nyaro さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
思春期のリアリティが秀逸。テーマも深く作画もいい秀作です。
相手と釣り合うために生徒会選挙というのが、ものすごく短絡的な自分の10代と重なっていきなり恥ずかしくなる展開です。リアリティがあります。告白とその後の小説の話はちょっといい話はなんとなく作りすぎの気もしますけど、弱いからこそ思いやれるというモブの持ち味が描かれます。
その後、インナースペースで浅桐美乃莉との交流もあり、なんとなく恋愛に関するストーリーで行くのかな、という前半でした。この中で彼の人間性が垣間見られます。
都市伝説の実体化の話…集団の意識が作り出した恐怖が象徴するものも面白いと思います。SNS上の悪意が実害に変わる恐ろしさともいえるでしょうし、集合的無意識がいつのまにか形になる(「虚構推理」でも描かれました)。
一番気になるのは霊幻のところに友達と来たツボミちゃんの描写がなんだったのか?ですね。結局、モブに気があるの?でも他校とかいってましたよね?ただ、表情はメス顔で完全に堕ちてる感じですけど…そんな場面ありましたっけ?ちょっとしたシーンでしたけど、他の含意は分かりやすく結構読み取れてると思うのですが、ツボミちゃんが一番気になりました。
と、思っていたら劣等感を復讐に変えるのか、力に変えるのかという話になってきます。ここでマラソン大会が活きてきますね。生徒会へのチャレンジに加え、肉体改造部の身体性も併せて表現されます。結果はあの通りですが、傍からみると成長が感じられ、周囲の人間もそれに気が付きます。
と言うように、前半のエピソードは恋愛エピソードてんこ盛りと、からかい、SNS、イジメという悪意とモブとの対比にいろんなメッセージが込められた前半で、かなり面白かったです。
で、後半です。後半は能力を復讐に使うのか利他に使うのかという話で結構大きなテーマでしたが、それだけに使い古された感じはあります。もちろんいい話なんですけど、前半の生々しさに比べてちょっとメッセージと展開が分かりすぎる気はしました。
霊幻しらずモブを利用していたことと孤独に気が付き彼にも成長がみられました。その後の彼は結構達観していました。
また、力はないけどいろいろ解決できる霊幻とテロリズムに走る鈴木統一郎。他人に与える影響の違い。この2人の対比は面白かったです。
話の展開が大きすぎて、結果的に最後の方でモブVS鈴木統一郎がちょっと茶番になってしまいました。
一方ですべてを壊したくなるテロリズム。総理大臣まで出てきましたが、これが今の劣等感にさいなまれた世代の本音でもあります。全体的にモブもそうですが、思春期の少年の気持ちを掬い取るのが非常に上手いといえるでしょう。なお、ブロッコリーは原爆のキノコ雲のアナロジーなんでしょうか?それはちょっと気になりました。
で、作画ですけど、いいです。バトルシーンが動くのもいいんですけど、日常シーンは止め絵も多いですが動くところは動くし、構図とか色彩とか非常に見やすいです。ボンズってアニメのクオリティで昔批判されていた気がするのですが、いいじゃないですか。私はかなり気に入りました。
そういえば「メタリックルージュ」ってボンズがやるんですよね?楽しみです。
ということで、ストーリーはつづきもので完結してませんが、大きな部分での区切りはつきました。前半の出来の良さと後半を比較するとうーん、という部分もありますが、劣等感・資本主義・イジメ・努力・大人などのメッセージが明確にあるのでレベルが高いです。なにより普通に面白いし。一方でキャラの作り方が上手いので…話を4,キャラを5にします。作画はTVとしては非常にレベルが高いと思います。5で。音楽と声優は4にしておきます。
ツボミちゃんが気になるので、Ⅲもみます。