「3月のライオン(TVアニメ動画)」

総合得点
80.3
感想・評価
981
棚に入れた
4882
ランキング
464
★★★★☆ 3.9 (981)
物語
3.9
作画
3.8
声優
3.9
音楽
3.8
キャラ
3.9

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ネタバレ

青龍 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

「みんな、たった一つの小さな自分の居場所を勝ちとるために」

『ハチミツとクローバー』の羽海野チカによる原作漫画は、『ヤングアニマル』(白泉社)で連載中(既刊17巻、2期は9巻まで。原作未読)。
アニメは、1期22話(2016年)2期22話(2017年)。監督は『魔法少女まどか☆マギカ』などの新房昭之。制作は『物語シリーズ』などのシャフト。放送はNHK。
(※本レビューは1期と2期まとめて。2024.2.22誤字等修正)

あらすじは、中学生でプロ棋士となった桐山零(CV.河西健吾)は、将来を嘱望されながら、厳しい勝負の世界で壁にぶちあたっていた。17歳となり、偶然出会ったあったかい川本家の3姉妹(あかり:CV.茅野愛衣、ひなた:CV.花澤香菜、モモ:CV.久野美咲)、通っている高校でや曲者揃いの棋士たちとの交流を通じ、次第に自分の世界を広げていくという成長ストーリー。

本作は、伏線が張られた後、なぜ登場人物がそのような行動をしたのかに関する背景事情が丁寧かつ徐々に明かされて回収される作りになっているため、これ以上の予備知識はなしで観るのがオススメ。

ただ、視聴前の注意点としては、
・「ウジウジした性格の主人公は嫌い!」という人には非推奨。
・リアルないじめの描写がある。
・これまでシャフト作品を手がけ、そのイメージの醸成に関わってきた新房監督ではあるが、本作は、一般的にイメージされる典型的なシャフト作品らしさは薄め(飼い猫が傍若無人にしゃべったり、将棋の駒を説明した歌など、遊び心がある点はシャフトらしい)。
・将棋や将棋界の知識は、あった方がより楽しめるが、なくても物語を理解する上で支障はない(例えば、実際のプロ棋士も「個性の強い」人物が多いが…、登場人物の中にモデルとして思い当たる人(混ざってる人もいる)も出てくるため、「あの人かな?」という楽しみ方もできる。)。
・あと、AIが人間より強くなってしまった現在では、研究や形勢判断などにおいてAIが用いられることが多くなっているため、本作は、ちょっと昔(2000年代?)の話になってしまっている。
(ちなみに、作中では零が史上5人目の中学生プロ棋士になっているが、現実の5人目の中学生プロ棋士は、現在、大きな壁にぶち当たることなく「八冠」(主要タイトル総ナメ)という漫画より漫画の主人公になっている(笑))


【「みんな、たった1つの小さな自分の居場所を勝ちとるために」(以下、ネタバレありの感想)】
{netabare}これは、私が本作のレビューのタイトルを「自分の居場所を守るために」にしようと思いながら観ていたら、2期9話で零がいった言葉。

本作は、将棋が好きではなかった零がただ「自分の居場所を守るために」中学生でプロ棋士になったところから始まる。

もっとも、零に「みんな」といわれて、そういえば出てくる人たちは、「みんな、たった1つの小さな自分の居場所を勝ちとるために」奮闘しているなと。

あかりは、川本家という自分の居場所を守るために、早世した母に代わって他の姉妹の母親代わりを懸命につとめようとしている。

ひなたは、学校における自分の居場所を守るため、いじめに対して勇敢に立ち向かった。

相米二は、早世した愛娘が残した3姉妹がいる川本家という自分の居場所を守るため、健康に気をつかって和菓子職人を続けようとしている。

作中に登場する棋士たちも、松永7段は、自分がプロ棋士であることによって家族内で優遇されているという自分の居場所を守るため、高齢でありながらプロ棋士であることにこだわり続けた。また、柳原棋匠は、次第にリタイヤして社会の第一線から退いていく同世代の希望の星として、棋匠タイトルという自分の居場所を死守しようとした。


もちろん、新たに年間4人しかなれないプロ棋士という身分や将棋タイトルの防衛と、家庭を守ることなどを同列に語ることはできない。しかし、それぞれにとって「たった1つの小さな自分の居場所」であることに変わりはない。

身分や状況は異なれど、その人にとって「たった1つ」だからこそ誰にも譲れないし、傍目からは「小さく」見えたとしても、その人にとっては唯一無二の居場所なのだ。それは、プロ棋士でも一般人でも変わらない。

本作は、そんな「たった1つの小さな自分の居場所を勝ちとるために」奮闘する人たちの物語であり、また、それを観ることで、「たった1つの小さな自分の居場所を勝ちとるために」奮闘している人たちを応援する物語にもなっていると思った。{/netabare}


【原作漫画のアニメ化について】
本作は、コメディタッチな面もあるが内容が基本的に重いし、それを十分な尺をつかって丁寧に描いているので、原作者を尊重する新房監督の姿勢と、極端な営利主義に走らないNHKだからこそできた作品だったのかもしれないと思った(NHKも原作との関係で真っ白ではないですが…)。

投稿 : 2024/02/22
閲覧 : 472
サンキュー:

9

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