ナノトリノ さんの感想・評価
3.6
物語 : 4.0
作画 : 3.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
シタタカカワイイ
23-10-29初稿
【とても期待しています】
最大の理由は制作が寿門堂であること。
同社の元請はポーションがまだ2作目なのですが
1作目の「このヒーラー、めんどくさい」が大大大大大好きだったからです。
監督やキャラデ等に同じ方が就いておられるようで楽しみです。
原作のFUNA先生は「のうきん(平均値)」「ろうきん(8万枚)」が既にアニメ化されています。
いずれも独特な味わいがあり完走しています。なんというか…主人公がこまっしゃくれてるというか、シタタカカワイイというかそんな感じ。
普段制作や原作はあんまり気にしないで見ていますが
これは始まる前から完走確定◎の個人的大本命なのです。
24-01-15全話視聴後の追記
【楽しめました】
上記で個人的期待作と書きました。つまり最初からプラスのバイアスをバリバリに掛けて観ていました。その上で最後まで視聴した評価としては上々、期待通りあるいはそれ以上です。
FUNA三部作(仮称)ではポーション>ろうきん>のうきんの個人的スタンス、一番好きでした。
なお原作/コミカライズはいずれも未読。
好きな点としては視聴感が軽く自由を感じる話運びだったことです。
お気に入りになった作品ですので長々と感想を、ちょっとくらい強引にでもポジティブ方向に書いてみたいと思います。
※長いです
{netabare}
【絵や構成について】
先述しましたが本作は寿門堂の2作目の元請け作です。
個人的2022年の五指に入る第1作「このヒーラー、めんどくさい」同様、品質は極めて安定していたように思います。
絵については昨今の大作系アニメなどとは比ぶべくもないですが、破綻がないのはもちろんのこと丁寧で安定して見やすかった。視聴感も軽めで好みです。個人的感想として「あ、今のカオルちゃんの顔ヘンだった」と思うような作画崩れ?はありませんでした。
キャラデについては、キービジュ初見時から随分と頭身低めなんだなとは感じていましたが、動いてみると特に違和感はなかったです。とても可愛らしく描かれていると思います。お気に入りはフランとセレス。あ、もちろんツリ目を気にして目尻を下げてるカオルちゃんもかわいかったです。
意図したものかそうでないかはわかりませんが、この低めの頭身には副産物があったように思います。この物語は基本ほんわかしていますが、そこそこに人の命が軽い世界で作中で人死にも出ます。それもかなりショッキングな描写で。これ以上低いとギャグアニメにしかならないギリギリの頭身にそのショックをいくらか和らげる効果があった…のかもしれません。もっとも原作既読勢によるとアニメの表現はこれでも随分マイルドになっているらしいのですが。
あるいは逆にかわいらしいキャラデだからこそマイルドにせざるを得ないTVアニメ描写でも落差でエグみが出せた…のか?このへんどっちなんでしょう。
キャラデ関連でちょっと驚いたのがウマです。なろう系アニメではCGで描かれたり歩行作画が危うかったりする事も少なくないウマですが、本作はひと味違います。全編にわたって描かれている非常に多くのウマが、いずれもとても丁寧でとにかく美形なんです。イケウマです。軍用の乗用馬はスマートに凛々しく、馬車馬はずんぐりむっくりに描き分けられてもいるようです。一部の馬車馬はもしかしたらラバやロバなのかもしれません。並々ならぬこだわりを感じます。ウマにもキャラ名やCVが付いてたりする作品だけのことはあります。
背景美術についてもちょっとした驚きです。1話冒頭の現世シーンはごくごく普通なのですが異世界は一変します。空には常に長い筋雲が走り樹木は捻じくれた幹をくねらせ、豪商邸や王宮の内装は見たこともない珍妙な文様と色彩で彩られています。背景のワンカットだけを見ても「ポーションだ」とわかるかもしれないくらい特徴的で、異世界感としても充分です。
構成については原作未読ですが素直なものだったように思います。
ひと昔前のように強引に最終盤にヤマを持って来ようとして中だるみが生じるようなこともありませんでした。昨今は中盤にピークのある1クール作品も少なくないのですが、本作のピークを敢えて挙げるとするならば6~7話のVS帝国戦争顛末記だと思っています。その後も諸国漫遊記的な短エピソードを堅実に積み上げる感じで、ラストに大活躍のカオルちゃんで〆て読後感?も良好。周回を重ねた者から言わせてもらうと、何話で何があったか大体思い出せます。全編通しての大きな流れが良いものだったのだと思います。
劇判については特に印象に残ったということはないものの、場面にマッチした曲群だったと思います。改めて聴き直してみたら記憶以上に流麗でスマートな曲調が多かったです。
主題歌についてはアタリだったと言えるでしょう。ドライブ感にあふれたOP、かわいらしいED両方とも好きです。虹色に縁どられたフォントもイカス。
【主人公カオルちゃんについて】
主人公カオルちゃんは現世で堅実に暮らしていましたが高次生命体≒神様の手違いで死亡、転生します。その際手違い死亡の代償としていくつかの“転生特典”を神様相手の直接交渉で引き出します。死んでもただで起きないしたたかさを初っ端から発揮。
全言語理解/遺伝子そのまま若返り/ポーション作成/アイテムボックスといったチート能力てんこもり、勝ちも勝ち取ったりです。
ちーとばかし強欲なんでねーの?と思わないでもないですが、転生により地縁血縁等が全て切れ、うら若い女の子の身ひとつ天涯孤独一文無しのリスタートです。こんくらいいーんじゃなーい
とはいえこのカオルちゃん、もし仮にチート能力を全く持たずに異世界に放り出されたとしても普通に生き延びられたのではないかと考えます。頭は回る方だしコミュ力も高く慎重で狡猾でシタタカ。独立独歩の気風も強く他者にべったり依存したり取り入ったり、甘い汁を吸うためだけに他者を利用したりといった事からは遠い人です。歳の割にも貧相なカラダ以外はスペック高めなのです。
若返りを伴う転生なのですがやり直し要素は希薄で、転生前同様に基本的には人生に誠実で堅実です。すなわちチート能力による安心安全な人生。
「考えた通りの薬品を考えた通りの容器に入れて出す」なんていうもはや人外の能力者ですが、金塊(ポーション容器)を無限に生成して必要もない蓄財にいそしむといった我欲に呑まれるようなことはありません。お弁当の一件でわかるようにちょっとした矜持も持ち合わせています。家事全般も得意で生活能力も高く、地味で真っ当な暮らしをいといません。
ただしブレがあります。なんというか…理不尽をどうにも見過ごせないタチみたいなのです。
貧窮孤児や難病の子供・献身の末の受傷といった人たちに手を差し伸べずにいられないようです。そしてチート能力によるポーションという天の女神の不条理をもって地にはびこる理不尽を打ち払います。もしかしたら元来子供好きなのかもしれません。
その一方で、特に権力者による理不尽には苛烈、それから礼節を欠く者にも辛辣です。なにも知らぬ無知なる者を自分の利益だけのために利用しようとする輩には邪悪の十倍返しを先制で御見舞いします。
よせばいいのに自分の身の上が危うくなるまでにやり込めて、結局その地を離れることになってしまうこと数度。ちょっとした連続逃亡犯です。
この辺のアクションについては性格悪い女と評されることも少なくないようです。わからなくもない。いちカオルちゃんファンとしても擁護しきれない部分はある。観ていて心がザワつく場面が無かったといえばウソになります。
しなくていい謀略にわざわざ引っ掛けてとっちめたり、安心安全を標榜しながらも表舞台でド派手に騒動起こしたり、聖国や神殿に対して敵意マシマシなのに自らは女神の名を都合のいいようにこねくり回すダブスタに見えたとしても不思議ではない。ちょっと調子に乗るところがあるというか。
でも私的にはそういうところも嫌いじゃなかった。
カオルちゃんは「正義」を執行してるつもりなんてほとほと無くて、目の届く範囲の理不尽や不条理を排除しようとしてるだけなんだと思います。その際につい興が乗ったり虫の居所が悪かったりでちょいちょいやり過ぎてしまうことがある。ただ行使する「力」が世の理を外れたチート能力ですから事態が収拾できないおおごとになることもよくある…っていう解釈です。
カオルちゃんを観てて胸がザワつくことは確かにあります。作中で悪人顔が似合うとまで言われてもいる。でも私はそこに「悪」を感じませんでした。
規模こそ違いますが、ちょうど女神セレスが「歪み」の排除に躍起になるのに似てるのかもしれません。セレスは歪みの排除による世界そのものの秩序維持には真摯ですが、「人間」や「国家」にはほぼ配慮というものがありません。転生時にセレスによって創られたカオルちゃんの身体にも同様のおよそ人間離れした性質が受け継がれてしまっている…のかもしれません。
逃亡するほどのおおごとをやらかす、とはいっても激昂してその場のなりゆきで…ってわけでもなく覚悟をもって挑んでいるようです。なぜなら逃亡する前に、職場や良くしてくれる人達に別れを告げ、そののちに“事”を起こしているからです。礼に篤く信に足る仲間にはきっちり仁義を通して去っているのです。なんだかんだ情にも厚い。
また冒頭の転生時にも夢の中でという形ですが、現世の家族や友人に二度と帰らぬ旅に出る事を告げています。
そして旅立つともう振り返らない。
ちょっとサバサバしすぎてない?と思わなくもないですが、人生何が起こるかわからない。起こってしまったことは仕方ない。適切に対応処置したら反省や後悔は薄い胸にそっとしまって後ろや下は向かない。チート能力持ってたって身の丈以上のものを望んで上ばっかりを見あげてもないし脇見もよそ見もしない。いつだって前だけを見て歩き続けます。カオルちゃんのそういう所が好きでした。
ヘンな例えですが、穏やかな晴れた日に大きな川の堤防をわずかな追い風受けてサイクリングしてる感覚です。特に目的地も約束も時間に追われることもない。ただ視界は良好、足元軽いペダルのひと漕ぎでスイーっと前に進むのが気持ちいい。そんなアニメでした。
{/netabare}