、コアな漫画ファンが時たまオススメに挙げる程の上作だ。2005-10年で完結した旧タイトルでもあり、恐らく昨今のアニメのリメイクブームに乗っかった形で22年にアニメ化された。それは原作ファンとしては当時、夢にも思わなかった朗報であったのだろう。
そんなファンを絶望に叩き落とす酷い出来映え────この作品はむしろ、原作ファンが阿鼻叫喚する様を対岸から観た方が楽しめるまである。我ながら性格悪いですね(笑)

【ココがひどい:古い作品には古臭い演出を】
そもそも漫画のアニメ化を行うにあたって『NAZ』を頼ったのが大間違いだろう。
NAZは作画崩壊で有名な『俺が好きなのは妹だけど妹じゃない』を手がけたアニメ制作会社であり、作画の悪さは皆のお墨付き。『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』など評価高めな作品も作ったことがあるものの、その面影を本作に感じることは一切無い。
ノイ=クレザント卿と名乗るダミ声ツダケンボイスのトカゲは『姫』を守るための『指輪の騎士』になる契約者を求めており、その契約を雨宮夕日{あまみや ゆうひ}という青年と(勝手に)結んでしまう。ノイに選ばれた雨宮は『掌握領域』という超能力を得たものの、己の過去に受けた教育故にやる気がない。そのやる気の無さが作画に表れてしまっている様である。
敵の襲撃に尻もちをついた姿勢で固まったままスライドしていく雨宮。アンパンチ風のさみだれパンチ。同じ姿勢でスライドしていった後、カットを挟んでバラバラになっている泥人形etc. 第1話の細やかな戦闘シーンだけでもヤバいと思わせる省エネ作画を連発しており、それらが何の前触れもなく登場するトカゲ→敵→さみだれという唐突な展開の連続で飾る本作の内容を描くため、原作を押さえていない視聴者を00年代へタイムスリップさせたまま置き去りにしてしまうのである(笑)
作画もそうだがBGMの古臭さもとんでもない。10年以上も前の作品なのでキャラデザの古さを感じさせる部分などは原作準拠であるのだろうが、それ以上に作画の雰囲気やBGMの古臭さが本作の古臭さを助長させてしまっている。

【ココもひどい:創意工夫の無い演出】
作画自体は作り手の力や予算が及ばず低クオリティ、というのは残念だが責めきれない所もあるだろう。しかし「原作の見どころをどのように魅せるか」といった演出に関してはどんなに下手くそで貧しい者にも試す権利がある以上、「やっつけ仕事」を見せられるのは不快でしかない。
地球は巨大なハンマーによって破壊される寸前だというトンデモ展開。それを止めるためにさみだれは姫として、雨宮は騎士として戦わなければならないことが解るが、ここでさらにさみだれの宣言がたたみかける。

『あんなんに地球は壊させへん! なぜなら────この地球を砕くんは私の拳だからじゃーーーーっ!!』

拳を突き上げながら叫ぶさみだれのシーンは原作未読勢でもわかる本作トップクラスの見せ場だ。
しかしアニメで観ると本当に只の低身長な女の子が夕焼けに染まる原っぱでそういう「ごっこ遊び」をしているようにしか見えず、絵に凄味──業界的(SHIROBAKO的?)には「外連味(けれんみ)」とよく言われているもの──が全く感じられないのである。
ぶっちゃけ原作もそこまでの画力ではない。雰囲気的には『金色のガッシュベル!!』や『うえきの法則』の様なサンデー漫画の初期絵を彷彿とさせる。これも原作がプラネット・ウィズより遠く前の作品なので仕方がないのだが、アニメ側もそんな原作のデザインや構図をそっくりそのまま(御丁寧に集中線まで)流用しているので原作漫画と比較しても精々「色がついた」程度にしか進化していないのである。
よって続く「忠誠を誓う」シーンもハッキリ書いて意味不明だ。さみだれと雨宮は本作の騒動を除けば只の隣人でしかなく、さみだれの方が年下である。そんな彼女がまたもや唐突に『忠誠を誓え!』と雨宮に迫り、彼はそんな熱に呑まれたらしく『御意』と答える。御意って何よ御意って?(笑)
「小さな魔王」とも形容される朝日奈さみだれ{あさひな - }の「畏怖」を感じ取れるオーラや表情といったものがきちんと描かれていないため、観ている側もなぜ無気力な大学生が小さな女の子に時代錯誤な頭の垂れ方をし、一転して修行(体力づくり)に励むようになるのか理解も納得もできない。

【ココもひどい:犬の1匹もマトモに描けない】
嘗て浮世絵の巨匠・葛飾北斎は『俺は猫の一匹もまともに描けない』と嘆いたそうだ。勿論そんなことはないだろうし、偉人の自虐だからこそ名言・逸話として後世に遺されている。普通、絵師やアニメーターが赤の他人からそんなことを言われてしまうのは屈辱以外の何物でもない筈なのだが、どうやらNAZは構わないらしい。
第1話から作画の悪い本作は話数を重ねる毎にさらに悪くなる。その筆頭とも言えるのが「犬」だ。登場人物の回想で当時飼っていた犬を散歩するシーンがあるのだが、これが蔑称“さみだれ犬”と言われるくらいに酷い。
①前脚が肩から延びていないため、犬なのに四つん這いの人間の様に見える
②足踏みをスライドさせることで歩行のアニメーションにしている。脚しか動いていないので物凄く不気味
③足先を常に画角から外した省エネ作画
④駆け出した時にリード消失(BDでは修正済み)
⑤散歩中はつぶらな瞳なのに駆け出した時は三白眼となり、顔も溶ける
⑥奥から手前へのアングルなので駆け出しはアップのスライドで表現。体毛の描かれてない胴体が強調されて最早、絵から飛び出した落書きにしか見えない
──と、犬の散歩だけでもこれ程の問題点が列挙できてしまう。
ここまで作画が酷いと熱血展開・感動話・シリアス展開・ラブストーリーetc.何を描いてもそのカタルシスを視聴者へ伝えることは出来ない。{netabare}バトル作品である本作は死亡・退場キャラも多く出しており、序盤からも仲間の一人が雨宮を庇って死ぬという鬱展開があるのだが、そんなシリアスなシーンなのに庇いに動くアニメーションや演出すらも酷すぎてシリアスな空気を出せずに終わってしまう。
作画が悪いだけならまだしもカット割りもおかしく変な間(ま)を作って展開の勢いを殺してしまっており、どうしても狂った背景やキャラデザのパースを意識せずにはいられなくなってしまっている。{/netabare}
配信版ではある程度の修正は加えられているものの、作画ミスも多過ぎる。普段の雨宮の服はTシャツとワイシャツの重ね着というスタイルなのだが、着替えのシーンも場面転換も挟まずジャージに着替わっていることがあり、しばらく経つと元の服に戻る。こういう細かい作画ミスを挙げ始めたらキリがない程だ。

【総評】
2クール作品であるものの、その半分────いや4分の1すらも視聴するのが耐えられないアニメだ。
もはやこれをアニメと言っていいのかすらわからない。それほど「作画」は常にガタガタであり、戦闘シーンは毎話必ずある筈なのにその描画に必要な作画枚数を全然用意できていない。いかに限られた予算でアニメを作るか。制作側が注力しているのはそこだけであり、作品が面白くなるかどうかは関係ない!とでも言いたげなほど脚本周りも酷く、原作では本来はあるはずであろう細かなポイントを削除し、メインストーリーだけを綴っている。{netabare}とりわけ大きいのは雨宮の妹の存在を抹消したことであり、これには原作ファンも怒り心頭に発した(水上氏は『原作でも上手く使いこなせなかったキャラだったから…』とフォローしている)。{/netabare}
ただ原作からして非常にスロースタートな作品でもある様で、序盤の唐突な展開についてこれなければ作画が良くても切る人はそこまで減らなかったのでは?という意見は否めない所もある。
しかし作画に併せて音響面も酷い作品は中々ないだろう。ベテランの津田健次郎氏や『呪術廻戦』の主人公役などで名を上げている榎木淳弥くんの演技が軒並み聴きづらいレベルにまで落とされているし、BGMは古臭いのに音量などの主張が激しい。役者の演技とのバランスが整っていないので声がBGMにかき消されることもあり、本来は印象的なシーンのセリフの印象もいまいち残らなくなってしまっている。
すっかりネットのおもちゃとなった作画崩壊ぶりを有志のGIFで楽しむ分にはいいが、いざ本腰を入れて観ようとするとこれほど苦痛を伴う作品だとは思わなかった。アニメ制作会社NAZは本作以降、元請作品を手がけていない現状が続いているが、どうかそのまま「あなたはもう、何もしないで」欲しいと願わずにはいられない。何もしなきゃ潰れる?ならばNAZに勤めている人は転職するなり実家に帰るなりすればいい。とにかく1アニメファンから言わせれば「やる気がないならアニメを作るな」。この一言に尽きる。

投稿 : 2024/05/10
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サンキュー:

7

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