キャポックちゃん さんの感想・評価
2.8
物語 : 2.0
作画 : 4.0
声優 : 2.5
音楽 : 3.0
キャラ : 2.5
状態:観終わった
レースシーンが秀逸
【総合評価☆☆☆】
ブームが再燃したのか、2023年秋アニメには、『オーバーテイク!』と『MFゴースト』というカーレースアニメの佳作が2本登場した。前者が人間描写に味があるのに対して、本アニメはレースシーンの映像が秀逸だ。
原作者・しげの秀一の旧作『頭文字D』は、『MFゴースト』と同じく、スポーツカー仕様の市販車による公道でのレースを扱った作品で、1998年にアニメ化されたものの、いくつかの理由で私は嫌いだった。しかし、『MFゴースト』では、その多くが改善されており、好意的な評価に値する。以下、ポイントを列挙しよう(両作は『D』『MF』と略記。原作未読なのでアニメ限定の批評)。
(1)『D』は、道交法に違反する危険な行為を賛美するような内容だったが、『MF』になると、自然災害で無人化した地域を走行する公認レースとされた。
(2)『D』では、タイヤに負担を掛け車を傷めるドリフト走行や、意図的にタイヤを溝にはめる奇策のような、ノーマルなドライビングには好ましくないテクニックばかりが強調されており、おそらくメーカーのエンジニアは憤懣やるかたなかったろう。一方、『MF』では、空気抵抗を減らすためのスリップストリームの利用、追い越しの際の心理的な駆け引きなど、合理的な戦術に目を向けている。
(3)登場人物の会話ないしモノローグによる説明しかなく、何が起きているか捉えにくかった『D』に対して、『MF』はアナウンサーによる実況中継やAI搭載ドローンによる追跡映像、モニタールームでの解析などを加え、レースの状況が格段にわかりやすくなった。
(4)人間の描画がかなり拙かった『D』に比べると、『MF』は(うまいとは言えないものの)標準的な水準に達している。
非力なトヨタ車を使用しながら運転テクニックで外国車を凌駕するというストーリー自体は、単純で面白みに欠けるが、レース映像の迫力に魅了され、(『頭文字D』は途中で投げ出したのに)最後まで興奮して見続けることができた。特に、「ボイスカウント」(第8話)におけるカナタとヤジキタ兄妹の駆け引き---兄の車を抜き去る瞬間、スローモーションになる演出も鮮やかだ---や、「時速300キロのドッグファイト」(第9話)のブレーキング勝負などでは、つい身を乗り出してしまった。
時折挿入される軽いセクハラ映像は、ま、大目に見てあげよう。