「ヴィンランド・サガ(TVアニメ動画)」

総合得点
80.0
感想・評価
428
棚に入れた
1670
ランキング
478
★★★★☆ 3.9 (428)
物語
4.0
作画
4.0
声優
3.9
音楽
3.8
キャラ
3.9

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ネタバレ

ハニワピンコ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

影を追うか、自らで道を切り開くか

『プラネテス』の幸村誠による、月刊アフタヌーンにて現在も連載中のヴァイキング譚

略奪 侵略を繰り返し傍若無人に振る舞い、当時の禍殃を体現していたヴァイキング達。しかしその中で“戦鬼”と恐れられたトールズは、本当の戦士には剣は要らないと理解して戦場から離れて暮らしていた
「本当の戦士とは」 この答えに辿り着くまでに真にやらなければならないのは戦場で人を殺し剣を知る事であり、それをこの1期ではやっていた
結論から言えば凄い作品に出会ったなと思うくらいに、様々なテーマを盛り込んだ上で一つずつ物語の進行を進めていく中で消化していき、それでいてエンタメ作品としての盛り上がり キャラの立ち方、そしてヴァイキング譚も真剣に描いて、真に定められたテーマに近づいて行くという骨太な作りをしている凄い作品だった

映像も広い広大な土地や海のリアルな美術はもちろん、当時の荒れた暮らしの中で生きている男たちの顔や服装など、そして派手ではないけれどちゃんと動いて経過のわかる人間たちの戦い、集団での戦の動まで凄かったです

復讐のためヴァイキングに入り略奪に関与していく中で描かれるヴァイキングの恐ろしさ、豪快な振る舞いにまともな倫理観はなく生きていく様を見せながら、その上で強者が現れ蹂躙されていく絶望感をこれでもかと描いてくる、因果応報ではなく自然の摂理に則った生物としての宿命。これが戦いの世界であり、トルフィンが育んだ価値観であった

その一方で世俗とは別離した宗教的 神話的な思想にこの世界を見る者たちがいた。その者達は神に自然の摂理に従いながらも永遠となれる「愛」を求めていた。そのために祈り 生きていた
しかし神は救いの手を伸ばしてはくれなかった。目の前で親しい人は死に、今も殺されそうになっている。そこで気付く。人間の言うところの「愛」など無いのだと。そう理解した瞬間 怒りそして自らの手で「楽園」を作り「愛」を手に入れる。そう決意したのがこの作品のこれまた重要なキャラクターである、クヌートである

そうして殿下は自らで行動していき、事件は父親であるスヴェン現国王の前で起こる

殿下の家臣として登用され政治的争いを水面下で画策していく中で、スヴェン王が動き、アシェラッドの故郷である土地の侵略が計画されていた。アシェラッドも昔 子供の頃に聞かされた英雄の話、それを信じていつの日か自分と母親を救ってくれる英雄が現れると信じていた。しかし現れなかった。そこで理解した「自分が動かなければ何も変わらない」と。そして王を斬り反逆者となり、後に託して役目を終えた。そう託せる価値があると思った殿下に
しかしトルフィンは未だ敵に追われ、アシェラッドを殺す為だけに生きてきた。そんな中で死ぬアシェラッドは「つまらないことに引っかかってんな」と言い遺す。これは思想も境遇も違う中で10年過ごしてきて流石に情も湧き、少しの後悔と今後の期待を込めて遺す、時代の中で自身の価値観を見つけて貫き、後に託すキャラとしてとても印象深かった
何のために生きて、何の為に殺してきたのか。その行いをどう精算するのか。というところでプロローグは終わる

壮大なプロローグとして作品に定められたテーマを時代や状況から、それと対になる様な描写をして逆説的に描いたり 対比させたりと、その上でキャラ達がどう行動するのかの転換には重要な物語性を持たせて印象付け、もたらされた深みはとても重厚な説得力を持ち、ずっしりと刻み込まれた

2期も現在は見終わっており、その感想を出すために改めて本作第1期のまとめを記した所存ではあるけれど、改めてこの作品というものを見ていく中で、据えられたテーマとそれを重厚なストーリーで楽しめて追える大変貴重な作品だと思った。作者はもちろん、24話を一挙に制作し切ったスタッフ及びスタジオ、これを製作に踏み切って企画を立ててくれた方々、日本アニメとしてこれを作り出してくれたのはとても感謝したい事である

投稿 : 2023/11/13
閲覧 : 222
サンキュー:

12

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