はまなはま さんの感想・評価
3.4
物語 : 4.0
作画 : 2.0
声優 : 3.0
音楽 : 5.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
もどかしいからいいんだろうな
泉は三学期しかいないにもかかわらず、転校した学校に濃い人間関係を築いた。もちろんそれには面倒を見てくれた相馬の存在が大きいのだが、その親友は自分が片想いをしていた夏目美緒が好きな人。
泉が相馬と再開した時に見せた、ぎこちない演技は泉に残る恋心から来る嫉妬に似た感情だったのだろう。「夏目いるぞ」という相馬の言葉は、「俺のことが好きな夏目いるぞ」という男の矜持と、「お前が好きな夏目いるぞ」という親友としての優しさを含んでいた。
本作では随所にわざとらしい「違和感」を感じることができる。それは高校3年生の冬だからこそ味わう、どうしてもまとめきれない青春の罪深さでもある。
たとえば、偏差値をあえて下げて一般入試を受ける泉に対する違和感や、まっすぐに自分を好きでいてくれる後輩小宮を泉は小宮自身を評価することなくあっさり振ってしまう違和感。
また、夏目は中学生からずっと片想いだった相馬を特に未練もなく忘れてしまう。新しい消しゴムを相馬に渡して好きという感情を、新しい=泉、消しゴム=消すという、いとも簡単な行為で泉に乗り換えてしまう。
このでたらめな行為や心模様はすべて「高校3年生の冬」だから許されるし、また成立するのである。
思えば高校3年生の冬は受験や彼女との将来のことや残りわずかの学校生活のことなど、とにかく抱えることが多い。そのモザイク画のような時期だからこそ、つい好きな人に感情的になったりして傷つけてしまったり、本作の登場人物のようにもどかしい行動を取ったりしてしまう。
そう。高校3年生の冬なんてのは無茶苦茶に自分本位で、使える言葉も少ないからうまく自分の気持ちを相手に伝えることができなかった。だからこそ、大人たちは後悔をして、あの時に伝えれなかった想いを作品として世に出すことで、カタルシスを感じているのである。
just because は、「ただなんとなく」という意味だが、just because!とアテンションマークが付くことで、高校3年生の冬という日常が、いかに大切な時期なんだよと、大人にならないと分からないんだよと、本作を見た後に感じてしまった。
最終回は卒業式の日だが、泉と夏目はお互いに想いを伝えなかった。泉は卒業式に夏目ではなく小宮との時間を選択した。それは推薦で受かっている偏差値の高い大学と重ねてしまう。泉にとって一般入試で落ちた大学=夏目で、自分に片想いの小宮は合格していた偏差値の高い大学であった。つまり小宮のほうが視聴者のわれわれの好みなんだろう。そして敢えて夏目を選ぶ泉。この選択のペナルティは卒業式当日に夏目からの告白をさせないようにしたことだろう。そんな簡単に両思いを成立させると、本作の違和感は台無しになる。個人的にはできればそのまま作品を終わらせて欲しかった。最後の大学でのシーンは、現実ではなくどちらかの夢の中と思っておこう。だって高校3年生の冬の片想いが上手くいくはずがないもの。