waon.n さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:今観てる
画は良質。美しい時間の切り取り
【First】
とりあえずの2話でクオリティが高いので視聴継続は確定しました。
ただ、内容は今のところ地味で薄味ではある。キャラを魅せるっていう点が弱いのが気になる。
しかしながら、映像のクオリティが高く流れる時間を上手く切り取ることには成功していると思う。
なんていうかタルコフスキー風と言って正解なのか分からないがその香りがする…。
ドラマを切り取るのではなく、ただ事象を切り取っているという感覚の作品かなと思う。
無理な盛り上げとかもなく淡々と過ぎる時間のためいつの間にか見終わっているという不思議タイムに包まれる。
主人公フリーレンの生き方みたいなものと作風とを重ねて演出しているかのようで、彼女がどういった人物なのかを語るでも見せるでもないのに、何となくこんな人なんじゃないかな…とか何となくこんな事考えているんじゃないかなとかを匂わせる。
こんな表現もあるんだと感心させられつつ次の話のクリックする。
【second】
4話にて涙もろいのか泣けてきた。
多分その誘因こそがこの作品の基底となっていそうだった。
4話までのネタバレ含みますので以下隠します。
{netabare}
この作品の基本的なポイントをまとめておこうと思う。
・起こりは勇者パーティのリーダーであるヒンメルの死
・フリーレンの一番の特徴は人間の何倍も長命だということ
・旅の名目は魔法の蒐集。{netabare}後に以前の旅路を辿る旅路へ {/netabare}
・ヒンメルの意思を継いだハイターが面倒を見ていた少女を弟子にして、女二人で旅を続ける
4話までまとめるとこんな所かな?
起こりは勇者ヒンメルの死で、彼をもっと知っておけば良かったという後悔の涙が ‟承‟ でおk…おk?
ここでは、全くと良いほど彼女の後悔に乗ることはできません。しかし、欠かすことのできないポイント。
分かってるなーと思うのはここで泣かそうとするBGMを入れてこなかったところ。ここ導入だぞ、と言われている気がした。とはいえ、支え合ってる感は出していて本当に上手い脚本。
フリーレンの特徴は長命である、どれほど生きているかは分からないが、【弟子を取るのを時間の無駄でなぜなら教えてもすぐ死んじゃうから】だという人の一生をすぐ死んじゃうと表現するくらいには長命である。
故に人への関心があまりなかった。なので、人間らしさみたいなものが希薄だった。
しかし、珍しく時間を共にした仲間と呼べる人が死んだときに後悔した。
なので、ハイターが死を目前にした時彼の願いを無下にすることは無く聞き入れた。
それにより、フェルンを弟子として旅の同行を許すことになる。
『魔女の旅々』のレビューしたけれど、旅をするのなら主人公だけの視点ではなく、脇役の視点でどう主人公が映っているのか客観的に見せるほうがキャラに厚みが出る。
自然な導入でなおかつフリーレンの変化を起こす助けにもなっている点が上手い! という感じ。
さて、この辺りで泣けた理由だけれど、日本で言えば元旦に日の出を見るというイベントを行うが、勇者パーティーとして来た時には皆で見る意味が分からなかったし、分かろうともしなかった。
ここでの彼女の変化は小さい。【分かろうとした】だけなのだ。そして、その意味が【分かった】のはフェルンが一緒にいたからっていう、美しいプロット。
ここで、私は落涙する。
もうあの時のメンバーで見る事の叶わない日の出を夢想し、取り戻せない日々を思って。
つまりこういった【非可逆的な時間の流れ】がこの作品のテーマになっているんだなと思う。
封印された魔族のクヴァールが封印を解かれて秒殺されるっていう悲しみも同類のもの。
時間の経過は虚しいね。残念だけど君80年後は雑魚だからって言ってしまう(映す)惨さに胸を打たれる。
そういう作品だということ。
{/netabare}
そしてまだこの先も続くけれど、どうなっていくのか【First】のレビュー時よりも楽しみな作品になりました。