pister さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
観終わった
あれ?結構面白い?
ま、まぁ、正しい(?)楽しみ方をしてるか疑問なのであんまり参考にならないと思うけど…
進化の実と作者が同じだそうで、あっちはキッズ向け作品を得意とするスタッフが宛てられ、絵柄からも「は~いキッズ向けでござい」ってオーラを放つ作りだった。
翻ってこちら、あんまり信用できないけど制作ミルパンセで、シリアス路線を目指した作り…かと3話までは思ってました。
…が、4話で学校に族が乱入。
いや待てって、それ市川十億衛門とか稲垣隆行のノリだぞw
続いて5話ではナイフを振り回すひったくり犯、6話でビル火災、7話で教育課程でキャンプという名のサバイバル、8話で熊襲撃…主人公が災厄を招いてるんじゃないかと思うレベルの陳腐なトラブルが連発する。
これってキッズ向けだと「スポンサーが売りたい玩具でトラブルを解決していく」と、それなりに普通のことで、進化の実とは別のノリを目指したんだと思ったら…いやいや、同じだこれ!
そのうち「親戚に赤ん坊の世話を頼まれる」「先生のお見合いの話を破談させる」ってエピが来るんじゃないかとヒヤヒヤしましたよ。
ひょっとして…同じ内容のものを、いかにもキッズ系の絵柄と、劇画とまではいかないけど線多い系とでやった場合、受ける印象はどう変わるか?の実験をしてる?
で、そういう意味でどっちが面白いかを考えた場合、私は──こっちのが面白かった。
劇画漫画って絵の圧でねじ伏せてるだけで、内容は冷静に見たら結構滅茶苦茶なのが多い、小池一夫というか叶精作というか。
ギャグじゃないのにすっごい真顔で、すっごい画力で「すごいエレクチオン」って言われたら爆笑しちゃうでしょー。
最近なら渋い顔でズゴックに乗ったアスランなんかもこれに当たるかな。
この作品はそれと同じ解釈で楽しむ分には結構イケるような?
実験という意味ではもうひとつ気付いた点。
現実と異世界の2つの世界を連動なしに展開するワケだけど(蜘蛛ですが?を彷彿とさせるなぁ)、これだと「どっちのパートが面白い?」にどうしてもなってしまう。
で、個人的には異世界の方がマシで、何故だろうかと考えたら、現実世界でアレはさすがにデタラメさが目立つ。
ボロが出やすいのによくやるなぁ、とも。
裏を返せば異世界だったら多少の無茶も許容されるってことで、それこそ他の作品に向けて「お前らも気付かれにくいだけで大概デタラメだぞ」と言ってる様にも感じたり。
──と、ここまで書いといてナンだけど、あくまで進化の実と比較すれば楽しめるって部分が大きく、この作品単体で楽しめるかというと…結構難易度高くない?
方向性の例として劇画を挙げたが、本家の小池一夫に比べるとパンチが弱い。
端々から溢れるインテリジェンス(ハッタリ)や、詐欺師顔負けの尤もらしいことを言って煙に巻くテクは微塵も感じない。
真面目な話をすると、能力を手に入れる前にブサだった設定が活かせてたかというと──
「かつての自分と瓜二つな境遇のキャラに遭遇し、他人事に思えず手を差し伸べ、異世界のこともバラしたら──幻魔対戦の丈の級友の様に激怒され、否定される」みたいな展開でもない限り、この内容では中途半端を脱することはできないと思う。
もっと欲を言えば、更にそいつはいじめが原因で死亡くらいまでやっちゃっていいかな?
で、そこまでやって、ようやくスタートライン。
果たして主人公はこの出来事をどう受け止める?どう振舞う?が見所ってことで。
本作では最終回で妹を暗殺しようとしたレイガー王子に同情を寄せて救済するが、生っちょろい、所詮相手は「王子」というアド持ちだ。
また、佳織にだけチート能力であることを打ち明けるがこれも生っちょろい。
唯一「能力を手に入れる前と後、分け隔てなく好意的に接してくれた人」であり、コイツだったら悪い返事はしないだろうという打算を感じる。
「この卑怯者!」と怒ったり「ハハハ惨めだな」と蔑んだりしてこないと確証の持てる相手を選んで打ち明けたに過ぎない、ってかそういう態度取ったら最高だったのになぁ。
そもそも打ち明けるに至った流れ──異世界への門の存在を知られる──も、あくまで偶発的なモノで、主人公の方から自発的に明かしたワケではない、作者がそう仕向けただけ。
チート能力に半無自覚な件も…極端な例を挙げると、
・チート能力の出所を寡占したせいで被害を拡大させて糞野郎となった「俺だけ入れる隠しダンジョン~」
・本人はチート能力に無自覚で、周囲の方が分かってるのに誰も指摘しないことで腫れ物扱いされてるとしか見えなかった「たとえばラストダンジョン前の村の少年が~」
と、匙加減が難しい。
上手い落とし処あると思うのだが…ってか上手く落とし込めた作品が良作ってことになるのかな?
で、この作品はどうかというと…ちょっとアレかなぁ。
体育祭が顕著だったか。
対戦相手となった人は別に悪意を持って挑んだワケではない、ひょっとしたら本気でスポーツに打ち込んでたのかも知れない。
それをあんな雑にチート能力でいなして、それでいて「ボクちゃんは弱者の気持ちが分かるんです」って態度をされても薄ら寒い、お前のせいでスポーツ選手になる夢を諦めたかも知れんのだぞ?
結局「どこか悪ドイ部分」が無いと成立しないんじゃないかな、チート能力系って。
けどここら辺って多分作者は分かって書いてる。
11話でコショウを売って商人にビビられる、12話でギルド加入で水晶を割って受付にビビられる──ここら辺なんて見た瞬間「1話でやれ、そんなこと」と思ったが、逆かも?
「あやっべ、ノルマ忘れてたわ」と後から慌てて差し込んだのかも(戦闘力の高いウサギも最早定番に入れていいのかな)。
逆にテイムした動物が美少女にならなかったのが驚き、作者が意地を見せた?この先どうなるかは知らんけど。
頭悪いんじゃなくて、頭いい人が割り切って書いてる感じがするんだよねぇ…買いかぶりすぎかなぁ?
ってことで総評。
進化の実と平行して見て、その違いを見出すのが楽しいんじゃないかな。
どっちが自分に向いてるか測るのに良いサンプル。
むしろこっち見ちゃうと、あっちが「照れ隠しでギャグに逃げた」が露骨に感じて、逆に見てられなくなるなるかも知れない諸刃の剣。
そこまでして両方見たいという人自体が少数な気はするけど…。
余談
ヒロインの親父である理事長の名前が「ほうじょうつかさ」で、ヒロンが「かおり」…ん?シティハンター?
余談2
暗殺者がそれまでの行いを省みて「私の手は汚れてる」と比喩表現したところ、姫様は物理的に手が綺麗だと誉めて懐柔するってシーンがあるのだけど…。
ナウシカの「働き者の手」を知ってくれてると話が早いんだけど、あの世界で、あのタイミングで、それを言うのは「ロクに剣すら握ったことのない甘ちゃんの手」「なんだよおめー貴族様か?」という煽りになってないか?
純粋に誉め言葉として使っちゃうのは…姫様が比喩を理解してないとかじゃなく、私にはどうにも馴染まない「なろう系」の価値観の一端を見た気分。