てとてと さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
愛犬を家族に迎える重みを描いたヒューマンドラマ。厳しい作風だが愛がある良作
Eテレの飼い犬ハウツー系?全20話。
ドッグトレーナーとその弟子が主人公で、飼い犬のトラブルや、自分ら含めた飼い主の人生ドラマ的な内容。
【良い点】
単なる飼い犬のハウツー物に留まらない、ヒューマンドラマとして素晴らしい内容。
「飼い犬の問題行動は、ほぼ全て飼い主が抱える問題の投影である」的なスタンスで、
故にストーリーは問題抱えている飼い主の人生相談や、ヒューマンドラマ中心、この内容が素晴らしい。
主要キャラとゲストの大半が人生に問題抱えていたり、犬に関連する辛いトラウマあり、
いずれも人生のパートナーとしての犬との向き合い方を描きつつ、厳しくもハートフルな話が多い。
飼い犬ハウツーものとしても興味深い内容、Eテレらしい。
主人公の師匠な凄腕ドッグトレーナー丹羽はぶっきらぼうで辛辣な人物だが、犬に対する深い理解と愛情の凄味あり。
主人公の未祐は未熟者で、様々な体験を得て学んでいく流れ。
主要キャラは序盤はとっつき難いが、回を重ねると共感できる。
動物医以外は主要キャラの掘り下げも丁寧、動物医のキャラも良い。
主要ゲスト以外ではドッグトレーニング教室の生徒のおばさん達のキャラが朗らかで良い感じ。
「犬を飼う事は、一個の命を家族に迎え入れ、最期の時まで責任を持つことである」的なスタンスもあり、
全般的に厳しい作風ではあるが、犬に対する深い愛情故の厳しさだった。
丹羽の犬に対するプロとしての醒めた視点も、犬を愛する故にこそ人間の独り善がりはダメ、正しい理解が必要的な信念があった。
14話、事故死した息子の愛犬が、息子の遺影の前から一歩も動かないのを、母親が「この子は息子の傍にいたいのよ」
に対する、「犬は死を理解していない、遺影から動かないのは母親がそう望んだエゴで、それにより息子さんが愛した犬の命縮めてしまっている」
と指摘する話が特に印象的だった。
息子亡くして心を病んだ母親に対する辛辣な言葉の裏に、犬も息子も愛しているならば正しく愛してあげろ、と。
他にも主人公の元カノなど、飼い主のエゴや無理解を戒める話が多い。
いずれも飼い主側の人生に課題あり、犬との関係中心に人生見つめ直す。
「犬の寿命は人間より短い」ペットロスとも向き合わねばならぬ現実もシヒアに描いている。
16話、退職後妻に離婚された孤独な老人が、唯一残された愛犬の余命が自分より短い事を知る話が本作で一番良かった。
孤独と喪失感に圧し潰され、愛犬の寿命伸ばそうと無理をさせてしまった老人に、丹羽たちは厳しく現実を突きつけつつ、本当に愛犬を大切に思うならば、最期の時までできるだけ幸せに過ごす事、一緒にいてあげる事だと。
OP主題歌が抜群の名曲で心に刺さる、まさに16話の内容体現していた。
【悪い点】
非常に厳しい内容で、楽しい作風ではない。
ペットを無邪気に愛でる「カワイスギクライシス」とは良くも悪くも真逆。
犬を飼う事に対する辛い側面や覚悟を強調する作風なので、犬を飼うことに対するハードルかなり上げてしまっている感。
主要キャラもゲストも軒並み人生に問題抱えているためか、とっつき難いキャラが多い。
丹羽はあまり好かれないタイプのキャラだろうし、未祐も軽薄な愚か者で長い目で成長見ないと良さが分からない。
【総合評価】9~8点
犬の飼い主や、これから犬を飼うつもりの人に見てもらいたい良作。
ドラマと主題歌の質は同時期の諸作品の中でもトップクラスだった。
(葬送のフリーレンにもヒケを取ってなかったと思う)
評価は最高でもいいんだけど、楽しめるタイプではないので「とても良い」