「ウマ娘 プリティーダービー Season 3(TVアニメ動画)」

総合得点
69.3
感想・評価
202
棚に入れた
563
ランキング
1850
★★★★☆ 3.5 (202)
物語
3.1
作画
3.8
声優
3.7
音楽
3.6
キャラ
3.5

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ネタバレ

Progress さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0
物語 : 2.0 作画 : 2.5 声優 : 3.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

感想

まず3期から見る方は稀、1と2期の評価ありきで見ている方が多いんじゃないかなと思います。
私もアニメから入った作品のアニメ二期はどうしても食指が動かないこともありますので(最近ですと防振りとか)、1期から3期までアニメだけで見続ける人は相当世界観が好きなんだろうと思います。
この作品の場合、作品世界を舞台としたソーシャルゲーム(リリースはアニメ1期より後)がありますのでアニメ二期の高評価も相まって、ゲームリリース付近のアニメ2期から入っている方も多いかと推察します。
私がこの作品に最初に感じたのは、物語のタメの少なさです。
1話で主人公が最初の挫折をするのですが、なぜ1話なのか。
2話で挫折で落ち込み考えるキタサンブラックという回になるのですが、
軽めの陰鬱な展開に感じました。
大体最近のアニメが1話切りとか3話切りとか、アニメ視聴者の中でされる中、2話で低めなテンションを持ってくること自体、ゲームや2期を経験せずに3期から入ってくるような視聴者を想定していない、あるいは足切りする覚悟のようなものを感じました。
そう考えると現状のファンの中で十分な反響を得られるという自信も伺えて、これがウマ娘ファン層という内向きに作られていることが見て取れます。
タメの少なさ、という話題に戻しますが、視聴者がキタサンブラックの挫折に共感できるまでキタサンブラックの物語に馴染む前に、ダウナーな気持ちを入れてしまった。この点は一般層が離れるに十分な理由になり、面白さにも直結します。あの時キタサンはこう思っていたから、この気持ちになるよねという、共感性を養うタメが存在しないのです。

ファン向けに作られているということで言えば、許可の取れたウマ娘の名前などゴルシの引退式で言わせて、そこを盛り上がりのポイントとするのも、それらのキャラを匂わせた一般人を登場させるのも、一般視聴者からすれば謎のシーンで、「放送された当時はキャラが実装されていなかったんだよ」と後々に解説されるのでしょうが、こういったゲームと連動した情報がアニメを見る上で必要な予備知識である以上、ファン向けの内向き作品であるように感じました。

許可の取れていない馬のウマ娘について、それをモブキャラのデザインで登場させている点について、制約ゆえか、創造性が失われたのか、疑問に感じました。最終回のライブに出てきたモブにせよ、宝塚記念で勝ったリバーライトにせよ、モブキャラっぽいキャラで登場させました。
これは、ウマ娘のゲーム世界において許可の取れていないウマ娘等はモブウマ娘として登場する、その設定故なのですが、これはアニメ1期と大きな矛盾があります。アニメ1期ではサンバイザーというオリジナルウマ娘、モンジューという凱旋門賞を勝利してJCに乗り込んできた馬の馬名が使えないために生まれたブロワイエというウマ娘。
アニメ1期で出来た、馬名を使えないキャラをオリジナルで代替のモブではないデザインのウマ娘を出すということを、3期ではできなくなってしまっている。これが馬名を許可してもらうために配慮したための制約であるのか、単にゲーム設定に固執して、アニメ1期の創造性やこだわりを失った結果なのか、私にはわかりませんが、その点においてアニメ1期の方が創造性があったように感じました。

最終回について、今まで関わってきたキャラクターが全員出走してレースという事ではなく、あくまで史実を優先し、キタサンブラックの引退レースまでを描きました。この点について、1話から12話まで描いてきたドゥラメンテやサトノダイヤモンドとの関わりが、共に走るライバルから、それぞれにとってのキタサンブラックという形に変容していきます。
史実を優先している以上、仕方のないことではありますが、2期最終回のように最後に全員で夢のレースのような描写もあります。この、どうにも史実を優先しているがために、創造性に欠けているように見えていました。せっかくそれぞれのキタサンへの思いを醸成してきたのに、引退というテーマから1ミリも外れないようにしている窮屈さを感じます。

創造性という部分において、ミームが生まれなかったようにも思えます。
1期であれば、スペシャルウイークは食べ過ぎでニンジンが大好き、ニンジンハンバーグなどの初期の世界観を構築したミームが各所にちりばめられており、二期でもトウカイテイオーの好きなもの蜂蜜入り飲み物のはちみ―、その鼻歌など、作品世界を彩る、または話題に出来る要素がありました。
この3期はどうでしょう。キタサンブラックの好物は何ですか?ノンアルコーールのビール?これが作品世界において定着するまでのミームになりましたか?3期のキャラの好物や面白い特徴など、それらを作品世界のミーム化するまで仕上げられていないと私は感じました。
それが、尺という制約によるものなのか、他の何かはわかりませんが、尺であるならば、何度もキタサンブラックの挫折と成長を描く必要はなかったのではないでしょうか。

主人公のキタサンブラックは皐月や有馬など、作品で負けた後に落ち込む展開が恐らく3回ありました。(天皇賞春だけ負けちゃった…で済ましているのは何らかの意図があったような)
視聴者はそのたびにキタサンのダウナーなテンションに付き合わされることになるわけですが、一般層目線から言えば、何度もテンション乱高下して、話にまとまりがないように見えます。ですがこの作品はファン向けの作品なので一般層はほぼ壊滅でしょう。ファン目線で言えば、史実だからしょうがない、という感想がポジティブですが、これが本当に見たかったウマ娘3期ですか?と私は思います。
アニメ1期の天真爛漫で明るいスペシャルウイーク、アニメ2期でどんな困難も明るく気丈に振舞ってきたトウカイテイオー。
3期の主人公はお祭りキタちゃんですよね?この主人公が笑顔で、人に見ている人にポジティブな気持ちを与えられていたでしょうか?もちろんアニメの主人公がキタサンブラックであることに疑問はないです。要は、キャラ付けの問題です。ゲーム内のシナリオでは、皆を引っ張る北の太陽、と常に周りを照らして引っ張れる存在になったというポジティブなお話でしたが、最終的にキタサンがどうなったかではなく、引退を描くというテーマによって、キタサンのポジティブな性格的特徴が発揮されない作品になってしまったように感じます。あるいはウマ娘アニメに存在した創造性が、テーマの提示やゲームとの連動による調整、そういった物に忙殺された印象さえも…。

はい、そんな感じの感想でしたね。正直、スポコンにありがちな、誰かと本気でぶつかり合うというシーンが、11話?のシュヴァルグランとのJCで、シュヴァルの熱い気持ちをキタサンの冷え切った心に直に言葉でぶつけるものだと思っていたんですが、そんなこともなくて、正直そこで私は苦しさの頂点が来ましたね。チームスピカの面々も、後方で見守り、親友であるダイヤですら、引退を一人で決めたキタサンとぶつかることもなかった。最終回で自分で観客の応援に気付いてキタサンが一人じゃないと思える救われた展開になりましたが、なんかあまりにも、キタサンが一人で頑張っている、そんな心が凍える印象を受けたアニメでした。周りが助ける、ぶつかって気づかせる、そんなあったかい展開があっても、良かったんじゃないかな…

投稿 : 2023/12/29
閲覧 : 93
サンキュー:

15

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