nyaro さんの感想・評価
4.0
物語 : 5.0
作画 : 3.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
ダークサイドすら愛おしい素晴らしいキャラ造形。感動しました。
23年見逃した作品として気になってました。
正直こんなに感動するとは思いませんでした。別に涙がこぼれるというわけでもないんですけど、視聴後感が非常に爽やかで幸せな気持ちになります。
そして、変な言い方ですけど包容力というか受容性がちょっとだけ増した気がします。1日たてばもとに戻るとは思いますが、この作品を見たという経験は結構大きい気がします。
ジェンダー論うんぬんのニュースがあって、外野が騒いだようです。そもそもこの作品は、アイデンティティとペルソナのギャップ、思春期の性への目覚、女らしさ、変化をするのではなく自分を認めること、親と子供の関係性、嫉妬と友情…と、作品にレッテル張りをしようと思うとなんでもできそうです。
ただ、この物語はストーリーを類型化しないでそのまま受け入れるほうが私は感動が深いと思います。というのはキャラ造形が素晴らしく、活き活きとしています。キャラ造形が良く上手く描けているので、トモちゃんの内面・外面をいろんな視点で問題とリンクする形で分解できると思います。
ですが、分解してしまうとそれでトモちゃんのリアリティが発散してしまいそうです。作中の家族や過去を含めた人間関係の中でのそのままの「トモちゃん」こそ「トモちゃん」ですので、描かれているままに見ていけばいいのでは?と、思います。
その結果、トモちゃんの周囲にいる淳一郎、みすず、キャロルのどのキャラにも感情移入できます。内容はギャグですけど3人の行動原理にはちゃんとエゴも描写されていて、それぞれのキャラが持つ心情のダークサイドも思春期的なリアリティがあってなかなか愛おしいです。
また結論として、冒頭の親友問題…これが結構いい感じで最後まで貫かれます。ここは是非見て感じたほうがいいと思います。なるほど!?という感じで説得力があるような無いような…でも、新しい考え方だし、いい結論でした。
この作品の特徴は、トモちゃんと淳一郎が2人とも努力していることです。もちろん主には空手です。自分を高めたうえで自分とは何かを問いかけ、疑問に思い変えなければと思う。自分より強いものを認める。相手にとって自分とは何かという悩みが非常に初々しいです。のんべんだらりと生きているのに、いつのまにか隣に美少女がいるのとは違います。
また、その2人の出会いもただ近距離に住んでいる幼馴染じゃないことに注目です。相手に追いつきたいという長年の関係性が生み出した「代替のいない相手」であることが重要なのでしょう。
その自然な恋愛感情がこの作品の感動のポイントなのかな、と思います。やさしいから、命を助けてもらったから、○○が優れているから、という理屈では人は好きになりません。好きになるべくして好きになったことが物語から読み取れます。これも理屈ではないでしょう。「美少女が近くに来て、いつの間にか好きになってくれてたらなあ」、では絶対にないです。
なお、1つだけ、12話で感動したのに13話がなあ…ちょっと面白エピソードだった気も…ただ、まあ、最後がいいのでいいですけど。
23年は「僕の心のヤバい奴」「長瀞さん2期」等ラブコメに見るべきものがありました。
○○さん系と呼ばれるギャグ・癒し系も多くなりましたが、型通りの王子様もの、突然現れて冒険が始まる「ボーイミーツガール、ガールミーツボーイもの」、不幸から引き上げられる「シンデレラもの」、境遇の違いで分断される「ロミオとジュリエットもの」、美醜のバランスが問題になる「美女と野獣もの」、愛か世界かの「世界系」、お転婆な少女が女になる「そばかすもの(造語)」等々あります。
本作については「そばかすもの(造語)」の類型ではあっても、その発想は逆転してます。物語の類型化でカテゴライズされた価値観から本当の意味で脱却できたラブストーリーとして…とかいいだすとキリはないですが新しさを感じました。
その効果が生まれたのは、設定のズラしというよりはお互いが努力と悩みの果てに、急には変わらないことを主体的に選択した結果、相手を尊重する、認め合うという恋愛観だからです。
まあ、こうやって言葉にするとそれだけでズレる気もしますので、是非作品を見て下さい、としか言いようがないです。
評価はストーリーとキャラは…5つけたいなあ。その代わり作画と音楽は3にします。声優は調整で4にします。
まあ、作画に文句が言いたいと思う反面、それを感じさせない素晴らしい話です。点数は合計4ですが、90点はあげたい作品です。
そう何度も繰り返しみるかわかりませんが、1度じっくり見て良かった作品です。1年くらいしたらもう1度みたいかなあ。