蒼い✨️ さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
Free!完結。
【概要】
アニメーション制作:京都アニメーション
2022年4月22日に公開された106分間の劇場版アニメ。
原案は、おおじこうじによる小説、『ハイ☆スピード!』
監督は、河浪栄作。
【あらすじ】
孤高の天才スイマーの大学生・七瀬遙。
彼は水泳を通じてライバルとしのぎを削り、仲間とも敵とも絆を作ってきた。
水を得た魚のような、遙の自由な泳ぎはライバルに影響を与えるものだった。
初めて出場したシドニーでの世界大会で遙は絶対世界王者のアルベルトの泳ぎに完敗し、
なによりアルベルトの凄さを目の当たりにしたことが頭から離れずに、
遙は彼本来の持ち味である自由な泳ぎを見失い、
不安定な精神状態に陥り親友の凛の言葉に苛立って突き放すようになっていた。
凛を傷つけてしまったことから逃れるように、
そして、次の大会での引退を表明したアルベルトと再び戦って勝つために、
残された時間は少ないと、全てを捨てて過酷なトレーニングに身を投じる遙。
だが、強さを手に入れる代償は遙の肉体が悲鳴をあげてすり潰していくものだった。
そんな遙を心配して見守る、真琴や凛などの仲間たち。
遙たちが悩みもがく先には、一体どんな景色が見えるのか?
彼らはまだ知る由もなかった。
【感想】
「けいおん!」と並んで京都アニメーションの作風の転機となった作品も遂にこれでラスト。
美少女アニメで培った演出のメソッドを応用して、もともとの売りである日常芝居に磨きをかけて、
イケメンのキャラ推しで、京アニショップでキャラグッズを売るPV的な側面もある作品。
ユーフォ、ヴァイオレット、メイドラゴン、ツルネらとの共通点として、
コミュニケーションによるキャラクターの精神や相互関係の変化を丁寧な作画で魅せたい意図があり、
作品ごとに実写寄りであったりコミカルであったり演出の見せ方の調整の差異がありますが、
今までのFree!との違いでは夢と現実の境界を曖昧にしていて、
例えばキャラクターの過去の記憶を寝ているときの夢という形で表現して、
夢だからこそ心象風景の非現実的な表現が許されるみたいな演出に積極的に取り組んでみたりで、
京アニの演出に否定的な人が言いがちな、作画はキレイだけど演出が~も、
実は作画のクオリティと演出の工夫は排他関係にあらずで、両立可能なのですよね。
場面によっては登場人物のパーソナルスペースを敢えて非現実的な誇張した映像表現に切り替えたりで、
ありのままの世界の美しさを表現したヴァイオレット・エヴァーガーデンとまた違った演出。
京アニの人間らしくも、アニメ制作には本当にたくさんのスタッフが関わっていて、
自分はその中のひとりに過ぎないと発言している河浪監督は1期から密接にFree!に関わっていますが、
先達の監督からは受け継ぐところは受け継いで、初代の内海紘子さん、
二代目の武本康弘さんとも違った作品の広がりを作画と演出で表現したい、
その意図が強く感じられる意欲的な作品であると思いました。
と同時に作品最終章である今回は、主人公の七瀬遙のための物語。
今までに自由な泳ぎで何人もの迷える仔羊を救ってきた遙が救われる話。
情けは人の為ならず。遙が立ち直るため&アルベルトへのリベンジのために、
皆が協力してくれる。“天才”も決して一人だけで何でもできるわけではない。
互いに支え合って光の差す道に歩んでいく、それは強すぎて孤独なアルベルトにも手が伸ばされる。
互いの目を見ることで生まれる“絆”と“友情”と“互助の精神”が作品のテーマなのかもしれません。
近年の京アニ作品にしては珍しく、
台詞で登場人物の心境や状況を説明しすぎたり窮屈なシナリオではありますが、
出番と台詞を分担して、今までのシリーズで登場したイケメンたちの出番を満遍なく廻すための処置。
橋の下で郁弥と金城が会話して、金城が去った直後に宗介が傍にいきなり現れて郁弥が驚いたり、
疲労困憊の遙を宗介が送迎した車内の後部座席に郁弥の兄の夏也が前触れ無く座っていたりで、
(もともと夏也を迎えに行くついでに遙を拾った?)
台詞を喋らせるために唐突にキャラが出現してそこにいたという展開がやや乱雑に感じられたかも。
リアルじゃないとの自覚はスタッフはあるでしょうが、その偶然っぽさを深く考えないようにしたり、
彼がここにいたのは、こういう事情があったなど視聴者側である程度の補完が必要かも。
作画と演出と音楽でエモさ満載で、主に女性ファンがソレを見て満足するための仕様の映画ですので、
あまり細かいことは気にせずにクオリティの高さとイケメンキャラたちを楽しめば良いかもです。
トレンディドラマみたいな歌の使い方と演出に、
アニメならでは表現をミックスして表現された美しい映像、
高いクオリティの作画と声優のイケボで表現された非現実的なまでに美しい理想のイケメン、
そしてOLDCODEXの楽曲を堪能する。
Free!を長年追いかけてきたファンへの最後のプレゼントとしての、イケメンたちのドラマ、
そして、福岡大会でのアルベルトとのメドレーでの勝負の映像。
今までの総決算として初代からのシリーズを研究して作られた、
まとまりのある作品であるとは思いました。
キャラクターデザインをされた西屋さんをはじめ作品に関わった大勢のスタッフの思いを乗せて、
なんとしても作品にゴールテープを切らせたかったとの河浪監督の発言。
その強い意志を最高に気合の入った映像から感じられたのは良かったです。
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。