青龍 さんの感想・評価
4.7
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
ナンですか、この控え目にいって神作は。
久々に胸がきゅんきゅんしました。ナンですか、この控え目にいって神作は(笑)
他のレビュアーさんのおすすめで2期もあるし観るかあ程度で観始めたのですが、とにかく人物の繊細な心理描写が素晴らしく、もう降参です。すっかりやられました。
本作の原作漫画は、『週刊少年チャンピオン』で連載が開始され(現在は『チャンピオンクロス』に移籍)、思春期特有の下ネタがちょいちょい入ってくるし、名前が「のりお」なので、原作者(桜井のりお)は男性かと思いきや、女性のようで。でも、少女漫画っぽかったので、すごい納得(理由は後述。というか、この内容を少年誌でやって受ける世の中になったんだなあと…)。
あらすじは、中学2年生で正に名実ともに中二病の陰キャ男子・市川京太郎とモデルをやってる陽キャ美少女・山田杏奈とのなかなか先に進まない亀のような歩みの恋愛物話(だから、まだ純粋さの残っている中学生なんでしょうね。)。
すっかり爛れちまった大人からすれば、お互いが好きなのは明らかなんだから、お前ら何やってんだ、とっととキスしちまえよ!というような彼らの遅々として進まない恋愛模様に、まどろっこしいと感じる方もいるかもしれません(笑)。
だが、それがいい。尊い。ずっと観ていたくなる。相手のことを思いやることができるんだけど、恋愛初心者ゆえにお互いがまだ手探り状態で、自分の気持ちをどう表現したらいいのかわからないという感じが初々しくて神々しい(本作の中二病設定やちょくちょく入る下ネタは、その眩しさを直視させないための照れ隠しと思えるかどうか。)。
陰キャ男子と陽キャ女子の恋愛は、割と最近よくある題材(『ホリミヤ』、『その着せ替え人形は恋をする』など)だけど、創作だから成り立つのであって、現実には起こらない。まあ、それは言い過ぎとしても、そこにどうやってリアリティを持たせるかが勝負みたいなところがある。
京太郎は、見た目も中身も痛い奴なんですが、姉がいるせいか、すごく気が利く男子なんです(すごい教育熱心な某姉声優に育てられた某弟声優が最近結婚しましたが(笑))。
その優しさの表現が不器用なだけであって…、気の利く男性が美人を捕まえる例はよくあるし、そのポテンシャルはあると思う(気が利くという点では、一緒にすると怒られるかもしれませんが、『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』の藤宮周もそうだと思う。)。
また、普段は天然ボケなのに、そのわかりにくい優しさをしっかり感じとれる杏奈がいい。そして、普段、お菓子食いまくりなのにスタイルがよくて美人とか反則級のキャラなのに、変に自分を着飾っているところがなくて嫌味に感じない。
まず、このキャラ設定の勝利かと。
あとは、脇役の声優に、潘めぐみさん、種﨑敦美さん、岡本信彦さん、島﨑信長さんなどが配役されることで、主役と脇役の演技力に差があると感じてしまう不自然さがなく、会話がものすごく自然に入ってきて、リアリティを感じる。
主役や敵役も重要だけど、脇役も大事。一般的に女性の方が精神年齢が高いとはいえ、中学生にしては色々と察することのできる女友達が多いとは思ったけれど(笑)。
【少女漫画の男と女が逆?】
本作は、恋愛ものの少女漫画の男性主人公と女性主人公の立ち位置や役割が逆になっているように感じたので、ベースが少女漫画っぽいなと。
どういうことかというと、こんな素敵な男性が美人でもかわいくもない私なんかを好きなわけないって立ち位置は、少女漫画の一つのパターンだと思うからです。
あと、本作は、女性主人公(杏奈)の方が恋愛に積極的なんですよ。いにしえの少女漫画だと、大体、奥手な女性主人公とその心をなんとか開こうとする男性主人公という構図だと思うので、役割が逆だなあと。あ、もしかして感性が古いですか…。
さて、最近観た日本語めちゃうま系外人youtuberが、日本語の文脈依存の「ヤバイ」の多義性がヤバイという動画をあげてましたが…、本作は、京太郎の中で「ヤバイ」女性だった杏奈が、京太郎の中で「ヤバイ」存在になっていくという物語です。