お茶 さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
娯楽性よりも芸術性に重きを置いた文学のような作品
同名のゲームソフトを原作としているものの「真実の涙」という主題を同じくするほかに関連性はなく、ストーリー、キャラクターともに異なるオリジナルの作品となっている。
主人公と親友+3人のメインヒロインとの複数関係を描いた恋愛ストーリー 13話。
本作のヒロイン、乃絵、比呂美はそれぞれ悲しい過去があり、その心理下で、誰かの為を思って行動する流れが多く、(これが随所に見られる。誰かのために身を引いたり、誰かにお願いしたり) そこがことごとく裏目に出てからの、本心とのギャップが色濃く表現されていた。物語後半、前半の布石もあり、自分の気持ちに向き合い物語は転調をはじめる。
本作は、イベントらしいイベントがそれほど出てこない。学校に通っている風景がほとんどだ。にもかかわらずここまで魅せるのは容易いことではない。あえてぼかした表現や、暗喩を多くした演出などの、余白と行間が視聴者の没入感を高めている。この表現方法が唯一無二の作品性を表している。このぼかした暗喩は、視聴者の想像力に由来する側面が多く、時にはただの雰囲気アニメに映る可能性をはらんでいるが、私はこの表現方法に美学を感じた。
あえて状況を説明することをせず、"口承"のような方法をとる。
口承は、歌いついだり、語りついだりして、口から口へと伝えること、あるいは伝えられたもの。あえて遠回しな言葉を用いることでイメージを想起させ、文学のような雰囲気を漂わせている。また、3人のメインヒロインとの関係が二転三転する中で、主人公は複雑な選択をせまられる。その点もノベルゲームや文学を彷彿とさせていた。「娯楽性」よりも「芸術性」に重きを置いている。
また特筆すべきは登場キャラそれぞれのtrueを描いた点にある。
恋愛だけではなく、それぞれが抱えていた苦しい過去へ区切りをつけた点も評価したい。
誰もが報われるハッピーエンドを選択せず、賛否が出るであろうトゥルーエンドにした制作陣に今一度、賛辞を贈りたい。
また序盤ギャルゲーラブコメから後半リアリティ重視の恋愛ものへ変化していた。
このバランスが絶妙で導入は軽く終盤は重たいという運びが特徴的だ。これによって分かりやすく読み手を引き付け、最後は重厚さを与えていた。