ひろたん さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
「おでかけシスター」は、本当の意味で「おでかけ」できるか!?
今回のガールは、「おでかけシスター」です。
主人公「咲太」の妹「かえで」のことですね。
いえ、ちがいました、「花楓」です。
そうです、TVシリーズ最大の謎。
それは、ヒロイン「麻衣」ではなく、妹「かえで」の方でした。
ちなみにこのシリーズの最大の謎はやはり「牧之原翔子」ですが、これは別格。
話をもどしますと、TVシリーズの最後の最後で明かされた妹の謎。
もう、これにはみなさんやられたと思います。
だって、今までずっと応援してきた「かえで」の存在が無かったことになるんですよ。
それは、「かえで」が思春期症候群による「花楓」の別人格だったからです。
妹は、「かえで」以外に考えていませんでしたから、完全に無防備な状態でした。
しかし、もう、時すでに遅し。
完全に感情移入しきっていて、どうしても気持ちを切り替えられません。
と、言う、視聴者の感情以上に、気持ちを切り替えられないのが兄の「咲太」。
主人公の感情と視聴者の感情をシンクロさせるのが上手いですよね、鴨志田先生。
今までのエピソードは、どちらかと言うと思春期症候群が治ってめでたしでした。
そして、最後の妹のエピソードも思春期症候群が治ってめでたしのはずでした。
しかし、なぜでしょう、思春期症候群が治ってもこの割り切れなさは・・・。
主人公も、妹も、そして視聴者も複雑な気分で幕を閉じたのがTVシリーズでした。
■今回はドラマ
{netabare}
「花楓」の思春期症候群による別人格「かえで」は、本来の妹ではありません。
しかし、それは頭では分かっていても、心では納得できないのです。
本来の妹である「花楓」。
しかし、数々の困難を一緒に乗り越えてきたのは「かえで」。
どちらの人格も兄「咲太」にとっては妹なのです。
どちらも選べないのです。
しかし、選ばなければ前に進めません。
そして、それは、兄「咲太」だけではありませんでした。
妹「花楓」にとっても同じことだったのです。
数々の困難を乗り切って本来の自分「花楓」に戻れたのは「かえで」のおかげ。
しかし、それは、「花楓」にとっては全然知らない人物なのです。
しかも、「花楓」は、「かえで」の頃の日記を読めば読むほど、
「かえで」が望んだ自分にならなければいけないんじゃないかと悩むことになります。
また、「花楓」は、昔の学校の人達からは逃げているので、今は、友達はいません。
しかも、麻衣を始め、今のまわりの人達が知っているのは「かえで」の方です。
「花楓」ではないのです。
そして、父や母も自分のことが原因で壁があるし、兄も悩んでいる。
だから、そんな自分は不要な存在なのではないかと悩んでしまっています。
つまり、妹「花楓」も全然前に進めていなかったのです。
そんな心境を「進学」と言う「前に進む」ためのイベントにからめて物語は進みます。
この物語の上手いのは、そう言ったイベントを用意することだけにとどまりません。
それは、二人の気持ちを複雑に絡めつつもそれを一緒に解決しようとするところもです。
兄と妹のどちらに焦点をあてるのではなく、同時に解決を試みるのです。
兄「咲太」、妹「花楓」は、それぞれの立場で悩んでいます。
兄は、今の妹を受け入れたい。でも、「かえで」は、無かったことにできない。
妹は、自分はいらないから「かえで」になるべきか。でも、自分(花楓)でありたい。
しかし、お互いの悩みの原因は同じです。
しかも、二項対立(選択問題)と言う構図も同じです。
だから、どちらかが解決すれば、もう片方が自動的に解決する問題ではありません。
なんらかの方法でやはり二人の問題を同時に解決する必要があるのです。
今回は、それを思春期症候群と言うファンタジーではなく、
二人の心の葛藤を描く人間ドラマとして見せてくれました。
ですので、「咲太」が奔走すると言ういつもと同じテイストでありながら、
いつもとは、また違った感じの青ブタを観ることができる作品でした。
{/netabare}
■「おでかけシスター」は、本当の意味で「おでかけ」できるか!?
{netabare}
「おでかけ」とは、「出掛ける」、つまり、「外へ出て行くこと」です。
引きこもりだった「かえで」が「おでかけ」できると言うことは、
ただ単に外に出られるようになることではありません。
「かえで」が、本当の意味で「花楓」に戻れるかどうかと言うことです。
つまり、それが心の病でもある思春期症候群が治ったことになるからです。
TVシリーズでは、「かえで」は、「花楓」に戻り、外に出られるようになりました。
それによって、思春期症候群が治ったかに思われました。
しかし、「花楓」の心の葛藤は続いていたのです。
そのままでは、再び思春期症候群を発症しかねません。
TVシリーズの最後、視聴者に対してどことなく複雑な気持ちのまま幕を閉じました。
それは、思春期症候群と言う心にくすぶる病を疑似体験させてくれていたかのようです。
この物語通じて、「かえで」は、思春期症候群を克服し「花楓」となります。
本当の意味で「おでかけ」することができたのです。
それと同時に視聴者もまたこの複雑な気持ちを克服することができたのでした。
「おでかけ」とは、「かえで」と「花楓」をつなぐステキなタイトルだったのです。
{/netabare}
■まとめ
TVシリーズは、妹の思春期症候群が治ってもなんだか複雑な気分で幕を閉じました。
その後、劇場版「ゆめみる少女」で「翔子」の謎でドカンとやられてしまった関係で、
妹の割り切れなさについては、少し忘れ気味でした。
そこへ来て、今回は、再び妹にスポットがあたる感じでした。
なかなか上手いですよね。
忘れたころに何とやらと言うやつでしょうか・・・。
ところで、前回の「翔子」、今回の「花楓」ときて、他にだれか忘れていませんか?
と、言うことで、次回の劇場版は、再び「麻衣」にスポットがあたります。
ホント、心憎い作品展開ですよね、まったく。