かがみ さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
美少女ゲームを題材とした美少女ゲーム的な物語
1980年代に登場したアダルトゲームは当初、ゲームの進行と共にエロティックな画像が表示されるといった性的快楽の描写に重きが置かれていた。ところが1990年代に入るとこうした傾向に変化が生じてくる。ゲームブランドエルフから発売された『同級生』(1992)辺りから、性的快楽の描写よりも恋愛関係の描写が重視される傾向が生じ、ゲームブランドLeafより発売された『雫』(1996)以降は、シナリオとキャラクターデザインが重視される傾向が生じたと言われる。こうしてアダルトゲームは次第に美少女ゲームと呼ばれるようになっていく。こうした傾向変化の中で、プレイヤーを泣かせるような感動的なシナリオを特徴とする「泣きゲー」というジャンルが確立されていく。その起源とされているのが、ゲームブランドTacticsから発売された『ONE〜輝く季節へ〜』(1998)である。そして同作の主要スタッフによって新たに立ち上げられたゲームブランドKeyより発売された『Kanon』(1999)は「泣きゲーの金字塔」と呼ばれ、美少女ゲームの枠を超えて幅広い層の支持を獲得した。
そして2023年。本作『16bitセンセーションANOTHER LAYER』が描き出すのはそんな美少女ゲーム黎明期である。本作原作は1990年代から美少女ゲームに関わってきたクリエイターが原案を務め当時の制作現場や業界の様子などが描かれている。そしてアニメ版では新キャラクターの秋里コノハが主人公として設定され、現代から当時にタイムトラベルするというストーリーに変更された。このストーリー自体が極めて美少女ゲーム的な展開である。つまり本作は美少女ゲームを題材とした美少女ゲーム的な物語という二重構造を持っている。そういう意味で後半の超展開もまた美少女ゲーム的な作品であったといえる。