「すずめの戸締まり(アニメ映画)」

総合得点
77.8
感想・評価
275
棚に入れた
1010
ランキング
594
★★★★☆ 4.0 (275)
物語
4.0
作画
4.5
声優
3.8
音楽
4.1
キャラ
3.8

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ネタバレ

oneandonly さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 3.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

大災難を乗り越える意志を感じる作品

世界観:7
ストーリー:6
リアリティ:7
キャラクター:6
情感:8
合計:34

<あらすじ>
九州の静かな町で暮らす17歳の少女・鈴芽(すずめ)は、
「扉を探してるんだ」という旅の青年・草太に出会う。
彼の後を追って迷い込んだ山中の廃墟で見つけたのは、
ぽつんとたたずむ古ぼけた扉。
なにかに引き寄せられるように、すずめは扉に手を伸ばすが…。
(公式サイトより)

前作の『天気の子』をTVで見て、ビルの屋上のお社、ヒロインの極端な設定、警察に追われる主人公(銃を持って戦う)、世界がどうなってもヒロインを選ぶ等といった派手なセカイ系の物語と相性が悪く、そちらの評価は全然高くなかった(3.8)ため、新海誠氏の作品自体に興味を失っていたのですが、姉から薦められたので視聴しました。

{netabare}
本作は、東日本大震災で母を失った主人公の少女すずめが、トラウマを脱し自立を遂げて行く物語と言えそうですが、当初は九州からスタートするためそれがカモフラージュされているのが良かったです。

ミミズと呼ばれる怪異が扉から出てきて地震を起こす設定、壁のないところに扉があるという構図は、日本人にとってドラえもんの“どこでもドア”で見ているためか意外と馴染みがあって、その先が常世(とこよ;死者の世界)というのも理解しやすいものでした。

また、主人公の岩戸という苗字もそうですが、日本の神話のアマテラスの岩戸隠れやその扉(岩戸)を閉じることとのつながりがあるように連想されます。

音楽は、本作もRADWIMPSが楽曲提供していますが、これまでのMVのような使われ方はなく、懐メロを挟む程度で良くも悪くも落ち着いていた印象です。背景美術は新海誠作品ですので、当然のハイクオリティでした。

物語の展開は、登校時にイケメン閉じ師である草太に声をかけられたすずめが、草太のことが気になって廃墟に立入り、閉じておくべき扉を開け、要石を抜いてしまう。以降、要石から姿を変えた猫(ダイジン)が各所で扉を開けてミミズを出現させたことから、すずめと草太は扉を閉めつつダイジンを追いかけて九州から東北へ移動していく。

リアリティ面で少し突っ込むとすると、学生の身で宮崎から愛媛、神戸、東京と移動していってしまうすずめの行動力ですね(交通費も考えると帰れなくなるのではと不安になるはず)。イケメンだから興味があったというわけでもないでしょうが(序盤から草太は椅子に姿を変えられてしまいましたし)、この部分は不自然に思いました。

また、ミミズの存在をすずめは見ることができますが、他の生徒など他人には見えないことが描かれています。一見、突拍子もない事柄であり設定ですが、近年、こういった目には見えない存在があるということは、受け入れられやすい時代になってきたのではないでしょうか。

個人的に様々なYoutubeを見るようになっただけかもしれませんが、昔であれば、霊が見える人から直接そういった話を聞く機会など限られていたものの、Youtubeでは現在でも霊感のある方が多数、情報発信されており、霊の世界の話に接することが容易となりました。そもそも、人間が死んだらどうなるのかといった基本的なことも、いまだ解明されていませんが、そういったスピリチュアル的な関心や考え方は今後も高まっていくと思います。

幼い頃に常世に迷い込み、母のように見えた存在が、実は未来の自分自身であったというクライマックスが印象的でした。
幼い自分も母を亡くしたことを理解していたと思って話しかけ、はじめは拒絶されますが、子どもの椅子を見せ、再度歩み寄ります。
「あのね、すずめ。今はどんなに悲しくてもね、すずめはこの先、ちゃんと大きくなるの。だから心配しないで。未来なんて怖くない。あなたはこれからも誰かを大好きになるし、あなたを大好きになってくれる誰かとも、たくさん出会う。今は真っ暗闇に思えるかもしれないけれど、いつか必ず朝が来る。あなたは光の中で大人になっていく。必ずそうなるの。それはちゃんと、決まっていることなの。」
「お姉ちゃん、だれ?」
「私はね、すずめの明日。」
ここは過去の自分を受け入れて乗り越える、統合化をしているようでもあり深いです。お二人の演技も素晴らしく、感動しました。
臨死体験エピソードでは、昔誰に声をかけられたのかわからなかったのが実は自分だったというのはあるあるなので、スピリチュアル的にはリアリティも感じさせます。

2周して、すずめも草太も自分を粗末にして生きてきた(「死ぬことは怖くない」)ところから、自分と向き合い、生きることを前向きに捉えるように変わっていく変化も理解できました。

まあ、恋愛面は唐突感がありますし(昔見た記憶も回収しましたが、だからと言って命をかけて呪いを解く対象にそう簡単になるのでしょうか?)、ミミズやダイジン、要石等の要素は個人的に若干引っ掛かっていて他になかったかなと思いますが、概ね満足です。(恋愛面も含めたバランスでは「君の名は。」に軍配。でも、クライマックスの出来はこちらが上。)

あと、キャラクターでは芹澤くんが良い味を出してくれていました笑
{/netabare}

新海誠氏が「君の名は。」以降の災害をテーマにしてそれを乗り越えて新たな境地を目指した作品。見る価値アリです。

(参考評価:4.1)
(視聴2023.11)

投稿 : 2023/12/01
閲覧 : 204
サンキュー:

17

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