Witch さんの感想・評価
3.7
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
「普通の青春群像劇」ではなく「SF青春群像劇」として捉えるべき作品
【レビューNo.99】(初回登録:2023/12/17)
コミック原作で2016年作品。全13話。(最終回のみ40分)
何故か突然本作のOP曲が無性に聴きたくなったのだが、折角だから見返して
レビューのネタにでもしようかと。
リアタイ時は漠然と視聴してたので、あまり思い入れもなかったのですが、見
返してみると「意外に悪くない作品じゃねー?!」
(ストーリー)
長野県松本市に住む女子高校生・高宮菜穂は2年生になった4月の始業式の日、
差出人が自分の名前になっている手紙を受け取る。そしてその手紙に書かれて
いた通り、成瀬翔が東京から転校してきたのだった。
更にその手紙には
・26歳になった10年後の自分が後悔をしていて、その後悔を16歳の自分には味
わってほしくないこと。
・菜穂に今後起きること、それに対して菜穂にしてほしい行動。
・翔を好きになること、翔が17歳の冬に事故で亡くなること、その事故は防ぐ
ことが出来たこと。
が書かれていたのだった。
手紙に書かれていた通り、菜穂は翔を好きになる。
――10年後の菜穂が手紙を書いた目的は、翔を事故から救うこと――
手紙の意図を理解した菜穂は、「翔がいない未来」を変えるため手紙に書かれ
ているように行動しようと努力する。
そしてその行動は菜穂の仲間達、須和弘人らにも広がっていき・・・
(評 価)
・「普通の青春群像劇」として観てると不満が残る?!
登場人物ですが(公式サイトより)
●高宮菜穂
自分よりも他人の幸せを優先してしまうような控えめな性格。
転校してきた成瀬翔に恋をする。
●須和弘人
菜穂のことを一途に思っている。
一方、菜穂と翔の恋を応援している。
●村坂あずさ
グループの仲でのムードメーカー的存在
●茅野貴子
サバサバした性格で一見クールに見えるが、仲間思いの姉御肌
●萩田朔
つかみどころのない性格で、時に場を和ます。
お笑いネタが好き。(あとSFにも詳しい)
●成瀬翔
東京から転校してくる。
あることが原因で心に闇を抱えている。
~以下重要ネタバレ~
{netabare}・心を病んだ母親がいて翔に依存している
→ 始業式の日に自殺
・母親の自殺の原因は、5人に誘われて一緒に病院にいく予定をキャン
セルしたことにあると、ずっと自責の念を抱いている
→ 死因は事故とされていたが本当は自殺{/netabare}
{netabare}物語の冒頭は10年後の(翔がいない)5人のシーンから始まるのですが、以
降主戦場は高校時代になるために、
・(翔を救うために行動している以外)恋に友情にと青春を謳歌している
よくある群像劇にみえてしまう。
(翔を救うための行動も、普通の友情モノにみえてしまう)
・未来の自分から手紙が来た以外はSF感が薄い。
(漠然と観ていると(後述する)「パラレルワールド」が頭から抜け陥ち
る。またSFの種明かし的な話は終盤になっている。
(前半に匂わせ的なものはあるが))
って感じで、前半の印象で「(少し変わっているが)普通の青春群像劇」と
いう捉え方をしてしまいやすいんですよね。
そちらに重きを置くと、どうしても
・他の名作青春群像劇作品と比較すると物足りない
・須和の「めっちゃいい人キャラ」以外はキャラ描写に不満
(特に菜穂と翔の主人公コンビは)
って評価になりやすいのかなっと。
ここの評価でも、特に翔については「弱々しいメンヘラキャラ」でそちらを
クローズアップされてる感じですし。{/netabare}
・実は「SF青春群像劇」→パラレルワールドの世界
・本作の本当の出発点は
{netabare}「10年前の後悔から、『未来を変えて欲しい』と過去の自分に手紙を出し
て思いを託す」
ところになります。でもこの時点で「翔のいない未来」は確定事項になっ
ている訳ですから、今更この世界の現実は変えようがない訳で・・・
・では、この思いは誰に託されるのか?
→ この手紙を受け取ったことで新たに生まれる「パラレルワールド」の
菜穂達
ってことになります。
・これをしっかり認識することが重要で、そのことにより物語の主題は
・恋に友情に泣き笑う青春群像劇
→ 思いを託された別世界の菜穂達は「未来を変えることができるのか」
にシフトすることになります。それにより作品の見え方が変わってくるっ
て話ですね。
(感覚的には、2つの世界を俯瞰して1歩引いた視点からみるみたいな){/netabare}
・私も初見ではこの辺りを曖昧にしてたので、あまりこの作品の評価は高く
なかったのですが、見返してこの辺りが整理されると、
「アレ? 意外に悪くない作品じゃねー?!」
と評価を改めた次第ですね。
・女性作者の少女漫画らしいなと感じた点
当時は漠然と観てたので気づかなかったのですが、見返してみると表題的な
点が目に付いたかなっと。
・翔のキャラ描写
~以下重要ネタバレ~
{netabare}自殺を選ぶ訳ですから、それなりに強い理由やそれらしいキャラ付が必要
な訳ですが
「表の気丈さと裏腹な『脆さ』→『儚さを纏う美少年』」
的な描写はやはりそれっぽいのかなあっと。{/netabare}
・上田莉緒というリアリティ
・菜穂たちの先輩で学園のマドンナ的存在。
・翔に告白、暫く付き合うが週数間でフラれる。
(翔が本当に好きな人に気付いた)
・その後菜穂を敵視し何かと絡んでくる。
何というか「嫌な女」の描き方にリアリティがあり、男性作者じゃこんな
描写できないよなってw
・過去へ手紙を送る仕組み
~以下重要ネタバレ~
{netabare}・手紙を瓶に詰めて海に流せばブラックホール的な何かでタイムスリップ
するやろ →これでOK的なw
この辺も男性作者なら、なんかもう少し屁理屈付けるんだろうなっと。
(物語の重要ポイントはそこじゃないし、この原作を読んでるメイン層の
ことを考えると、個人的にはこれでOKかなとは思いますが、リアタイ
で観てた時は、「最大の謎」の種明かしがあまりにもガバガバだったの
で、ズッコケた記憶がwww){/netabare}
キャラデザはたしかに少女漫画原作って感じですね。作画は全体的に綺麗なん
ですが、たまに崩壊してるところがあったかな。なまじ全体的に綺麗な分、崩
壊があると必要以上に目立つというか。
「少女漫画原作」という観点からみると、押さえるべき点は押さえているとい
う印象なので、メイン層に支持され人気作となり、アニメ化まで至った理由は
まま理解できるかなっと。
それゆえに「少女漫画感」が色濃くに出ている作品ではあるので、個人的には
少し合わないところもあったように感じたかな。
そして上述の続きじゃないですが、「SF要素」をあまりアピールしていない
点も「女性作家の少女漫画っぽい」かなっと。それゆえに原作者の本当にみせ
たいものがきちんと伝わらず、損してる部分もあるように感じました。
今回見直してみて新たに気づいたところもあり、そこを踏まえると作品の見え
方も変わってくるかと思いますので、参考になれば幸いです。
OP「光の破片/ 高橋優」
・上述の衝動は今だに謎ですが(笑)、今だに聴きたくなる位の良曲だなっと。
ED「未来/ コブクロ」
・EDにコブクロとか何気に力入ってるなと。この曲コブクロのブランド力で
売れてたというイメージあるので、寧ろ実はアニソンだとあまり認知されて
ないんじゃないかなw
(追 記)
この後、TVアニメを須和の視点から再構成し、作者描き下ろしの後日談を加え
た劇場版「orange -未来-」が公開されてたようで、ついでに視聴したのですが、
そこには「翔がいる未来」が描かれています。
{netabare}最後は「夢オチ」という締めが、作品を安売りせず個人的には評価できるかな。{/netabare}