「屋根裏のラジャー(アニメ映画)」

総合得点
73.2
感想・評価
11
棚に入れた
36
ランキング
1042
★★★★☆ 4.0 (11)
物語
3.9
作画
4.6
声優
3.7
音楽
4.1
キャラ
4.0

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ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6
物語 : 3.0 作画 : 4.5 声優 : 3.0 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

【鑑賞失敗談】世界観やルールのリアリティに気を取られて折り合えず……

幼少期によく子供が空想するイマジナリーフレンドを主人公に据えた、現実とファンタジーが交錯する世界を舞台にした英国の児童文学『ぼくが消えないうちに』(英題『The Imaginary』、未読)の劇場アニメ化作品。

【物語 3.0点】
子供たちが想像上の産物であるイマジナリが、大人になって忘れ去られてからも、
実はリアル世界にて大切な役割を果たしていた。
そのことをちょっとだけ思い出してホロリと来たりする。

企画自体は素晴らしい作品。
が、映画脚本として現実感のあるストーリーに仕立てていく際のセンスが私とは合わなかったのか。
私にとっては終始折り合いに苦しんだ108分間でした。

特にイマジナリ世界の独自ルールを受け入れるのに戸惑って、シナリオへの集中力を欠いたのが私の敗因。
イマジナリは空想を卒業した大人たちなどには見えない。
イマジナリは現実世界の扉の開閉などの物理法則には干渉し得ない。
辺りまでなら想定の範囲内でしたが。
{netabare} 忘れられたイマジナリは図書館から出てから1日以内に戻らないと消滅する。
他の子供たちに1日限定で参加したイマジナリも想像主からフレンドと認められると再びイマジナリとして存続できる。
ラスボス役・ミスター・バンティングと黒髪少女のイマジナリは想像の力で超常現象を引き起こすが、その発動条件が曖昧。
指銃で狙撃するチートを見せたかと思えば、配下の黒髪少女がターゲットにしたイマジナリを捕らえる手口は意外と単純な肉弾格闘戦だったり。{/netabare}

どんどん納得し切れないルールが積み重なるのに対応している内に話が進んで、
あぁ、そういう仕組みで解決するのね。ルールよく知らんけどwと呆気に取られている内にラストを迎えた感じ。

スタジオポノック作品はリアリティ気にし過ぎるとダメなのは分かっていたのですが、
映像と音の臨場感に抗えず、考察しがちな深夜アニメ脳で見て失敗した感じ。


よってこれから挑む方は、リアリティより空想重視の児童文学脳や絵本脳で鑑賞する方が得策だと思います。
子供とイマジナリの空想ワールドで尺が費やされる際も、
伏線なさげな意味のないシーンだと苛立たずに一緒に無邪気に戯れる感覚で。

そうすれば中盤アマンダが主人公イマジナリ・ラジャーを想像したエピソード。
ラジャーとアマンダが誓った「消えないこと、守ること、せったいに泣かないこと」の由来。
といったシーンにも素直に心が揺さぶられ、本年屈指の感動まであると思います。

私も、もう一回観れば、マシになると思うのですが、
今回は申し訳ないですが基準点が精一杯です。


【作画 4.5点】
スタジオポノック6年ぶりの長編アニメ映画2作目。

レベルファイブの3DCGゲーム画面みたいな絵面で勘違いしそうになりますが、
本作は2D手描きメインのアニメーション作品。

立体的に見えるのは、フランスの制作会社の最新技術導入による物。
すなわち作画に陰影を与える処理を仕上げ・撮影の過程で行うことで、
作画の際に影やハイライトを入れる工数を削減し、
作画班はイマジナリ集団のワラワラ感や、
背景に作画を入れて、想像で世界が切り替わっていくダイナミックな映像表現に注力することが可能に。

またこの技術により2D手描き作画のキャラでも3DCGのような実在感を醸し出すことで、
イマジナリが確かに存在したという主張も補強。

ただこの実在感は諸刃。
イマジナリが見えてる人間同士の争いは、見えてない人間からすると、
見えない敵と戦うシュールな光景に見えるのですが、
リアルで立体的な映像がシュールさを一層際立たせてしまった感があり、
私がリアリティに引きずられる一因に。

何より手描きなのに手作り感が損なわれた印象を与えてしまっては、
同スタジオの長所をかき消しかねません。

作画自体はハイクオリティですが、
この制作手法のメリットとデメリットの整理、用法用量については課題山積だと感じました。


【キャラ 3.5点】
主人公のイマジナリ・ラジャーを生み出した少女・アマンダ。
映画化に辺り、母・リジーら家族とのエピソードも補強、掘り下げられシナリオの軸に。

一方でヒールとして物語を動かすミスター・バンティングについては謎を残したまま終わる。
{netabare} 大人でありながら“新鮮な”イマジナリを喰らい続けることで、想像する力を保持、増大し続け、現実と想像の世界で生き永らえる。
彼が従える亡霊の如き黒髪のイマジナリ少女は、バンティングの終わらない悪夢に終止符を打つことを願っていて?
などと考察を巡らせることは可能ですが……。
イマジナリを喰いそうで中々喰わない様が低性能なカービィって感じで生々しかったですw{/netabare}


あとは冷蔵庫は食材だけじゃない大切な何かを保存する偉大な存在だということです。


【声優 3.0点】
ナチュラルな演技重視の俳優・タレント中心の布陣。
主人公・ラジャー役に声優初挑戦で、声変わり寸前の子役・寺田 心さんを起用する辺り“天然物”へのこだわりが伺えます。
寺田さんの相手役・アマンダ役の女優・鈴木 梨央さんはアニメ主演歴もあり、掛け合いは比較的安定。

その他、母・リジー役の安藤 サクラさんにせよ、
バンティング役のイッセー尾形さんにせよ、素材の選択自体は良好。
ラジャーを図書館に誘う猫・ジンザン役の山田 孝之さんもジブリの猫出演歴もあって、良い渋みが出ていました。

が、この辺りの中堅、ベテランキャストの演技で特に、
今の、このアフレコでOK出して本当に良かったの?という場面が、しかも割りと重要なカットで多数あり、
折り合いを欠いていた私をさらにつんのめらせる要因に。

“天然物”の演技にこだわって俳優・タレント勢で固めるのは別に良いのですが、
それならせめて普段“加工品”の声が張れるアニメ声優の演技に慣れている層でも、
許容でき、素材の良さが分かるレベルになるまで、
名前に遠慮せずディレクションを詰めて頂きたいですね。
このキャスト陣なら、それができたと私は思いますし、やれている作品はやっています。

そんな中、ささくれた私の癒やしとなったのは、ピンクのカバのイマジナリ・小雪ちゃん役の声優・かぬか 光明さんの安定したおとぼけボイス。


【音楽 4.0点】
劇伴担当は玉井 健二氏。
優しいピアノサウンドと雄大なオーケストラは特に空想世界で威力を発揮。
ロックなどもアレンジして子供たちの多彩な想像に対応。
ただ現実世界の場面でのオーケストラ起用などは大仰に感じることも。
これはBGM自体より、私と音響監督とのセンスの食い違いでしょうか。

ED主題歌にはグラミー賞デュオのア・グレイト・ビッグ・ワールドと、
エミー賞シンガーソングライターのレイチェル・プラッテンさんに
コラボソング「Nothig's Impossible」をオファーする大勝負。
壮大なバラードで本年でも上位に入る余韻の良さは得られる。


生活音などのSEにも臨場感があり音響は上々。
ですが再三述べている通り、今回の私には足を取られたリアリティの泥濘(ぬかるみ)を深める諸刃に。


【感想】
まとめ切れてないグダグダな鑑賞失敗談を書き連ねてしまいましたがw
今回、私が投稿を急いだのは、本作が歴史的な大コケ映画になりそうな気配だと言うこと。
350館超えの大規模公開だから当分興行するだろうと高をくくっていると、
年始にはほとんど上映終了で見逃すという惨事になりかねないので、
劇場鑑賞意志のある方は早めに足を運びましょう。

以上、公開初週にして早くも私含めて観客2人だった現場からお送り致しました。

投稿 : 2023/12/19
閲覧 : 423
サンキュー:

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