gafa1234 さんの感想・評価
3.4
物語 : 1.5
作画 : 5.0
声優 : 2.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
俺はどう生きたのか? 宮崎 駿の場合
『風立ちぬ』でカッコよく庵野秀明や視聴者へ未来を託したのに、引退撤回してまで何をしたかったのか?
それは「老いのせい」と思う他にない。
原作への「スルー」は、鑑賞前から心の準備は出来ていたものの、序盤に主人公が「読んだだけ」で済ますあたりは清々しいほどのバッサリぶり。
「お題」は何でもよかったのだろう。原作は宮崎世代には数ある図書のワンオブゼムでしかないのだから。
作品全体を通して「アニメは子供向けに作るべき」と言いたげに、随所で唐突な形で不思議な絵を差し込んでいた。そのメッセージは良い。
しかし、これも後述する宮崎駿の「癖(へき)」を、アニメの力で正当化する建前で、説教しつつ本音の表出はショートカットする奇妙な前フリでしかない。
作中1番に伝えたかった「母親の死から少女への愛情転嫁」は一般に理解されない価値観を正当化するためのアニメ表現。自己の「癖」の肯定のために回収したシーンが多く、かなり強引と言わざるを得ない。
訂正できない一貫「性」の表出については、大人の観客が黙って映画館を後にしていった反応が全てを物語る。
アニメ業界こぼれ話の飲み屋で叫んでいた宮崎駿の「12才の女の子を本気に好〜」を、それを銀幕に曝け出すことに躊躇いがなくなったのも「老い」だろう。
どんな人間も例外なく老いれば短期記憶は弱くなり、目の前の辻褄合わせがテキトーになるが、巻き込まれたスタッフは大変だったのでは?
序盤の木の棒が異様に細かく粉々に割れるシーンなど、演出上そこまでやる意味あるのか? よく分からない作り込みがシニアの頑固さやワガママなのかもしれない。
そのおかげというとアレだが、過去作品のセルフオマージュの数々についても作り込みは強力で、作品内の絵の強度を上げている。
そうした力技の数々が、作品の狂気性を高めていた。
褒め言葉として狂ってると言おう。
引退を反故にしてシニアになった天才が「今できること」を追求するから、こうなるんだと思った。
一緒に見た自分の子供は「面白かった!」と素朴に言っていたが、少子高齢化時代をどう生きるのか?
宮崎駿の意図とすれ違ってると思うが、深刻である。
もののけ姫を最後に「ボーイミーツガール」は終わっていた。自分にも訪れるであろう老いを考えるのだった。