てぶくろ さんの感想・評価
3.3
物語 : 3.0
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
やりたいことがちゃんと表現されている。「優等生」な作品。
第10話まで視聴しました。
{netabare}この作品を見ていると、私の内なるDr.STONEの氷月さんが、「ちゃんとしてますねぇ」と言ってくれます。
最近のオリジナルアニメ、少なくとも今年の中では一番ちゃんとしているのではないでしょうか。
私が何をもってちゃんとしているかどうかを判断しているかと言うと、この作品はテーマや題材、作品の立ち位置、作風などオリジナルアニメに求められる要点がきっちりと押さえられているからです。
最初にF4というマイナーな世界を素人の主人公を通して丁寧に説明し、専門用語を交えつつもレースの描写 をしっかりやって引き込んでくれています。
フォトグラファーの主人公は説明を聞くだけのお飾りではなく、しっかりとバックボーンがある血の通ったキャラであり、話を積極的に動かしています。
もう一人の主人公である悠も最初は「応援なんかいらない」と放言する尖りをみせますが、それを裏打ちする実力とひたむきさがキチンと描かれています。
そして、彼もまた「何故このスポーツをしているのか」「何故、勝ちたいのか」につながるバックボーンがしっかりとあります。
これらがあるおかげで、彼の活躍そして勝利を応援したくなる話の流れに自然となっています。
悠と孝哉の "腐" な感じもあくまで作品をまとめるエッセンスとして機能しています。
サブキャラやライバルキャラたちも各々の立場で感じること、心情の変化があり、この作品のテーマの一つである「それぞれが抱えるそれぞれの思い」というのを体現しています。
放映時、御殿場市のCMが流れていることから舞台となっているところにしっかりスポンサーについてもらっていることがわかります。
富士スピードウェイという実存する施設を出したり、PR回があったりと商業的な面も抜け目ありません。
この作品を見ていると個人的に思い出深い「群青のファンファーレ」という作品に足りなかったものが全て揃っているなと感じますし、改めてあの作品のヤバさを再確認したりもします。
ただ若干思うところがあるとすれば、孝哉の東日本大震災にまつわるエピソードです。
制作側的にこれは大事にしたいこと、なんとなくや取り敢えずでつけた設定ではないことはわかります。
ですが、正直このエピソードが出たとき、「あ、これを持ち出してくるんだ」とは思いましたし、「結構、強引に繋げてきたな」と思ったのも否めません。
まぁそんなどうしてもやりたい事っていうなら別にいいけど…という感情のままケリがついてしまった印象です。
演出や話が悪いってことは決してありませんでしたけど、別々で食った方が美味いなっていう感想です。
第4話でこの震災にまつわるエピソードが出て、作品のシリアスラインがぐっと上がった次の話があのマラソン回だったこともちょっと関係してるかもですね。
あれはあれでドライバー3人が会話する場面だったりして意味はあるんですが、小牧のおじさんが実況を担当するとかはちょっとやり過ぎだったよなぁ。
この辺りが、この作品を視聴したときの感想が面白い!よりも、ちゃんとしている に留まっている原因な気がしますね。
どういうエンディングを迎えるのか期待です。
{/netabare}
最終話視聴しました。
{netabare}収まるところに収まったハッピーエンドで悪くない最終回だったと思います。
良い最終回だった!と強く断言できないのは、孝哉の話が終わってからの第10話以降がもうほとんど消化試合だったように感じたからです。
主人公陣営側でやりたいことは第9話までで終わってしまい、後は最終話で優勝するまでの時間稼ぎをしているそんな印象でした。
現に、第10話以降に小牧モータースがしていたことと言うと、モータースポーツはこんなに金がかかるんだぜ という豆知識の披露と、やっぱ金が無いから勝てねぇやという物語序盤でやっていたことの焼き増しです。
その後、商店街が金を出してくれてそのおかげで優勝できましたとさ、かぁ…。
決して都合がいい展開とかにはなっていないんですが、「鬼戦車」さんも書いておられますが、結局 金次第なんだなぁという感想に落ち着いてしまいます。
この商店街をスポンサーにつけるくだりについては、孝哉が今一度 奔走する、くらいのことはしてもいいのになと思いました。
メンテナンス時、ペダル踏むだけのことで役に立ったと喜んでる場合じゃねぇでしょうよ。
ていうか、終盤の孝哉は何故にこんなにも受け身なんでしょうか?
最終話冒頭、車内で はしゃいでいたかと思うとレース前に物憂げな顔で突然いなくなり、悠に探しにきてもらって励ましてもらったり、にも関わらずいざレースが始るとビビっていたりしています。
さえちゃんから発破をかけられて立ち直ったわけですが、やはり孝哉のうじうじは些かしつこかったように思います。
物語的にも、とっくに孝哉のターンは終わってんだよなぁという気持ちが否めません。
この10話以降の話、Belsorriso側に比重を置くという狙いはわかりますし、春永と徳丸の深堀りなされていて良かったのですが、最後のレースは徳丸は周回遅れの接触に遭い、まだまだ本調子ではない春永は思い出作りがしたい奴に負けてしまったのだと思うと、なかなかやるせないですね笑
最後にまとめると、この作品は設定に対して真摯であり、話の作りや作画に関してもちゃんとしている作品であるという感想は変わりません。
ただ、素材が良かっただけに もっと面白く出来たんじゃないか?という気持ちがあるのも本当です。
それでも、題材もテーマも中々楽しめる良いオリジナル作品でした。
{/netabare}