Mi-24 さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
「私が欲しいものは全部頂く」中々侮れない、ヒロインの田名部愛
全26話。前半と後半で作品のイメージがガラッと変わる。
前半はとりとめのない退屈な話しが多く、正直飽きる。
しかし、この作品の本質に迫る後半はぐっと面白くなる。
前半が微妙に感じるのは、主人公のハチマキと田名部が好きになれないからだと思う。
ハチマキは常に何かに苛ついていて、怒鳴り散らすだけの嫌な奴。
田名部は「愛が大事」が口癖だが、知識や思考が浅く、中身がない空っぽな奴。
二人とも好きになれる要素がない。
デブリの扱いがいい加減なのも、微妙に感じる一因。
作中、新たなデブリを「此れくらい、いいだろう」と故意に作ったりしていて、正直呆れた。
デブリは大きさ、軌道、速度が違うものが、ごちゃ混ぜで漂っている。
しかも、追跡不可能で回収困難な「小さな塗膜破片」レベルの物が、銃弾以上の破壊力を持って飛び回っている。デブリの脅威が全く分かっていない。
後半はハチマキが空間認識の精神障害に掛かる辺りから面白くなってくる。
ハチマキは明確な目標を見つけ、今までの態度を改めて脇目も振らず走り出す。
そして今度は、今までグデグデしたダメ男だったハチマキに置いていかれ(相手にされない)、田名部が焦り出す。
この二人の悩みや葛藤、自問自答する様子は中々に魅せてくれた。
一番印象に残ったのは、フォン・ブラウン号から脱出して遭難した、田名部とクレアの物語。
田名部は
「精神障害のハチマキを救ったのは自分」
との自負があったが、最悪のタイミングで
「ハチマキを救ったのはフォン・ブラウン号の存在」
であったと気付いてしまう。
酸素欠乏で苦しむ中での、自我の崩壊を招くような精神的ショック。
極限状態で田名部が下した決断は、余りにも悲しくて辛い。
それとこの作品のテーマの一つ。経済格差の拡大。
{netabare}
国際ルールは現在潤っている先進国が、自分たちが永久に勝ち続けるように作ってある。このルールに従っている限り、貧困国は永遠に負け続ける。
エルタニカ(南米の架空貧困国)が開発した宇宙服は、採用試験で露骨な妨害にあう。
そして最終的には、エルタニカの担当者が言い掛かりで逮捕され、試験に合格した宇宙服の採用は無かった事にされてしまう。
国際ルールを守って行動していても、先進国の既得権を脅かそうとすれば、不当逮捕と言う暴力で排除される。
状態が変わったのは貧困国の連合組織が、月面都市にフォン・ブラウン号を使って武力行使した時。
先進国の世界連合は初めて貧困国との対話に応じる。
結局は武力行使によって先進国を困った状況に追い込まないと、対話すら出来ない。
テロに対して「暴力ではなく対話を」などと言っている、世界連合自身が対話ではなく暴力を好んで使うという皮肉。
「テロ撲滅」と謳っている世界連合が、公然とエルタニカでテロ行為を行っているので始末に負えない。
{/netabare}
最後に、オープニングのデブリ課クルー紹介で、其々の求めているものが現されていて面白かった。
・星野八郎太
【背景は宇宙船(木星往還船?)】
自分の宇宙船が欲しい。
宇宙船で未知の探求をする。
・田名部愛
【背景は関わってきた人達】
自分の家族が欲しい。
安心出来るコミュニティを作る。
・フィー
【背景はトイボックス】
私のトイボックス。
会社所有だがトイボックスの船長である。
現状で満足しており、幸せ。
・ユーリ
【背景は地球の衛星軌道】
妻の遺品探し。
過去の呪縛に囚われて、自分を見失う。
同じ場所で同じように働いて生活しているのに、思いや目指しているものが全く違う。