ナルユキ さんの感想・評価
2.8
物語 : 2.5
作画 : 2.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:途中で断念した
ただのハーレムアニメに興味はありません
放映当時は『こんなのが原作16巻も続いてるの?』なんて否定的な発言もあったのだけども現在は────48巻(デデーン) しかもまだ未完らしい(笑) ライトノベルでその巻数だと漫画に変換したら……連載中という共通点もあって恐らくあの『ONE PIECE』にも引けを取らない、ラノベ界での超大作と言えてしまう。
ただアニメはこの作品の1クールたった1本と恵まれていない。ドラマCDは何枚か出しているようだけども映像化から実に10年、そろそろ『はたらく魔王さま!』みたいに2期3期で書籍自体の宣伝をしてもいいのではと素人ながらに思うのだが、何か出来ない理由があるのだろうか──?
かわいい侵略者たちの思惑が交錯する中、彼女たちと主人公との壮絶な(?)戦いの火花が、たった六畳の空間に散りまくる!
【ココがすごい?:ファンタジー少女全部のせ】
この作品の特徴は何といっても様々な女の子が立て続けに六畳一間のアパート一室に現れ、各々の事情でその部屋を手中に収めようとしてくるという物語の幕開けである。それも只の女の子たちではない。
幽霊に魔法少女、下からは地底人、上からは宇宙人と、1人ひとりが別作品からクロスオーバーしに来たのかと思ってしまうくらい世界観自体が異なる設定を持っている。そんな娘たちが第1話で息をつかせる間もなく押しかけ、「ドタバタ」とはここまでやって初めて名乗れるのだと言わんばかりに暴れ回るというカオスな序幕を飾る。
こう観ると正式に部屋を借り上げた男主人公が不憫に映りそうだが、彼も彼でたった「月5000円」の家賃で部屋の主であることを主張しており、なんだかふてぶてしい。世の一人暮らしはその8~10倍も払ってようやく1部屋借りているのだと説教したいくらいだ。幽霊や宇宙人相手にもバットや御守りでしっかり応戦するたくましさもあって、視聴者はとくに誰にも感情移入することなく六畳間争奪戦を眺めることになる。
【ココがつまらない:のんべんだらりな六畳間争奪戦】
そんな1話のラストに大家がステゴロで全員を“わからせ”た後、部屋の所有権を決める際に武力行使は一切しない協定を結ばせる。次話から主人公と侵略者ヒロインはより平和的な方法で六畳間争奪戦をしなければならなくなったのだが、ここから争奪戦に関しては殆ど戦況に変化がなく退屈してしまう。
そもそも各自が1畳の高さの1cm刻み=182ptもの点数を持ち、それが0になるまでは脱落もせず、持ち点による有利不利もないという競技性皆無なルールには何も感動が生まれない。ポイント=領地でもある様だが、ポイントを半分以上失った娘が部屋の隅へ追いやられるとか、誰かが領地をはみ出して諍い{いさか - }を起こすとかそういった描写すらもない。只淡々とポイント変動を六畳間の上面図で表す一方、第2話は侵略者たちが主人公の学校の“同じクラス”にまとめて転校して彼女らなりに馴染んでいく様子を描く。
{netabare}一応、魔法少女レインボーゆりかが名前負けする程のポンコツで、トランプゲーム(ババ抜き)に負け続けて「最初の脱落者になるのはお前か……!?」と思わせてくれるのだが、主人公のダメ押しで仕掛けた作戦が逆効果に働いたり、ポイント上位の娘同士が潰し合いをしている隙に1着を取ったりして大きく挽回してしまう。いかにも負けそうな娘がそんな風に助かってしまうため、他の娘や主人公がピンチに陥ってもそんな「出来レース」の様なシナリオで救済され続け、六畳間争奪戦はいつまで経っても現状維持となるのがここで容易に想像がついてしまう。{/netabare}
【そしてココがひどい:B-クオリティ】
脚本面にダメ出しする所はあってもガワ(作画、楽曲etc.)はマトモな物が多いのがアニメ作品の優れた部分なのだが、残念ながら本作はギリギリそれに当てはまっていない。
本作の地上波放映は2014年に遡り、制作はSILVER LINK.が手がけたのだが、明らかにキャラクターデザインの質が同年の他作品より低く、00年代のラノベ原作アニメ全盛期の様な古臭さをまだこの年にまで引っ張っていたのか、という印象を受ける。
その上で「モブキャラの目を描かない」。同年制作の『結城友奈は勇者である』などは単なるクラスメイトでさえもメインキャラ達と遜色なく描かれていただけに、それらとの雲泥の差を感じさせてしまうほどの「手抜き」作画には苦言を呈しないわけにはいかないだろう。
メインヒロインのキャスティングも当時はデビューしたての新人声優で固めており、まあ台詞が棒読みに近くて演技も浮き気味だ。現在ではコンスタントに年1~3本の作品にメインキャラ役で出演できるまりあんぬこと長縄まりあも、最初の役が「のじゃロリツンデレ」少女では持ち前の声質との相性も良くなく、「これはこれで可愛い」止まりな評価にせざるを得ない。
BGM等も他の有名どころに勝る部分は無く、主題歌はOP・EDどちらも古臭い。『恋はみるくてぃ』はわざと昭和チックを取り入れてpetit milady(悠木碧&竹達彩奈)が歌い上げた本作のための楽曲らしいが、本編すら古めかしいのにそういう狙いを入れても何もノスタルジーを感じられないのである。
【総評】
6話冒頭で断念。{netabare}『文化祭の演劇部の脚本を描いてくれた娘に20pt進呈しよう!』という主人公の宣言と乗り気な一同、『大きく出たな』と感心するキリハの台詞{/netabare}が決め手となった。読者&視聴者は1畳がどのくらいあるかも知らない、調べることもしないと作者にタカをくくられた様で不快なやり取りだ。全体の約9分の1というケチ臭い賞与で何が『男には避けてはならない勝負がある』のだろうか(笑)
もしくは物語の発起である六畳間争奪戦を真面目に描くつもりがさらさら無いのだろう。争奪戦の戦況は一向に変化せず、その兆し(フラグ)が見えてもポキポキと折られるばかりである。この作品の本質は結局、只の【ハーレムラブコメ】でしかない。ヒロインの1人が美少女幽霊なので『ゆらぎ荘の幽奈さん』と類似したエピソードもある。
ラブコメであるならば、その主役となるヒロインたちを可愛く描写してほしいのだが上述した通り、放映年に対して作画などのクオリティが釣り合っていない。深刻な作画崩壊は無いものの、モブの目は描かないという手抜きをしておきながら色々とギリギリだ。同クールには『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ツヴァイ!』があり、どう考えてもそちらの方にリソースを割いたことが伺える。当時からこういう冷遇を受けた作品の2期の可能性は限りなく低い。製作陣のやる気のなさ・優先順位の低さの表れだからね
もっと先の話を観れば侵略者ヒロインの抱える各々の事情とやらが伏線となり、それらが順番に回収されつつの面白い展開が待っているらしいのだが、正直第4・5話程度のエピソードだとそれも大言壮語だなと思ってしまい、いまいち食指が動かない。そもそも48巻の原作に対して、たった1クールのアニメにその部分が入っているのかも怪しいところである。