蒼い✨️ さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
僕らはみんな生きている。
【概要】
アニメーション制作:京都アニメーション
2017年10月28日~29日にイベント「届け!京アニ&Doのいろいろ編」で、
上映された21分間の短編自主製作アニメ。
監督は、三好一郎(木上益治)。
【あらすじ】
アニメで視聴者に夢を与えようとする小さなアニメ制作会社の「KOHATAアニメスタジオ」
そこでは、ハムスターに似た小さな生き物のバジャが、アニメを作る人達に育てられています。
バジャは小さい頃にここに連れてこられてからは外に出たことがなく、会ったことないけど、
会社の敷地の小さな池に浮かぶアヒルのオモチャを友達だと思っています。
バジャは、いつもご飯をくれるアニメ監督のカナ子さんが大好きで、幸せに暮らしてました。
ある日、社員が全員帰宅して他に誰もいない夜のスタジオでバジャが窓から外を見ると、
アヒルくんが猫にかじられていてひっくり返って気絶するバジャ。
その時、会社で作ってるアニメ「ほうき星の魔女ココ」のヒロインのココのフィギュアが動き出して、
バジャを起こして不思議な魔法で手助けしてはアヒルくんを助けるよう猫にけしかけるのでした。
【感想】
天才アニメーターとして有名で京アニでは多くのアニメーターを育成する立場にいた木上益治氏が、
久しぶりに監督として指揮をとって京アニのスタッフと作った子供向けのアニメ。
縁の下の力持ち的で表立っては目立たないですが、あにまる屋で活躍してから辞めた後に、
地元に帰阪してから請われて91年に京都アニメーションに就職したコアアニメーターで、
一番上手いアニメーターの木上さんと山田監督に笑いながらの軽口でコメントされて、
石原監督ら数々の京アニのスタッフから重要回を任されて頼りにされてたのですが、
御本人は演出の仕事をしながら、監督から合格もらえるのか?オドオドしたコメントを、
ブックレットや映画パンフレットなどで残しており、実際の人柄はどうなのか?
それは断片的な情報からしかわからないですが、シャイな側面もある人物像が伺えますね。
また、自身がアニメーター育成を統括するアニメでありながらも、
「たまこまーけっと」当時に、これどうやって描いた!とキャラデザで総作画監督の、
堀口悠紀子さんにいちいち聞きに来た。(久美子の如く)もっともっと上手くなりたいし、
自分には無い他者のセンスを認めて、26歳も年下の女性アニメーターに教えを請うなど、
生涯かけて向上心を持ち続けてアニメに全てを捧げた、
努力の達人でもある本物の職人の人生に哀悼の意を捧げます。
才能とはセンスに胡座をかくことじゃなくて上手くなることへの貪欲さであり、
それはリーダーにおんぶにだっこせずに向上心を持ち続ける、
アニメーターに限らずに自分を磨き続ける京アニスタッフのひとりひとりの信念と言えます。
今も京アニの中で受け継がれている、その木上氏の理想とアニメへの哲学は、
小説家が文章でメッセージを伝えるかのように、アニメーターは言葉に換えて線で伝える職業。
その根っこみたいなものが、京アニとしてはシンプルなキャラデザな本作品でありながらも、
芝居とアクションとレイアウトで魅せる作画は彼の60年近くの人生の集大成でしょう。
当時の京アニ第1スタジオ(京都府宇治市木幡は京アニの本拠地)をモデルにしたアニメ会社で、
若き女性監督カナ子が作画スタッフとの感性の違いに振り回されてストレスを溜める姿を描いて、
アニメ監督とは管理職であり雑用である。大勢の才能を調整する潤滑油として機能しなければ、
成り立たない大変な職業である、と軽めにアニメ制作現場の現実に触れたうえで、
作画の仕事とは魔法使いが魔法を使うように線でキャラに命を吹き込む作業である。
温かい夢を叶える象徴としての魔法少女のココであり、
業界の負の感情のメタファーとしてココと敵対しているギーも存在していて、
正と負の戦いが繰り広げられるのですが、最後に正のココが勝つのがお約束で、
敗れたギーはココに見逃して貰う条件でアヒルのオモチャに生命を与えるのですが、
アニメとは動かないものに作画で生命を与える。
キャラの思想はどうであれ、ギーの魔法(アニメーターの作画の仕事)は本物であって、
バジャとアヒルのガーちゃんが友だちになる。シンプルな児童向けのアニメに、
視聴者に夢と感動を与えるアニメーターの仕事とはこうあるべし!の、
アニメが現実をもささやかながら動かしていく彼なりの理想と誇りが裏テーマとして絡められていて、
2019年の例の事件から4年経った今も木上氏の理想は、
京都アニメーションに理想の原動力として受け継がれていてこれからも続いていく。
そのクリエイターの心を感じさせる作品でありました。
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。