クロウ さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
また観たいと思えるファンタジー
清廉潔白を絵にかいたような主人公だが、マリーという立派な僧侶に育てられたことで違和感はない。旅立の際両親の消滅を一時防いだ達成感からの結局の別れ、次話での生前の両親のやりとりのカット挿入、3英雄のマリーとブラッドは結婚を誓いながらも結ばれずアンデットとなり拾い子のウィルを育て上げることで満たされ自ら消えていくという儚さに泣けた。
主人公自体の強さは旅立時から完成されており、成長性の面ではメネルが一番だろう。初登場時は強さも中の下、その辺のごろつきと変わらない感じであったが交渉時はウィルの右腕、最終的には未来の森の王というレベルに到達する。ネメルの成長譚でもある。
不死神スタグネイトとの因縁も興味深い。スタグネイトは悪神とされているが本心からよかれと思い生前の未練を成し遂げさせるべく人間をアンデットにするという一面を持つ。実際育ての親の3英雄の200年のアンデット化は本人たちの望みをかなえるものであり、成仏に至る結果から善神とも言える。ウィルの旅立時最大の障壁として立ちふさり打倒されるもドラゴンに挑む際には「まだ早い無駄死にするだけだ逃げろ」と敵であるはずのウィルに二度も忠告を行い最終決戦ではアドバイスを聞き入れないウィルに助力する等英雄への執着は相当のものである。最初は男の姿で敵対したが実は女神でありウィルの信仰する灯の神グレイスフィールの姉に当たる。本作ではヒロインキャラがおらず無駄にイチャイチャした間延びがないのはいいのだが、ウィルの女っ気がないのをいじられるというシーンが幾度かある。ウィルの普段の聖人君主たる振る舞いに一般の女性は近づき難く感じているのではないだろうか。ギリシア神話では神と人間が結ばれる描写が多いが、英雄レベルになってしまうと一般の恋愛は難しく神とのやりとりが相対的に多くなり結ばれることが多くなるのではないか。「愛している」との告白もありスタグネイトと結ばれるのもありだと考えられるが、信仰面で相反する矛盾が生じてしまうため神官戦士であるウィルは一定の尊敬の感情は持ちつつも受け入れることはできないのだろう。このあたりも英雄の孤独を形成する一因だなと感慨深く思った。烏で話す描写もかわいく個人的には作中で一番印象に残ったキャラである。
<不要な要素>
・異世界転生要素はいらなかった、生贄とされる前に善良なアンデットによって救われた設定でいい。
・レイストフとアンナの恋愛シーンがいらない、正直両方とも活躍度はモブキャラに近く度々入る恋愛カットが不快だった。二人がそれぞれもう少し物語に絡んでいれば印象は違ったと思う。特にレイストフは金のことは差し置いて命知らずの依頼を受けるという登場時の印象がよかっただけに、作中出番がほぼなかったのはもったいなかったと思う。結局何のキャラかよくわからなかった。
<総評>
話が長めでバチバチのバトルシーンはあまりないので好みは分かれると思う。ロードオブザリングやロードス島戦記のかんじが好きな人であればはまるのではないだろうか。バグリー神殿長等良キャラを物語にあまり絡ませられていないもったいなさはあった。旅立の泣ける部分もあり個人的には一定の満足を得た作品で何年かしてもう一度見てもいいと思えるものだった。