nyaro さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
科学云々も良いですけど、どちらかと言えば政治思想が面白い。
この作品、2期になってより鮮明になってきたのは現状の民主主義・資本主義体制の行き詰まりに対する強烈なアンチテーゼになっていることです。
3人の主要な人間の思惑は、司はカリスマによる独裁体制(暴力による恐怖政治)、氷月は選民思想と環境問題も持ってました。「ガンダム」のシャアの思想ですね。そして千空は科学崇拝者であまり社会体制についての理念は感じられません。音楽によるカリスマを利用するなどしていました。石神村(島)は巫女によるシャーマニズム体制というか宗教的な政治でした。
時々回想で事件前の日本の描写が入りますので、現代の文明と比較した場合、どういう思想がいいのか?ということを中心に描かれているように感じます。そこにあるのはやっぱり文明批判なんでしょうけど、じゃあ、どういう体制がいいのか?という問いかけもある気がします。
もちろん、本作は科学を保護し再生させるところに面白さがあります。科学の知識を勉強し保存し伝えることの大切さはテーマといえるでしょうが、話の組み立ては明らかに政治思想が中心です。そこが面白い。リーダーシップ論ではないですね。
科学の再生がスピード早すぎだろう、という不満が1期はありましたが、この政治体制=人が集まってきたときにどういう変化があるのか?をダイナミックに見せるためにはスピード感が必要だったのでしょう。もう少しじっくり見せて欲しいという気もしますが、あまりダラダラやると科学マンガになってしまうのでほどほどがいいんでしょうね。
ですので、敵対勢力である司の武力帝国をいつまでも描いているわけに行きません。次にまた新しいタイプの支配者か集団が出てきて、そことの対峙でなにを描くか?ですね。司はキャラの濃さから言っていつか戻ることになるんだと思います。そこに杠の取り組みが関わってくるのでしょう。
で、その杠の理想主義的な慈愛ですね。これは結構気味が悪いし描写も目に狂気を感じたのは気のせいでしょうか?理想論だけ言って生産性がない女性像とも取れるし、いずれ大きなことを成し遂げる聖母にも見えます。が、この杠はやっぱり別枠でしょう。物語上ではいずれ何かを成し遂げるでしょうけど、現状ではキャラ付けとしてしか見えません。「石」の設定の謎のヒントと死者の救済=奇跡なんでしょう。
そうするとやっぱり大樹って初期では主役っぽかったのに…という感じですね。
他のキャラ達もいろいろ性格付けがされていますが、何が好き、何のためなどのどういうモチベーションで生きているかが比較的明示されているのも面白いところです。リーダーとなる人間たちとその配下になる人たちの有用性・個性も示されていました。
都市鉱山とか文明の記録があまり出てこないのは、あえて、でしょうね。やはり探険と工夫で再生する方が面白いです。レコードは話の流れでそうするしかないでしょうけど、あまり発掘系の科学の再発見に頼るとご都合主義になりそうです。
2期になってアニメ、素晴らしく綺麗になってましたね。映像も素晴らしかったと思います。
ただ、まあ、やっぱり肝心のチューニングが少年向けなんですよね。もちろん大人がみて十分面白いんですけど、キャラ達がいかにも少年マンガなのが自分には合いません。
ということで評価は作画は…5かなあ。キャラとストーリーは4.5。声優・音楽を4とします。EDアニメは印象的で素晴らしかったです。