takumi@ さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
神様から贈られたのは赤ちゃんじゃなく・・・
あるクリスマスの晩、ゴミ捨て場で赤ちゃんの泣き声が響いた。
舞台は東京 高層ビルが建ち並ぶ新宿。
公園でホームレス生活をしている、家出少女のミユキ、
自称、元競輪選手のギンちゃん、元ドラァグ・クィーンのハナちゃん。
この3人が、ゴミ捨て場で赤ちゃんを拾ってしまうところから
物語はスタート。
家族を知らずに育ったハナちゃんは、赤ちゃんを「きよこ」と名づけ、
自分で育てたいと強く願うが、ミユキとギンちゃんがなんとか説得し、
実の親探しを始めるものの・・・行く先々でさまざまな騒動が起き・・
というお話。
故 今敏監督の作品をこれまで観てきて、
個人的な想いから、最後に残しておいたのがこの作品。
相変わらず、街の看板のあちこちにスタッフの名前が登場するような
遊び心満載のOPで、ニヤッとしてしまったけれど、
この物語は元々1949年のアメリカ映画 『三人の名付け親』
原題『3 Godfathers』から着想を得て作られた作品ということもあってか
今監督の得意としてきたカオスな映像はほとんどなく、
たぶん誰にでもわかりやすく、観やすい映画だったと思う。
ホームレスという立位置の過酷な現実や、借金、家族との生き別れ、
親子の確執など、ともすればダークな内容を暗くなりすぎずに描き、
3人の過去や事情をうまい具合に織り交ぜつつ、
見事に終結へとまとめあげられていく脚本はピカイチだった。
ハナちゃんのセリフには共感するところがたくさんあったし、
ギンちゃんの男気と人情、ミユキが父親を想って流した温かな涙に、
都会の片隅で生きているひとりひとりの人間が、どれほど孤独を感じ
自分を不幸だと思っていたとしても、
みんなそれぞれ、誰かから生まれてきたんだよなと・・
そんなことも、ふと考えてみたりして。
キャラデザは実写に限りなく近いリアルな表情なので、
好き嫌いは分かれるかもしれないが、度重なる偶然と出会い、
奇跡的な出来事の数々はまさにアニメならでは、で。
後半のカーチェイスや屋上でのシーンなどでの緊迫感は見応え充分。
「親子」「家族」というものの真の姿を目にした時、
気づけばホロッとさせられていた。
しかし・・・ホームレス仲間からもらったあの袋の中の
その後がめちゃ気になる・・
引き換え期限になってることにも気づかないまま、
日々を過ごしてしまう・・
案外、平和な暮らしってそんなものなのかもしれないね。
ちなみに、音楽は鈴木慶一率いるムーンライダース!
めちゃくちゃ懐かしかった~