「無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ 第2クール(TVアニメ動画)」

総合得点
89.2
感想・評価
748
棚に入れた
3244
ランキング
88
★★★★★ 4.1 (748)
物語
4.1
作画
4.3
声優
4.1
音楽
4.0
キャラ
4.1

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ネタバレ

蒼い✨️ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

本気の異世界転生アニメ。

【概要】

アニメーション制作:スタジオバインド
2021年10月4日 - 12月20日に放映された全12話+番外編1話のTVアニメ。

原作は、「小説家になろう」に連載されていたweb小説を改訂し、
KADOKAWAのMFブックスから刊行された、理不尽な孫の手によるライトノベル。
原作イラストは、シロタカが担当し、
『コミックフラッパー』にて、漫画家・フジカワユカによるコミカライズ版が連載中。

監督は、岡本学。

【あらすじ】

裕福な家の5人きょうだいの4番目の子供として生まれ、
趣味のパソコンに没頭して勉強をサボって受験に失敗したばかりに底辺高に進学することになり、
そこで不良にオモチャにされる酷いイジメで深い心の傷を負って引きこもるようになり、
心配する家族の声に耳を貸さず、社会復帰に踏み出す勇気もなく、
34歳になった太った無精髭のメガネ男は、亡くなった両親の葬式にも出席せずに、
自室で18禁行為に耽っていた(原作だと撮影した幼い姪の裸の写真)ところ、
兄姉弟に自室に踏み込まれ、パソコンのモニターは破壊、男は殴られて怪我。
そして、家を追い出され居眠りトラックに轢かれて死んでしまった。

元冒険者で容姿の整った夫婦とメイドが住む家庭の男の赤ん坊に転生した男は、
幼子に成長して、ここが剣と魔法の異世界であることに気づく。

魔法の天才とも言えるルーデウス・グレイラットに生まれ変わった元ニート男は、
子供からやり直せるのだからと本気を出して魔法の勉強をしっかりやろうとして、
ロキシーという美少女が師匠として雇われて魔法を教わって弟子を卒業したり、
長耳族の血をひく村の美少女のシルフィエットと仲良くなったり、
見た目は子供!頭脳は大人!な状態で、色々と刺激的な日常生活を送ったり、
貴族の家の顔は良いが乱暴者な令嬢エリスの住み込み家庭教師になったりして、
前世では人間関係を拒んで心が冷え切っていたのを埋め合わせるかのように、
愛情のある環境で幸せに暮らしていた。だが、それも長くは続かなかった。

10歳を迎えたルーデウスはエリスと共にフィットア領転移事件に巻き込まれて魔大陸に転移し、
そこで恐怖の対象である緑髪のスペルド族の戦士のルイジェルドに出会う。
ルーデウス、エリス、ルイジェルドの3人は、
冒険者パーティの「デッドエンド」を結成して旅費を稼ぎながら、
故郷である中央大陸アスラ王国のフィットア領を目指す。

旅路には色んな出会い・冒険があり、新たな力を手に入れていくルーデウス。
だが、ルーデウスは家族や故郷に何が起こったのか全く知らず、
その後に彼自身が待ち受ける人生も全く予想だにしないものであった。

【感想】

リア充になりたいしカッコつけたい男性心理が根底に描かれた、一人の転生者の悪戦苦闘の物語。

なろう原作にしては珍しく駆け足にもならずに、途中で誘拐事件のアクシデントもありましたが、
最初の7話をかけてルーデウス少年の故郷での幸福な時間をじっくり描いた後にて、
魔力災害による日常の喪失、そして故郷を遠く離れて流浪の旅をすることになった彼らの物語が今回。

ミリス神聖国がヴェネチアでシーローン王国がタイであるなど、
土地が変われば文化や風俗が変わる作り込みの良さは健在。岡本監督が原作者に初めて会った時に、
シーローン王国のアニメ版での民族設定をこうしたいと原作者の許可を求めたであるなど、
きちんとイメージがあってアウトプットしての作品の作り込みへの熱心さは流石というべきですか。

戦闘シーンではエフェクトや比喩的な演出を用いずに純粋に動きだけで
少女エリスや屈強な男ルイジェルドなどのキャラクターの殺陣(たて)の動きを、
個人差をつけて表現し切る技術力を含めて、アニメの作画(映像)のクオリティとは、
細かいところを疎かにしない丁寧な仕事に下支えされている裏付けがありますね。

敢えてオープニングアニメを作らずに、主題歌に本編を重ねるやりかたではありますが、
16話と番外編での主題歌時と一部のシーンが『ARIA』へのオマージュを連想させる作りであったり、
制作者たちのこうしたいが単なる模倣でなくてキャラクターを活き活きとさせる演出になっていて、
学ぶこととは真似ることである、これは『SHIROBAKO』での台詞ですが、
アニメを作ることはクリエイトするだけでなくて、上手い人を参考にすることでもあると、
このアニメを見ていて思い出しました。
(単なる偶然でオマージュではない可能性も無いとは言いませんが)

ストーリー面では、前世では引きこもることで家族と向き合うことから逃げ続けて関係が希薄になり、
最初は本気で心配してくれていた兄弟からも見捨てられて嫌われていった、
自分の殻に閉じこもることは、近しい人の気持ちを傷つける罪でもある。
その後悔を噛み締めながら、人はいきなり変われるものでもないですが、
前世での性根と性癖はそのままに、少しでも良い選択をしようとするルーデウス。
それが自分だけでなくて関わっていく人たちへの救いになるということ。

他人から見下されようがバカにされようが、
見下されている本人は知性が欠落したサンドバッグではなくて、
本人なりに傷ついたり悩んだりしている。
いわゆる弱者にカテゴライズされる側の人間の心理を作者が理解していて、
主人公を通してそれを描いた上で、転生後の経験からも色々学んだり考え抜いた末に、
心が救われる話を描きたいのが作者の思惑であるのですが、

『ダイの大冒険』での弱虫だった魔法使いのポップが、
ダイの最も頼れる相棒に成長する話が好きな人には受け入れやすい話であるかも?
(主人公の変態性が強いので人を選ぶ作品であることを否定はしませんが)

前世がクズニートと罵られたルーデウスだからこそ、今生での父・パウロのダメな部分に共感したり、
前世での父母とは親不孝のまま死別してしまった、その贖罪の意識から、
親子喧嘩をしてもきちんと目を見て話し合うことを選択しても最終的には和解したりで、
前世ではなれなかった自分に今度こそはなりたい、
やり直しの話としてシリアスな部分がきちんと形になっていますね。
(ルーデウスが見た目が息子でも中の人がオッサンなので、
 父・パウロが年下に思えて内心では上から目線ですが)

子供が親に自分の気持ちを言葉で伝えられない。
親は心配してても説明されないと子供の心を把握出来ない。
親子でお互いの気持ちが通じ合ってない心の距離感。
リアルの引きこもり問題に通じるメッセージがあったり、
濃いシナリオが印象的な2期でしたね。

そしてまた、ストーリーが大きく動き出します。
色んな出会い・別れ・再会に彩られたルーデウスの人生ですが、
将来の嫁候補がここまで3人登場していてハーレム的な物語に帰結するのですが、
主人公が痛い目にも遭うことも多く無双するわけでもないですので、
話が安っぽくならずに楽しめるのが良いですよね。所謂ニートの心理に寄り過ぎではありますが、
作者が本当に描きたいことに直結してる作品テーマですので、そこは仕方がないですね。
主人公の美点も欠点も含めた人格描写が作品を魅力的にしている部分ですので分離不可能ですね。


この次の2期では監督交代で変化している部分もあるということですが、
それによって評価の変化が自分にはあるかもしれませんが、
シリーズ物として、今度も観続けたい作品ではありました。


これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2023/11/08
閲覧 : 150
サンキュー:

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