Witch さんの感想・評価
3.0
物語 : 2.5
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 2.0
状態:観終わった
聴覚障害の描写はよかったが・・・キャラ描写に違和感
【レビューNo.115】(初回登録:2024/3/24)
コミック原作で2024年作品。全12話。
(ストーリー)
聴覚障害を持つ女子大生糸瀬雪は、困っているところを波岐逸臣に助けて
もらう。実は逸臣は同じ大学の先輩で国際サークルに入っていて、バック
パックで海外を飛び回る学生生活を送っているのだった。
耳の聞こえない雪にも動じることなく接してくれた逸臣に、少しずつ雪は
惹かれていく。
(評 価)
・聴覚障害の描写はよくできていた
・主人公は聴覚障害を持つ女子大生・雪ということで、この聴覚障害の
描写はホントよかったと思います。
・手話から始まり、最初逸臣のキャラデザをみたとき「唇」が特徴的
で凄く違和感を覚えたのだが
→ 後に雪が「唇の動きを読む」という描写があり、そのために唇
を細やかに動かす必要があるということで凄く納得できた。
・それから
・背後から不意に近寄り触れられると(足音が聞こえないので)ビ
ックリする。
・聴覚障害がネックになって、なかなかバイトが見つからない。
といった描写は、言われてみれば「なるほど!」なんですが、普段だ
と健常者には気づかないわけで、特にバイトの話は個人的にかなり衝
撃を受けましたね。
それでいて、聴覚障害を前面に押し出した「感動ポルノ」的な創りで
なく、「雪の日常の一コマ」的な自然な描写は好感が持てましたし。
・また逸臣の
・バックパッカーで感性が日本人離れしているところがある。
・「言語習得マニア」的なところがあり、「手話も言語のひとつ」と
いう捉え方をして雪と関わっていく。
というキャラ造形は自然さがあり、この辺りはよかったと思います。
・ラブストーリーというかキャラ描写に不満が残る
・主人公・雪が逸臣に少しずつ惹かれていく描写はかなり丁寧で納得感
もあり、この辺りは上手く描けていたのかなっと感じました。
・しかし逸臣の方の描写が・・・
「『雪』という名前のように『白く無垢な純心さ』に惹かれたのかな」
と感じる部分はあるのですが、全体的に
「はじめから都合よくイケメン男子に惚れられた」
という唐突感が凄くて・・・
まるで「わた婚:清霞様」を彷彿させるような女性原作者さんの妄想
「『理想の王子様』を描きたかっただけなんかい!」
という感じが拭えなかったんですよね。
・逸臣については、会って間もないのに「頭ポンポン」がネット上で物
議を醸したらしいのですが、個人的にはこれより
{netabare}「俺を雪の世界に入れて」{/netabare}
の方が、「こいついきなり何言ってんだ?!」って感じで「ムリ!」
って思ってしまいました。
女性的にはこういうセリフがグッとくるのでしょうか?!
上述したように逸臣は感性が日本人離れしているところがあるので、
「こういう距離の詰め方が逸臣らしい」
と言われれば、そうなのかなあとしか言いようがないのですが。
・それにこの2人以外の登場人物も「親友」「恋敵」等のサブキャラに
魅力がなく
「こういうキャラがいた方がエピソード創りやすいよね♡」
みたいな原作者都合が透けて見えるというか・・・
サブキャラの掘り下げなんかもあるんですが、それを見ても「とって
つけたような」という印象の方が強いというか、こちらに積み重って
くるものがないんですよね。極論でいうと
「2人を引き立てるために、他のキャラが存在する」
という構図に見えてしまうみたいな。
・雪というキャラへの思い入れが強すぎる?!
こういう表現が適切かどうか分からないですが、感覚的には
・原作者はある意味雪というキャラへの思い入れが強すぎる
・それ故に「雪目線」で視点が固定されてしまい、物語を大きく俯瞰
できていないようにも感じる
という印象かな。なのでキャラの造形が
・雪:凄く共感できる「理想的な主人公」
・逸臣:雪からみた「理想の王子様」
・サブキャラ:雪からみた「都合よく関わってくる存在」
という構図に見えてしまうみたいな。
そういう意味では、雪にしっかり感情移入して視聴できれば
(「雪目線」ではきれいな世界が構築されているので)
「理想的なストーリー展開で凄くいい作品だった!」
と感じられる反面、私のように1歩引いてしまうと
「何だか歪な世界に感じてしまう」
という評価になってしまうのかなっと。
そういうところが少女漫画原作らしいといえばまま納得感もありますが。
「声」に頼らず「手話」「読唇」「筆談」で2人の時間を紡いでいく描写は、
美しく愛おしさを感じましたし、聴覚障害の描写はよくできていたと思いま
すが、ラブストーリーというか主人公以外のキャラ描写に違和感を覚えたの
は残念でした。
特に物語に厚みや深みを出すために、サブキャラを魅力的に育てるってかな
り重要だよなって感じましたね。