えりりん908 さんの感想・評価
3.7
物語 : 2.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
二兎を追わないで欲しかった!
二兎を追わないで欲しかった!
これに尽きる、凄く残念な作品でした。
お話は、高校生F4レーサー=ハルカ君が初優勝を遂げるまでの、
スポーツ作品として、手堅く綺麗にまとまっています。
自動車レースが好きな方なら、
見ておいて損は無い、と思えるサーキットの走行シーン、
凄く良かったです。
とくに、空気抵抗と戦いながら走る、
超軽量のフォーミュラカーの描写。
シフトチェンジをするシーンで、
レーサー目線でハンドル越しに見える
インパネやサーキット、ライバル車。
そのとき細かく振動する車体の様子を
レーサーのアップで微振動する描き方!
まるで車載モニターみたいで、臨場感マックスでした。
この主人公の、父の死を巡る葛藤と、
それを乗り越える=オーバーテイクする、
そんな物語にフォーカスしてくれたら、
すっきりと綺麗にまとまっっていたのに、
なんて恨みごと、言いたくなっちゃいますね。
何故かというと、
この作品にはもうひとりの主人公である、
商業写真家=コウヤ氏が、
あの大震災に遭遇してしまって、
家族付き合いしていた家の幼い女の子を、
居場所が遠すぎて物理的に救助不可能な中、
たまたま持っていたカメラで写真に撮ってしまった。
その時の、女の子の絶望の視線をファインダー越しに見てしまった、
そのつらさ、苦しさを乗り越えられるか?というもうひとつの、
オーバーテイクが、ふたつ目のテーマになっているんです。
こっちも大事。
すごくすごく大事。
だからこそ、ふたつの独立した物語を、
ひとつに繋げないで欲しかった。
そう思います。
コウヤは、もうとっくに世間のバッシングなどはオーバーテイクしています。
でも、写真におさめてしまった
仲の良かった子を望遠レンズの前で喪ってしまった傷は乗り越えられず、
人物写真を撮れない写真家に成り果ててしまっています。
ここを乗り越えるために、若いレーサー=ハルカにフォーカスしたというの、
理屈ではわかります。
それに、今どき、東日本大震災だけを全面に押し出したアニメ企画じゃあ、
スポンサー受け悪くて、企画通せないのは、想像に難くないです。
でもだからこそ、安易にスポーツとドッキングなんて、
して欲しくなかった、というのが正直な気持ちです。
ましてや、ライバルチームの選手間の人間模様とか、
ハルカ君のチームのメカ君とか、
メカ君と同じ高校に通うライバルチームでレースクイーンやってる女の子とか、
サブキャラ盛りすぎて収集できなくなっているように見えます。
こんな状態で、ふたつの明確なテーマをワンクールに押し込んでしまっては、
尺も足りなくなるし、無理がありますよ、それは。
で、実際には、
コウヤさんはハルカの奮闘に魅入られて自分のトラウマを乗り越え、
ハルカ君はライバルチームの元々の1stドライバーをオーバーテイクして、
ちょっとハッピーエンドな感じで、エンディング。
楽しく視聴することはできました。
できましたけれど、
観終わったあとに、そんな不満が残ってしまう。
そういう風に感じた作品でした。