かがみ さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
所有から関係性へ
『新世紀エヴァンゲリオン』の社会現象化に伴い発生した第三次アニメブームからは同作への返歌的な多くの作品が生み出された。それは同時に戦後日本的な「大きな物語」の失墜に伴う社会の「引きこもり/心理主義化」といういわゆる「95年問題」に対するサブカルチャーの一つの回答でもあった。そのうちの一つに数えられる『機動戦艦ナデシコ』は「95年問題」に対する回答としてTV版エヴァが提示した母性的承認(おめでとう)をより一層強化した形で提示した。これに対して本作は「95年問題」に対して良いr直接的な形で対峙する。同作の主題は「大きな物語」を基準としない別の仕方での「成熟」は可能かという問いである。そして同作は同性愛的な感情でつながる2人の少女に象徴される二者間関係を成熟のかたちとして提示する。これはいわば「所有」の対幻想から「関係」の対幻想への転換である。こうした意味で本作は「小さな物語」同士の「関係」を記述していくゼロ年代的な想像力の先駆けともいえる作品であった。