てとてと さんの感想・評価

3.9
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態：観終わった

最遊記作者のハードボイルドヤクザドラマ。2話しかないがかなり面白い

「最遊記」シリーズの作者によるハードボイルドなヤクザ物。全2話56分ほどのOVA。
同作者のアニメ(最遊記、BUS GAMER、私立荒磯高等学校生徒会執行部)の中では随一(唯一?)シリアス路線。
※作品データベース様より転載、2話纏めてレビュー。

【良い点】
他峰倉作品と一線を画すシリアスでハードボイルド、危険で妖しい魅力漂うキャラクターたち。
原作未読視聴者にも主要キャラの関係性や過去の因縁は伝わるストーリー、1時間弱で完成度は高い。
情け容赦なく銃殺していくバイオレンスさ、主人公がクールで迷いがなく、戦闘シーンが静かだがスタイリッシュ。
陰惨な割には1時間弱ダレる事無く引き込まれる。

謎の薬物を巡るヤクザの抗争に、元ヤクザ年少組リーダーで脱退した主人公・久保田誠人(まこと)や、
誠人が執着する謎の少年で薬物の秘密握る稔、元は誠人の舎弟で現在はヤクザ年少組リーダーの治らの過去と現在が絡んでいく。
薬物を巡るサスペンスはあまり重要ではなく、裏社会で生きる主要キャラたちのドラマが見所だった。
特に年少組リーダーとして、幹部・真田の忠実な犬に徹してヤクザ社会でのし上がろうと足掻く治(ちゃむ)の葛藤が、
真の闇を知る誠人の脅威に潰されていく絶望感に引き込まれる。
過去回想で治と仲間たちの絆や、ヤクザの道に進んで人生が潰えていくドラマがしっかり描かれている。
誠人と治、根本から住む世界が、格が違った。

治の仲間で足洗いたがっていた龍之介がエピローグ?で中年になって的屋やっているラストの余韻が後味良い。
日陰者が闇の世界から日の当たる場所に生きていく、ヤクザ人生ドラマとして良かった。

眼鏡のいい加減な優男と思いきや凄まじい怪物だった久保田誠人もさることながら、
怪しげな中華街の実力者?鵠(コウ)、冷酷なヤクザ幹部の真田らの存在感も光った。

森川智之氏をはじめ声優陣も渋く妖しい。
主題歌を原作者作詞で主人公声優たちが歌うのは峰倉作品のお約束?
BUS GAMERと違ってシリアスな良曲。

【悪い点】
原作6巻からスタート、原作未読視聴者にとっては起承転結の承と転しかない感じ。全2話の割に良くできてはいるが、やはり尺不足。
主要キャラの関係性は十分伝わるとはいえ、ストーリーやキャラが全般的に説明不足、行間を補完想像しながら見るしかない。
特にヒロイン(稔少年)の掘り下げが不十分。何故誠人が稔救出の為に修羅になるほど執着したか?など分からない。
治のドラマは良かった一方、誠人と稔の関係は描写不足。
ヤクザ幹部とか鵠とか、その他キャラも存在感はあるが本領発揮したとはいえない。

【総合評価】7～6点
1時間弱のヤクザアニメとしてかなり面白い。
2話しかないのが惜しまれる。1クール以上でアニメ化すれば高いポテンシャルがありそう。
評価はとても良い付けてもいいくらいだけど、尺の限界で「良い」

同作者の「私立荒磯高等学校生徒会執行部」とはスターシステムな模様。