青龍 さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
安眠からの恋愛。
オジロマコトによる原作漫画は、『週刊ビッグコミックスピリッツ』(小学館)での連載が終了(全14巻。原作未読)。
アニメは、全13話だが完結はしていない(2023年)。監督は、池田ユウキ。制作は、『ゴブリンスレイヤーII』、『東京リベンジャーズ』などのライデンフィルム。
(※2023.2.22、一部修正。)
【あらすじ】
同じ高校に通う高校1年生の中見丸太(なかみ がんた:CV.佐藤元)と曲伊咲(まがり いさき:CV.田村好)は、人知れず不眠症(「インソムニア」)に悩まされていた。そんな中、ただのクラスメイトだった二人は、偶然一緒にいるとよく眠れることに気づき、以後、今は物置部屋となってしまっていた高校付属の天文台で一緒に仮眠をとり始める。しかし、その事実が学校側にばれ、ひょんなことから廃部となっていた天文部を復活させ二人で活動を再開することに…。
【安眠からの恋愛(ネタバレ有りの感想)】
学校に遅刻しそうになって急いでいるトーストくわえた女子高生が、曲がり角で異性とぶつかるのが典型的かつ古典的な「ボーイミーツガール」。
{netabare}本作は、天文台という密室で密着した状態で熟睡をしたのが二人の出会いというのが異色。
これから恋愛を始めようという二人がいきなり一緒にくっついて熟睡しちゃって大丈夫?というのが初見での正直な感想だった。
これを原作者がラッキースケベで片付けようとするなら、速攻切ってやろうと思ったので(笑)、俄然二人がどうしてそうしたのかに興味が湧く。
満員電車のように互いに全く知らない方が密着することに躊躇がなかったりするが、通常心理的な距離と物理的な距離(いわゆる「パーソナルスペース」)には相関関係がある。二人の心理的な距離が近づくとともに、二人の身体的な触れ合いも増えるのが通常の恋愛のはず…。
二人は、それぞれが不眠症を人にはいえない事情があって、共通の深刻な悩みとしてそれを抱えていたとしても、それまで同じクラスで全く知らない間柄でもない。だから、心理的なハードルをいきなり飛び越えて、触れ合って寝ることを躊躇しない程度には、眠りに飢えていたといえるのかもしれない。
ただ、そうであるからこそ、彼らの悩みの深刻さを説得的に描かないことには、この二人の出会いに現実味がなくなってしまう。
だから、私は、天文台で二人が仲睦まじく体を寄せ合って熟睡する画をまずドーンと見せられた後、その画に説得力を持たせる二人の事情がきちんと説明されているのだろうかと思いながら本作を観ていた。
その結果、彼らが安眠を得るためには、伊咲には丸太の心音を聞くこと、丸太には人の温もりを感じることが必要なのだと思えた。
そして、その眠りの不安を解消しなければ二人の関係性の発展はなくて、傍目からみればちょっと心配な近さの「安眠からの恋愛」が彼らにとっては、ありのままの等身大の恋愛なのだと思えた。
こんな恋愛の始まりもアリでしょうか。{/netabare}
【音楽】
物語と曲との繋ぎがすごく良かった。特にエンディングは、私が上で書いたような見方をしていたこともあって、余韻を感じながら飛ばすことなく全部観ちゃいました。