ハニワピンコ さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
争いから見つけ出せること
ヴァイキング一味の頭アシェラッドに父親を殺され復讐の機会を伺い続け、10年ヴァイキングの斥候として戦場を駆け回り、略奪 侵略に加担してきたトルフィン。だがアシェラッドは自身が殺す事なく死んでしまう。ただ復讐だけを考えて戦場を駆け巡った10年の年月は重く、何を糧として生きていけば良いのか。廃人となり何も考えられずに奴隷として過ごす日々、しかし新しく入ってきたエイナルを通じて、今生きる事の意味、そして父やアシェラッドの影だけを追っていた頃からの脱却を図り新しい生き方を目指す主人公の物語
戦い、戦争一辺倒だった少年トルフィンから打って変わり、今期は奴隷に堕ち、廃人となって何も考えずに暮らしていく中で、新しく入ってきたエイナルという戦争で故郷や家族を失った過去を持ち憎しみを持つキャラクターの登場から、未だ苦しめられている過去の戦争 殺しの記憶にエイナルという被害者を通して向き合い、「生きている意味があるのか」という思いしか浮かばないトルフィンから、新しく生きていかなければならない意味を見出し、生きてどう精算していくのかを前半たっぷりと描いていった
しかしその個人の思いとは裏腹に、未だ戦争 略奪 支配は続いている世界。そしてその魔の手が農場 周りの人に迫っていた。「戦士」になりたかったオルマルは自身の実力、そして戦いの世界の現実を知らずに、それを策略の一端として使われてしまう。そうして北海帝国の侵略を受けることとなった農場は一部を除いて臨戦ムード。しかし実践経験も無く平和な農場で自由に暮らしていた一応の傭兵と、戦地を経験した精鋭部隊の差は歴然で、その当主でさえ嘘の箔で繕った信頼や敬意も本物の実力者を前に崩れ去ってしまう。そして蹂躙され漂う敗走ムード。その戦場、そして敗者 負傷者を目の当たりにして原因であるオルマルも戦場を知り、「戦士」とは何かを自身で理解することになる
この、同じような“戦と戦士“の相関はこの作品の重要な要素であり、描かれる戦争も全てはこの理解のためでありながら、作業的ではなくてドラマチックに仕上げてエンタメとしても面白いのがこの作品
作品通してのの重要な文脈としてはこれくらいで、次は2期トルフィンについて起きた出来事から色々と
トルフィンにとって農場で出会った重要な2人 エイナルとアルネイズ
一人は今までから今後を生きていく為に。もう一人はその思いを更に強固にしていく為に。大雑把に言えばこれだと思うが、エイナルについては前述したのでアルネイズさんについて。境遇はエイナルと同じく被害者であるが、その被害者としての境遇が今でも続き、ガルザルという夫の登場から領主との関係に至るまで、自身が思っていたことと全く逆の境遇に無理やり遭わされ続ける連鎖。結局最期も戦争の音が聞こえる中で亡くなっていくこの見せ方。これは最後の最後まで逃れられなかった一生の被害者として描き切られ、それを見たトルフィンがどう受け取りそしてどう行動していくのかがさらに強固なものとなっていったキャラだった
農場編は一期からの戦争 殺しを経験しその上で改めて父親の言っていた「本当の戦士」の意味を理解する為に、様々な境遇のキャラ、そしてまた近くで起きる戦争と殺し、その上でトルフィンが解釈して持った理解を作劇でどう見せてくるかという作品のテーマに迫る重要な一編として、描かれるテーマだけではなく物語としてしっかり楽しめたし、圧巻と言わざるを得ない見せ方に更にこの作品の凄さを実感した
witより引き継いでスタッフはほぼ変わっていないが、多すぎる作品の制作に取り掛かっている会社の中で単話毎にアニメーターは変わっているけれど、農場の美術はもちろん、しっかりした線での軍勢の迫力のある動きは去ることながら、心情が重要な部分では繊細な絵でと、安定したクオリティで連続2クール走り抜けて本当にお疲れ様でした
一先ずアニメで『ヴィンランド・サガ』を視聴しているのはここまで
ヴァイキング譚として、そこで描かれるその中での真に気付くべき信念や美学。それをテーマとして見せてくる作品は多々あるが、この作品はそれを真摯に真正面ながらそこに至るまでを丁寧にそして重厚に見せてくる。そんな作品を自分自身で解釈していく事はとても面白い。アニメ視聴の妙の真髄を体感できた
{netabare}やっと書けたと一言。こういう作品の感想を記す時は自分のストーリーの理解に主眼が置かれがちで、アニメの感想というよりは作品自体になっているのは自分でもどうかと思うけれど、まぁ言っても自分がそうしたいと思う作品にたまにこんな書き口で書いているだけで、広い目で見れば自分のアニメ視聴の為の重要な要素にはなっていると思うので、こんな感じの書き方の枠としてで {/netabare}