芝生まじりの丘 さんの感想・評価
4.1
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
都合の良い恋愛アニメだが雰囲気はとても良い
写実的な描き方をした大人びたアニメ風だが、主人公がヘタレなのに女性側の好意前提の恋愛をするといういわゆる妄想アニメ感のある話である。
女側にアプローチさせまくって男側は奥手なのでいわゆる往年のラブコメにありがちな男性主人公の不快な感じが出ている。
また作中で描かれる男女の関係は古風で現代の人間からは違和感を感じる部分があった。
ただ雰囲気的な部分は素晴らしい。写実的で落ち着いた描写、灰色を基調にして派手さのない感じが心地よかった。恋愛関係が不条理なのは違和感があったものの、主人公も不器用で冴えないけれどひたむきな感じで好ましくもあった。
自分がもう学生の身ではないので、高校生主人公の恋愛などをみさせられるより見やすいというのもよかった。
また、90年-00年代の作品が好きな自分にとって好ましいと感じられるある種の共通項をこの作品も持っていた。どこか斜に構えているけれど素朴でひたむきというか。
{netabare}
キャラクタとしてはハルがかわいく印象も強いが恋愛模様としての肉感はシナコとの恋愛に置いてのほうが良く表れていた。ハルはあまりにファンタジー的存在でありすぎ、幻想というなら信じられるけれど現実とは信じ難いところがある。シナコとの恋愛の進展の現実感は他の作品には出せない魅力があった。
フリーターが頑張って正社員になって、女が別にそれに対して大っぴらに何を言うでもないけれど結局はそれで恋愛が進展する、というような進行の仕方など普通はアニメであまり描かれないようなとても打算的で現実感のある恋愛の描き方だと思った。
一方でエンディングの展開はかなり強引だったと感じた。登場人物の配置から合理的に考えるとハルは主人公と結ばれないと不幸確定だし作品的にもメインヒロイン感があるのだが、それまで恋愛や主人公の好意を丁寧に描いていたのは明らかにシナコとの恋愛だった。
互いの別れる理由の説得力はあまり感じられず、ハルへの好意が急に表れたのも説得力が感じられなかった。
他でも部分的には現実感の感じられる説得力のある描写、心を動かす描写がある一方で、作品の都合の良いように強引に筋が動くところも多く、ある程度ツッコミどころは抑えて見ることが求められる作品だった。
{/netabare}
総括して話に大味なところも多いものの、手元にあるほこりくさい現実を落ち着いたタッチで描いている点はとても良かった。
当時は「現代」を描いたものだったのかもしれないが大きく開いてアニメ化されたために、イエスタデイをうたってという言葉通り過去へのノスタルジーに導くかのような作品でもあった。