かがみ さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
「食べる」を多重化する
「日常系」というジャンルは一方でデータベースから出力されたシュミラークルに没入する「動物の時代(東浩紀)」の申し子であり、他方で虚構を経由することで現実を多重化する「拡張現実の時代(宇野常寛)」の申し子であるとひとまずはいえる。この点「ポスト美少女ゲーム」の圏域から出発したゼロ年代の日常系においてはどちらかといえば前者の要素が重視されていたが、一つの自律的なジャンルとして確立された2010年代の日常系においてはどちらかといえば後者の要素が前面に打ち出されるようになったようにも見受けられる。そして2015年にアニメ化された本作も後者の系譜に属する作品である。人の基本的な営みである「食べる」という日常=現実を多重化し、豊かなものとして拡張していく本作は口唇欲動の満足=享楽としての「食べる」を徹底的に映像化/言語化していく作品であったといえる。