たわし(爆豪) さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 3.0
音楽 : 4.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
SF好きとしては物足りない
原作、脚本も書いている岡田麿里監督の第二作目であり、恐らくは「さよならの朝に約束の花をかざろう」の流れからするともう一作を作ることで、「SF三部作」として完成するんじゃないだろうかと勝手に妄想しておりますが。。
本作「アリスとテレスのまぼろし工場」は、少女漫画より更に1960年代のSFちっくな作品であり、去年に批評した荒木哲郎監督の「バブル」と同じく、影響を受けたであろうはジェームズ・G・バラードの「結晶世界」でしょう。
今回も「さよならの朝に」同様、人の「感情」や「情念」が世界に影響をもたらす。。。そう「セカイ系」の典型的な作品ですが、今回もまたセカイを覆う「心機狼」なる煙によって「幻の世界」と「現実の世界」が二手に分かれて行き来をするという感じの内容になっています。
ただ、岡田真里さんはそこに少女漫画的な恋愛要素や幼少期の思い出を語りだすので、「自小説」の側面もあったりとSFでありながら他構造からなる複雑な内容になっています。
なので、岡田麿里さんの「思い出」(幼児期の体験や恋愛経験)に感情移入できる人は話にぐっと引き寄せられる内容になっていますが、新海誠監督の作品のように分かりやすい恋愛要素はないので、万人に受ける内容かと聞かれると微妙な気がします。
かと言って、SF的には結末が、もともと脚本の専門家だったというには少々お粗末だと感じました。
「現実」と「幻」というのは、グレアムバラードからすると「生」と「死」の世界であり、そこは共通感覚ですが、岡田真里さんはあくまで「アニメ脚本」として捉えるあまり結末がどうしても分かりやすく納得のいくものとして構成されていて、グレアムバラードような「幻こそ救い」であり「死」こそ「美しい」という感覚が、恐らくは彼女自身もわかっているはずなのに描けていません。
「死」は残酷だという固定概念ではなく、「終わってしまう世界」こそ儚く美しいという。。SFがもたらす「センスオブワンダー」がちょっと抜けてる気がします。
次回作こそSFとしても娯楽としても傑作ができることを期待しています。まだまだ伸び代がある監督だと思います。