蒼い✨️ さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
イケメン力、半端ない。
【概要】
アニメーション制作:京都アニメーション
2021年9月17日に公開された86分間の劇場版アニメ。
原案は、おおじこうじによる小説、『ハイ☆スピード!』
監督は、河浪栄作。
【あらすじ】
水泳選手の七瀬遥は鳥取の高校を卒業して、東京の燈鷹大学に進学。
親友の橘真琴も上京して別の大学に進み水泳の指導者の勉強をしていた。
かつては水を愛し泳ぐことが全てで勝負に興味がなかった七瀬遥は、
ライバルたちの影響で彼自身が世界の大舞台で、
強敵を相手に最高の泳ぎをやりたいと思うようになっていた。
シドニーに旅立つ前に行われていた燈鷹大学と霜狼学院の合同学園祭に、
かつて全日本選抜大会で戦い、
遥と共にフリー100メートル日本代表の金城楓がやってきて、
楓の挑発に遥もまた闘志を見せる。
フリー100メートルにはスウェーデン代表で、
絶対的な世界王者のアルベルト・ヴォーランデルがいて、
世界の頂点を目指すには乗り越えないといけない圧倒的な高い壁だった。
頂点を目指す選手たちの戦いが開幕する。
【感想】
「Free!」の1期から前編の上映時には8年が経っていて、
ファンのお姉様も社会人になりアラサーになってる人も数多くいるわけでして、
ファン層から見れば、このアニメのイケメン男子は多くが未成年であり、
逞しく鍛えられた端正な肉体を持ったヴァーチャル弟なみたいなもの。
クールビューティーやオレサマ系やヤンチャ系など様々なタイプのイケメン属性の男子が、
拗ねたりアタフタしたりモヤモヤを抱えたりする姿に親しみや萌えを感じて、
その一挙手一投足を愛らしく思うのがファン心理。
作中では露骨に爛れた描写はないですがカップリング推しの尊みを感じさせる、
キャラクターをタレント化したイケメンコンテンツとして、
商業的には上回る作品が他社であるものの、これも秀でた作品の一つではあると思いました。
それぞれのキャラの内面とキャラ同士の関係を把握している既存のファン向けのコンテンツで、
キャラが多すぎて新規にはツラいだろうなと思いながら観ていましたけどね。
1期からずっと観続けている人にとっては過去作のひとつひとつのエピソードが、
キャラと共有している思い出であって、そのキャラの成長を楽しく思う。
コンテンツが続くとはどういうことかを自分なりに解釈して、
同時に最終章ということで、どんな結末になるか楽しみにして観てみました。
京都アニメーションだけあって、水泳のダイナミックなアクションと水の表現、
水中の息苦しさが伝わってくる映像は流石の一言で、後発になるほど技術的にアップデートしてくる。
リアルとアニメの中間点で質量を感じさせる地に足がついた演出が京アニが目指す映像の世界。
アニメを作っているというよりアニメの世界にカメラを入れて映画を撮っていると錯覚させるような、
1カット1カットの気合の入れ具合とか本当にものが違いますね。
キャラクター設定の肩書で岡村公平さんがキャラクターデザインの西屋太志さんの跡を継いで、
スタッフの構成が替わってもクオリティを落とさず、
むしろ上げること目指してスタッフのひとりひとりが熱意を持って仕事している。
河浪監督が言うように、「みんなで良いものを作ろうと、とことん話し合う」
演技では島崎信長さんはじめ出演声優一同と音響監督の鶴岡さんを交えて、
徹底的に河浪監督の頭の中にあるものを吐き出させて意見交換をする。
アニメは監督のものとよく言いますが、やはりチームのひとりひとりの仕事の熱量があって、
監督はチームのまとめ役で、そのまとめ役も無能には務まらないのですが、
スタッフの話を読んだり聞いたりすると、
京アニのアニメづくりの思想が色濃い映画だなと思うところ。
京アニの演出はキャラを魅せることに特化していますが、その例としてですが、
一見ガラの悪いあんちゃんなライバルの金城楓くん、口調は乱暴で悪役っぽい彼ですが、
きちんと言葉を選んで人を傷つけることを絶対に言わない。脚本を書いたのが河浪監督ですが、
キャラクターを無闇に単純化せずに、微細な部分でキャラの魅力を創造する。
こういった仕事の丁寧さのひとつひとつが作画の芝居と声優の演技力と合わさって、
物語の中の人間を形成して印象づける。だからこそファンは食い入るように観る。
音楽と芝居重視の京アニのメソッドを過剰演出だのレッテルで無価値化しようとする人もいますが、
そういった否定的な意見もたまにある程度で、受け入れてる人のほうが多いわけでして、
単純にその人の趣味に合うか合わないか?好みの問題なだけの話かもしれませんね。
今回の前編では、今まではオブザーバーでありメンターでもあって、
悩めるキャラクターの心の靄を晴らすヒーローであった天才・遥が問題の当事者になる話。
これまでは天才サイドの主人公だった遥が、
世界王者アルベルトの巨大な才能に徹底的に打ちのめされて、
『10(とう)で神童、15で天才、20(はたち)過ぎればただの人』
と常々言っていた遥が世界王者の前では、“ただの人”に過ぎず、
遥の闇落ちっぽい台詞と共に前編が終了。
自分の弱い部分を認めて弱いなりに頑張っていくのが、“ただの人”であり、
人間誰しも通る道なのですが、それが大人になることであり、
大学一年生となった七瀬遥の少年時代の終わりの物語なのかもしれませんね。
「Free!」は誰かの心が歪んでしまっても他の誰かが救ってくる物語ですので、
バッドエンドにはならないのはわかりきってますが、
後編にてどのように話が進むのが楽しみではありました。
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。