nyaro さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
かえるくん東京を救うと銀河鉄道の夜。違う利他の形ですが…
ゴジラ-1.0を見て、ちょっと本作のTV版に似てるかもと思い、そう言えば映画どうなったんだっけとアマプラ探したら無料でした。現在前半を見終えて、後半見ていない状態です。
前後半の前半部分ですので、考察でもないでしょう。少し感じたことです。冒頭だからネタバレではないと思いますが、主人公の2人は「かえるくん、東京を救う」を探します。
2人がこの作品をその題名で探すのはあるあるですね。私も若かりし頃本屋で同じことをしました。「神の子どもたちはみな踊る」というソフトカバーの中の短編です。今でもしっかり手元に持っています。
この作品は95年の阪神淡路のあと、村上春樹氏の描いた震災文学の最高傑作です。「すずめの戸締り」はモチーフこそ「海辺のカフカ」ですが、宗像氏の一族あるいは要石はまさにカエルくんでした。ミミズと戦うことすら濁していないので異論はないでしょう。
運命と自己犠牲。名も知らない大衆を救うという理不尽な役割。カエルくんは自分だって怖いといいます。ただ、主人公のような市井の善良な人がいるからこそ、東京を守りたい。たとえ悪人がいたとしても。だから、是非主人公には自分の戦いを応援してほしいという話です。
TV版では「銀河鉄道の夜」が主題であることを冒頭では強調していました。「銀河鉄道の夜」は日本的キリスト教的な性善説という感じの利他であり、生命と食のような業も含めていました。
ただ、思わず河に飛び込んで助けるというのは、どちらかといえば「竜とそばかすの姫」の母ですね。他人を助けるということと、本作TV版の家族愛…それも疑似家族を助けるということとは少しずれていたのも事実だと思います。
どちらの作品オマージュも、少し本作の主題とズレがあるような無いような、ですね。
「利他」に関する物語が本作をはじめ「すずめの…」「そばかす姫」「ゴジラ-1.0」も含めて、最近増えている気がします。
ハリウッドでも「インデペンデンスデイ」とか「ハルマゲドン」古くは「ポセイドンアドベンチャー」でも自己犠牲はありますけど、あれは何かの型でした。最近の日本アニメにおける「利他」の描かれ方の深みは半端じゃないです。
疑似家族ものとしては「岬のマヨイガ」とやはり「ゴジラ‐1.0」とかも震災に絡めてありました。こっちも上げればきりがないでしょう。
「かえるくん…」の中にも主人公の家族問題があって「すずめの戸締り」の環さんはここからとったのかな、と思います。
2011年で日本の価値観の何かが崩れたとき「そういう時代」に入ったということでしょう。「そういう」を言語化するが現代の文学の最先端であるアニメの役割ということなんだと思います。疑似家族と利他。それはその大きな要素なのでしょう。
本作はそして最後に不穏なものがありました。冠葉の陽毬に対する男女の愛のようなものが描かれます。これはTVシリーズになかった要素だったと思います。夏芽真砂子も冠葉に執着しているので愛のカタチについての対比になるのでしょうか。
父母の家族愛についての明確な回想も入っていました。ラッコと河童も同様に親子問題みたいです。
TV版では明確でなかったトリプルH、ダブルH問題も何か描かれそうですね。
ペンギン桃果と赤ちゃんペンギンが何を表しているのかも気になります。
「利他」「生命の輪」「家族愛、愛のカタチ」「親の歪み」なによりも「運命」ですね。「かえるくん、東京を救う」を出した以上は、生半可な結末では許されません。是非、期待の上を行く後半でありますように。
評価は後半見た上で。ベースとしてオール4はあっていいと思います。
ただ、アニメ作品として見た場合、幾原氏の作家性というのはどうかな、と疑問もあります。考察のための考察になっていないか?という疑問が最近の氏の作品には感じられます。
最終評価ではエンタメとしての完成度は映画としては求めると思います。よほどの深みがないと、後半見た上で減点する可能性はあります。